「すまん、楢岡。お前がもうちょっっとはまともだと思っていた俺の落ち度だ。」
こんなことならもっと早くに、そういって間崎さんは羽羽木を肩から下ろし、右手で掴み直して自分の前に立たせた。
「手短に行こう、間崎。
僕たちの要求はいつも同じだ。今日こそはそのお前の信条をへし折ってもらう。」
おじさんは羽羽木を指差して言った。
「この馬鹿野郎!」
間崎さんはものすごい大声で怒鳴る。
つられるようにして三郎彦もまたガンガンガンガン!、と吠えた。
「民間人のお嬢さんに迷惑をかけて止め屋の連中は何を考えているんだ!」
「お前たち急進派の横暴に対して当然の抵抗だ。」
おじさんは腰の辺りを探って三十センチくらいの布袋を取り出した。
「このお嬢さんをどうこうしようと言うのではない。
ただお前の信条はへし折れ。反対派は決して神殺しを認めない!」
「楢岡。器使は神を殺しては居ない。」
間崎さんが怒りでおでこを白くさせながら言った。
「この国はもう根ぐされを起こしているのだ。
これだけ気脈が寸断されているのにこれ以上神格は土地を支えられない。」
「それが貴様ら急進派の勝手な言い分だ。
国土は滅びない。切られた気脈も僅かずつだがバイパスを結びつつある。
まだ命脈は保たれているのだ。神も土地も生きようと必死になっている。
それをお前らが無理矢理引き剥がしている。
滅びを助長するだけだ。」
「楢岡。
この程度のバイパスでは気脈が回復するまでに神の狂瀾は治まらん。
俺は苗床だ。俺の中の御玉がやがて土の中で息吹て新しい土地の気脈を作り出す。
この方法でないと死んだ後でこの国土を再生させることは出来んと。
何度言ってもお前は納得しない。
何度も言うような俺が馬鹿だったんだ。」
間崎さんは羽羽木をぎゅっと掴む。
「今日こそは俺は手を抜かない」
そう言って静かにおじさんをにらんだ。
隣で三郎彦がガルルルと低く唸っている。
「あくまで信条を折らないつもりなら、僕も腹を括っているんだ。」
とおじさんが言って、
「ふざけんなテメエ!!!」
三郎彦の体からごわあっと白い烟が噴き出した。
自分に向かって吹いてくる風に必死で抵抗しているらしい。間崎さんが言った。
「下の瀬は流れが弱い、
上の瀬は流れが早い、
中の瀬で漱ごう。」
おじさんは布袋を間崎に向かって突きだし、
「右に青龍
左に白虎
前に玄武
後ろに朱雀、」
と言ったとき間崎さんが羽羽木をトン、と地面に突いて、
「つぶれちまえ!!!」