間崎さんに会えないかな、と思って山王さんのお宮に行ってみた。
(何せあのひとはここらへんの山を歩き回っているみたいなので、
会おうと思ってもなかなか捕まらないのだ。)
そうしたら間崎さんはお宮の神主さんが庭木に水をやる水道を使って自分の顔をごしごし洗っていた。
足とか、スボンが明らかに誰かに踏んだり蹴ったりされたみたいに汚れているから私はびっくりした。
「間崎さん?」
私が声を掛けると間崎は濡れたままの顔で蛇口をしめると、お、ヒオリさん。と言った。
「こんにちは。どうしたの?」
「いえ、どうしたのじゃなくて、間崎さんこそどうしたんですか?!」
よく見たらほっぺたに擦りむいた傷痕が出来ていた。
「ちょっと、絡まれちゃって。」
と言う。私は不安になって、
「三郎彦にですか!?」
と先ず真っ先に頭に浮かんだことを言った。すると間崎は笑ってちがうちがう、と、顔の水滴を手のひらで適当に払いながら、
「ちょっとね。俺絡まれやすくって時々困るんだ。」
「誰にですか?」
「まあ、同業者かな。」
同業者。
「大丈夫なんですか? 怪我は?」
大丈夫だいじょうぶ。俺喧嘩結構強いよ。
と、どう見ても一方的にやられた間崎さんは言った。
同業者。
器使と言うのはやはりなんだか分からない。はかりしれないものだ。
「また三郎彦が食って掛かったのかと思いましたよ。」
あいつならやりかねない。でも間崎さんは、心配しないで、と言った。
「彼はとても物分りのいい神格だよ。ただ、若いぶん真っ直ぐ過ぎるだけなんだ。
俺の仕事の事はもうわかってくれてる。踏ん切りが付かないだけで。」
「あれから三郎彦には会ったんですか?」
「狗賓さまには何度か会いに行ってるけど、俺きらわれちゃって、姿見せてくれないよ。
何せヒオリさんの親をずっと守ってきたのが他ならない狗賓さまだからね。」
「おやっさまが?」
私は驚いた。三郎彦はそんな事は話さなかった。
「君は土地の神さま達にとても大切にされていたんだね。」
なあ、羽羽木。と間崎さんは水道の脇に立て掛けた羽羽木を手に取りながら言った。
「間崎さん。
実はお願いがあります。」
「何かな。」
「おとうさんを食べに行くときは私も連れていってください。」