1DKでも一軒家は持ち重りのする財産だ。しかも住んでいる訳ではない。
だのに固定資産税は毎年払っているのだ。
大した額ではないにしろ自分の収入では、煩い出費である。が、手放す予定も無い。
大げさな理由ではない、単にこの家が気に入っているだけだ。
祖父が死んだときの遺産分与なのである。遺産と言うよりほとんど押し付けられた。無沙汰の駄賃と言うことだ。
月時計のある家。
祖父が死んだとき不動産の整理をしていたら、誰も知らなかたったこの家が見つかった。
居間に台所と風呂トイレ。それから庭に月時計が置かれている。太陽ではなくて。満月の夜の月光で時間を刻む。
そういうオブジェが庭に造られてあるのだ。
そういう家を、自分が相続したのである。一体これはなんなのか、何のために祖父が造ったのか。誰にも分からない、きっといつまでも分からない。
何故月光の夜に影で時間を見る必要があったのだろう。
謎ばかりのこしてこの家は自分の名義になった。
この家を手にしてから自分はカレンダーと天気予報の確認を欠かさなくなった。
日時計とは違うのだから。
月時計は利用できるタイミングが恐ろしく悪い。
満月に晴天になる確率は高くない。
よくて一年に3、4回だ。晴天の満月でしか月時計は役に立たない。
しかし自分は満月の日、快晴の夜を逃さない様に日々暮らしている。
月光を浴びて延びる影、時間を刻むそれ、変化する形、文字盤が滑る。
それを目の当たりにしたのなら。
それを見る祖父の気持ちが嫌でも分かってしまうのだ。