本屋さんの隣が中華屋さんだったので、私たちはそこに入ることにした。結局朝御飯も半端に食べたたけだったのでとてもお腹が空いていた。
ヤッちゃんは餃子定食を頼んで、私はモヤシラーメンを注文した。
「ヤッちゃんって確か、高校から県外だったよね。」
頼んだものがくるまで私は空腹をまぎらわす為にコップの冷水をちびちび飲んでいた。
ヤッちゃんは数学がものすごく得意で、パソコンの勉強がしたかったから県外にある数学に強い高校にわざわざ出ていったのだった。
「どうだった? 寮に入ったの?」
「うん、寮生活。たいへんだったなあ、あの時は。」
「何、やっぱり時間とか厳しかった?」
「それもあるけど、上下関係かな、先輩との。」
「ああ。よく聞くね。」
「あと授業がきつかった。僕、一発で数学キライになったもん。」
「え、あんなに得意だったのに?」
「全くレベルが違ったよ。」
それでもヤッちゃんはプログラマの資格を取って名古屋の会社で働いていたそうなのだけど、
私と同じでなんとなく、名古屋にこれ以上居ても仕方ないな、と思ったらしい。
「彼女は居なかったの?」
「それも大きな要因の一つ。」
とヤッちゃんは言った。
そんなことを話していたら餃子やラーメンが運ばれてきたので、私たちは箸を取って
(割箸じゃない、ちゃんとしたやつ)
自分達のお昼に取りかかる。
「そう言えば僕、あの後で卒業アルバム出して調べてみたんだよね。」
「なんのこと?」
私は山盛のモヤシをまず片付けながら聞き返す。
「いや、小川さんてどんな人だったか気になったから。」
「小川さんて誰だっけ?」
私は本当に記憶に無かったので尋ねた。
「え、こないなだ飲み会の時に話題になった、二組の小川さん。
宗田さん忘れちゃったの?」
とヤッちゃんはご飯を食べながら驚いている。そう言われて私も自分の記憶力に不安が現れたら。
「さっぱり、覚えてない。」
「結構呑んでたからかな。」
「ほんと? 私はそんなに呑んでた? いかんな記憶に無い。」
「僕の目からは普通に見えたけどなあ。」
とヤッちゃんは玉子スープのカップを手に取っていた。
「いや、それでね、小川さんが居なかったんだよね。」
「どゆこと?」
意味が分からないのでまた聞き返す。
「だから、卒アルに小川さんの写真が無かった。」
「写真が無い?」
「うん。
名前は書いてあったんだけどね。小川ユカリって。」
「ああいうのって集合写真の日に来れなかったら後日隅っこに円で入るもんでしょ。」
「うん。
それが無かったんだ。二組は32人いたはずなんだけど、写真には31人しか写ってなかった。」
「何それ? どういうこと?」
「僕にも分からない。」
私は曖昧屋な記憶を探るよりも今やってる仕事するのイメージの方が頭に浮かびやすかったんだけど、
小川さん、
と言う妙な同級生のことは今度こそ意識にしっかり印象付けられてしまった。