小説「死んだらいい子になれるから」 | 文学ing

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森本湧水(モリモトイズミ)の小説ブログです。

大丈夫だよ、と私は彼に言った。
「大丈夫。死んだらきっといい子になれるよ。」
法改正以降初めての、史上初の
未成年刑死者になるのである彼。
刑法の大幅な見直しの時少年法というのがそもそも廃止になったのだ。3つだろうが4つだろうが、
重特な罪を犯せばそのこは死刑になる。彼は法律が今の容態になってからの最初の死刑囚である。

「あのなあ。過去は変わるんだ。」
私は彼に話した。
「君が殺したおばあさん達だってきっと一癖もふたくせもあった。
でも死んだ人間の悪口は言わないんだ。そういう習慣だから。
生きていたら散々悪者にされるんだよな。生きてる人間には悪口は言いやすいからな。
だけど君は大丈夫さ。
きっと死んだらよいように言ってもらえるから」
彼は複雑な顔色で黙っている。
15歳の時老人ホームに防火して老人を7人焼き殺したのだ。裁判に2年掛かって、今かれは死刑囚である。
彼は困惑したような顔色である。
世間の評価とか、自分でしたことがよく理解出来ない。
自分が死ななければならないのは何となくわかっている。しかし自分がネットで散々叩かれているのが分からないのだ。

彼の顔色は困惑である。
だから私は彼に話したのだ。
「大丈夫。死んだらもう悪口は言われないよ。」
ああ、いい子だったのにな。
と、誰もが言うに違いない。