「質問です。
ここに二つの薬があります。」
「何、それ。」
「だから質問です。ここに二つの薬があります。
ひとつは飲むと必ず一人の相手に自分の気持ちが伝わります。
ひとつは飲むと必ず一人の相手の気持ちが分かります。
あなたならどっちの薬を飲みますか?」
「何それ意味分かんないんだけど。」
「だから考えて。どっちの薬飲みたい?」
「別にどっちもいらない。」
「例えばあなたのいとしの保田くんのことでも考えて。」
「なんでそこに保田の名前が出てくるのよ。」
「保田くんにあなたの気持ちが伝わるのと、保田くんの気持ちがどこにあるのか分かるのと。どっちを望みますか?」
「うーん。
…やっぱりどっちもいらない。て言うかどっちも飲むの、いや。」
「えー、なんでよお。」
「だってその薬ものすごく無駄じゃない?」
「むだかな。」
「だって片っ方飲むでしょ? 保田の気持ちが分かったとして。他の誰かが好きなこと分かってどうするのよ。さいあくじゃない。」
「あらそんなに自信無いのね。」
「わるかったわね無いわよ。
それでね、もう片っ方飲むでしょ? 保田に私の気持ちが伝わったらどうだって言うのよ。なんとも思われてないのに。
キモがられるだけじゃない。やっぱりさいあくだわ。」
「あなた意外と自分に自信無いのね。」
「有るわけないじゃない。
だからどっちも飲むの、いや。ぜったい飲むんなら何かのバツゲームじゃないと割りに合わない。」
「そうですか。
それは残念。」
「何にも知らない方が楽でいいじゃない。私の気持ちは私の物だけで。人に知られたくないわ。夢だけ見させてちょうだいよ。」
「なるほど。妄想のなかで保田くんとらぶらぶしてたいわけなのね。」
「やないい方だけど、そゆこと。」
「でもね、あなた必ずいつかこの薬がほんとに欲しいと思う時がくるわよ。
どうしても気持ちを受け取って欲しいと思う瞬間がくるわよ。
もしか、気持ちを理解したいと思う瞬間がね。」
「なんでそんなこと言えるのよ。」
「私は私でちがう薬を飲んだから。」
そう言って友達は、ふふん、と笑った。へんな会話。