「死は平等ではありません。」
と先生は話す。
「死は平等ではありません。
弱くてお金の無い人から順番に死んでいきます。
最初が弱くてお金の無い人。次に強くてお金の無い人、次が弱くてお金のある人。
強くてお金のある人が一番最後に死にます。」
私は何故ですか、と聞いた。そんなはず無い、私の弟は強くて、お金だって、持っていない訳じゃなかったのに19歳の時逝ってしまったのだ。
死は平等じゃない。確かに平等じゃない。私の大嫌いなたくさんのあんたたちを残して大切な弟を連れていってしまったのだ。
だから平等じゃない、ちっとも平等じゃない。
でもこの先生の言うことには納得出来ない。
私の弟はそんな順番で死んでしまったんじゃない。だから食い下がった。
「強くてお金のある人でもある日突然死にますよ。」
「お金は、魅力です。」
とその先生は言った。
「魅力のある人に、お金は集まります。お金のある人は魅力的な人です。」
「そんなのは馬鹿な話です。」
「私は形式的な意味で話しています。魅力の定義は人それぞれですから、貴女と私の間に齟齬があるのでしょう。
今は私の中の魅力に乗じて話をします。」
と先生は言う。
「魅力的な人は素敵です。
素敵な人なら、たくさんの人が助けようと必死になります。
だから素敵な人は死にません。死ぬにしても一番最後です。
素敵な人とはお金をたくさん持っていて、強い人です。」
「そんな筈がない!」
私は怒鳴った。
「そんな理由で私の弟が死ぬ筈なんて無かった! 充分魅力的で良いこだった。あんなに早く死ぬ人間じゃなかったんだ!」
私は怒鳴った。何か投げ飛ばせるものがあったらこのじいさんに叩きつけて遣りたかった。
ふざけるな
ふざけるな
ふざけるな
と、言葉ではなく、体に云わせて遣りたかったのだ。
「私は私の中の言葉の意味に乗じて話しています。
だから死は不平等です。
言葉は不平等です。貴女と私の言葉には齟齬がある。
同じ言葉を使っても、貴女の意味と私の意味には齟齬がある。
だからこそ私たちは不平等です。しかし、だからこそ、自由です。
私たちはくびきから放たれて居るのです。」
私は地団駄を踏みたかった。チガウチガウ、そう言う事じゃない。そう叫んで地団駄を踏みたかった。
平等だろうが不平等だろうがなんだっていい。何故私は今生き残っているのだ。
その責任が誰の物でもない。私が悔しいのはそのこと。
死が平等でも不平等でもなんだっていい。ただ、あの時死ぬのが私だったら佳かったのだ。そのこと。