朝、シンクに水を流そうと思ったら爺さんの生首が、入っていた。
あーあ。と思った。こういうことはよく有る。
よく有るので退かそうと思ったら、その隣の洗い桶の中に、汚い水に漬かった婆さんの生首が入っていた。二人とも満足そうに目を閉じて、
で、首だけだった。この二人は一体どういう経緯でこうなったんだろうと私は考える。
二人はお揃いの毛糸の帽子をかぶっていた。赤と黒のまだら模様の毛糸で編まれた、耳までカバーする脳天にぽんぽんのついた毛糸の帽子だった。
私はこどものころこう言う帽子を持っていて、スキーをするときに被っていたのを思い出す。
滑っていて吹雪になると、耳カバーに付いている紐を結ぶのだ。世界を流れる音から引き離されたような感覚になる。
顔に雪の粒がバンバン中って、私は変に興奮しながら斜面を滑り降りていった。
爺さんと婆さんの帽子は、耳カバーの端の紐でお互いにしっかりと結ばれていた。
爺さんの左側と、婆さんの右側が。そして二人とも満足そうな顔をして、
生首だった。
これは。
生前とても仲が良かったしるしかな。それとも来世でまた会えるという約束かな。しっかりと結ばれているから。だからこそこんなに満ち足りた顔で首だけになっているのかな。
私には時々こう言うことがある。でもこのままだとシンクが使えないから、ビニール袋に入れて持ってでて外の庭のミカンの木の下に置いておいた。
こうしておけばいつものようにそのうち消えてしまうだろう。