「わああ!」
叫んでしまった。
真っ暗道で気が付かなかったとはいえ、歩道を歩いていて突然顔を蜘蛛の巣が襲った。
「どうしたの?」
一緒に歩いている友達が不思議そうに聞く。
「蜘蛛の巣が顔にあたったー。」
「こんなところに? 道の真ん中に?」
みんな不思議そうに見えもしない暗がりの細い糸を、きょろきょろ捜すのだった。
「どうやってこんな道の真ん中の糸をかけるんだろう。」
「風に乗ってあっちからこっちに行くのかなあ。」
などと言い合いながら、
最後のお小遣いで買った人形カステラを分けわけしつつ私達は歩いた。
友達数人と花火大会を見に行って、一緒に帰る途中である。
お盆の終わり。
同時に、もうすぐ夏休みも終わってしまう。
私は悲鳴を上げそうだった。
上げはしないけど、でも本当は怖くて、
目の前の恐怖に耐えられなくて、今にも叫び出しそうだった。
今にも叫び出しそうな思いを押さえ込んで、何事も無いように友達と笑いながら歩いていた。
「あたしもう宿題やばい。
ぜったい新学期から居残り組みだわー。」
明るくいうこが居るので、あたしもあたしも、同調してみんなで笑った。
私が叫び出しそうだったのは、
自分がどんどん引き離されていることが、もう決定的だったからだ。
成績だけじゃない、未来への考え方だけじゃない、
私以外の、
誰しもが、
ずんずん先に進んでるなか私一人なにをしたらいいのか分からなくて、
あたふたしているのだった。
皆がずんずん前に進んでいく間、私の学校成績は停滞から緩やかな下降に変化しつつある。
私はそれが怖くて怖くて仕方ないのだ。
この先の、夏が終わって、新学期が始まって、学園祭がはじまって終わってテストが始まって、
その先をどうしたらいいの?
みんなは迷路の細い通路をどんどんすり抜けていく。
私だけ最初の穴にお尻がつまって、どうにもできなくてじたばたしているんだ。
高校2年の夏休み。
「9月になったらとにかくがんばるの!」
なんて言っても恐怖はぜんぜん減らないのだ。
何も見えない、何があるか分からない、どうしたらいいのか分からない。
真っ暗闇だったのだった。
ふと、さっき顔に中った蜘蛛の巣のことを思う。
その蜘蛛、
一体どんな確信があって、
なにが根拠で風に乗れると思えたんだろう。
風に乗って向こう側にいけると、
どうして思えたんだろう、と、恐怖に震えながら私は考える。