小説「虹」 | 文学ing

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森本湧水(モリモトイズミ)の小説ブログです。

ラックの裏でのたうったケーブルは呆れるほど曲線だったが蛇よりはむしろ針金に見える。
今朝は大学の卒業式だ。出席する予定はないのでスーツ類は配送済みである。
今月中にアパートを引き払う仕事をいつまでも怠けている。
電信柱と烏の組み合わせは向こう側が青くないので納得づくのモノクロームだ。春先の白い空は目に慣れている。
荷物を箱詰めにしようとしたら必要なものが何も無いことに気づく。
書籍は縄に掛けて、
衣類は燃えるゴミの袋で、処分するのは容易いことだ。
ラックとベッドとチェストと布団は始末に困る。管理人に談判したら、手間賃三千円で道具屋筋に捌いてくれた。
テレビとPCぐらい自力で処分しようとした。
しかしのたくったケーブルを見て、さっきからやる気を出さない。
五年の間省みなかったから何かを育てたみたいに埃が厚い。
この埃を取り除いたら自分の学生時代が一段落するのだろう。
それは自由とか若さの消滅と同じことかもしれない。
それを思い埃を見据えながら自分のやる気はいっかな顕れてくれないのだった。