偶然入った犬猫屋に、見た顔があった。
さて誰だったろう?ロゴの入ったエプロンを着ている。店員だ。
「よ。」
と店員が言う。片手を上げて見せる。向こうもこっちを知っている。
「久しぶり。」
店員が言う。声を聞いたら記憶が蘇った。小学校の同級生。
「岡村か。」
「久しぶりだな。」
「なにやってんの?」
「就職したんだ。」
と顔を無様に歪めて見せた。自分も胸の中が忌々しさでいっぱいになる。
自分と、岡村とあと何人だったか。
昔猫を拾った。
昔酒瓶を作っていた工場跡に子猫が棄ててあったのだ。
段ボール箱に入って、最初五ひきいたのだけど、誰かに拾われたのか一匹居なくなり二匹居なくなり、最後の一匹だった。
自分たちは猫の入った段ボール箱を倉庫の中に隠したまま、給食のパンとか家から持ってきた煮干しとか、
ちょいちょい食わせて、
遊んでいた。
何が行けなかったのかと言うと、その時仲間が四、五人居たのと、大人に黙っていたことだろう。
それと猫に餌をやるのが遊びだと思っていたのがよくない。これは、絶対だ。
五人も居るんだから誰かが見に行ってるだろうと自分は思っていた。
ありがちなことに、五人が五人とも、
‘誰か見に行ってるだろう。’
と思っていたのだ。それが善くない。なんといっても善くない。
最後に見た時子猫にはもう蟻がたかっていた。
血が通わなくなると毛並みはなんて汚いんだろう。
自分たちがおもちゃにしていた子猫は、とっくに茶色い動かない塊になっていた。
うええええ
と、一番に泣き出した誰かを、自分はひきょうだと思った。
おれだってなきたいよ
と思った。でもできないよ、と思ったのだ。
目の前の塊は、塊じゃなかったのに、自分たちがよってたかって塊にしちゃった。
自分はとっさに、おこられる、と思った。
大人に話していないんだから誰に怒られるはずもないのだ。
でもその時の感情は、
怒られる
と言う、これに代表されるものにもっとも近い。
恐怖だった。
やってしまった、と言う恐怖だった。やってしまった。
茶色い塊は恐怖の起爆剤だった。スイッチはずっと前に入っている。
怖くて怖くてしかたなかった。喉の向こうでいろんな管がこんがらがって、涙もなにも出てこない。
もう猫は育てない。
絶対に猫なんか飼わない、とその時誓った。岡村他もきっと同じだと思っていた。
「就職したんだ。」
「そっちは娘さんか?」
そう、自分は犬を飼いたいと言う同居人たちに連れられて、のこのこペット屋に来たのである。
時間は流れたのだ。