小説「ひつようのない子」 | 文学ing

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森本湧水(モリモトイズミ)の小説ブログです。

祈りの声が響く。
いやこれではまるで怒声だ。腹立ち紛れの悪口雑言だ。

彼らは大切なひとを無くしたのだ。
手を取り合って凄まじい声量で神に祈りを訴える。
そう、訴える。

そうでもしないとやっていられないのだ。

外国の言葉なので意味は分からない。
しかし起きたことを元に彼らの心を推し測ることは出来る。

彼らは大切なひとを無くしたのだ。

その哀しみのうずの中、どうにかして自分を支えようとしている、そのために彼らの神は必要なのだ。

そして私は省みる。

神を持たない私は、

否神を持たない我々はいったいどうやって自分を支えているのだろう。

思うに私たちはしあわせになることに慣れていない。

ずっとずっと長い間あんまりにもふしあわせだったから。

しあわせは誰か別のひとのものだと思ってしまう。自分の代わりに誰かがしあわせになるのだと。

私はひつようのない子
あなたもひつようのない子。

でも私の代わりにあなたがしあわせになるのだとしたら、

ひつようのない私はまた誰かの代わりに、しあわせになるのを待っているのかもしれない。