小説「ぼくの命」イン・ザ・ワールトベース6 | 文学ing

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森本湧水(モリモトイズミ)の小説ブログです。

特別講習の課題に取り組んでいる。
“僕の命”
と言うテーマで短いレポートを書かないと行けないのだ。
特別講習を受けている子どもは、良い意味でも悪い意味でも特別だ。
だから氷宣は真剣にやってるし、
ぼくの親も成績表の出る月ははらはらどきどきしている。
しているのがあからさまだから面白い。
でも笑ったりすると怒られるからぼくはわらわない。
テーマ
“僕の命”
は難しい課題だ。氷宣はどんな風に取り組んでるのかなとぼくは考える。

考えている間、ぼくはこの課題に一切の必要を感じていないことを知る。
いや、気付く。
【僕の命 ジェリコ・シアー・ドーミエ・パノム】
と言うタイトルと、

【ぼくは命が何か良く分かりません】
と続けたまま、先を書けずにだらだらしているのだった。その間2回母さんが罵声を飛ばしに来た。日常。

【僕は命が何か良く分かりません。】
僕たちは選抜をパスしないと生きている
と言うことを
なし
にされる。
ここはせかいじゃなくてワールトベースと言うもので、
生きるべきひとしか生きたらいけないんだと
ぼくは教わった。

だからこそ、
ぼくは命がなんなのかよく分かりません

としか書けないでいる。

今は極冷温時代なんだと言う。
ネイティブが暮らしていた時とはなにもかもが違うんだと言う。
そして、
いつかはネイティブのいた頃のような世界がまた戻ってくるんだと、
皆が言う。
だから、その時のために、われわれはワールトベースの中で命を伝えるんだ。
ぼくの親はそうぼくに言った。

でもぼくは命が何か全く解らないんだ。

だってぼくが選抜に落ちても、誰かは通るんだろ?
じゃあ命はそいつのものだ。
ぼくのものじゃない。

ワールトベースはそういうふうに成り立っているのに、
どうしても自分の子どもを生かしたい、
と言うことを、
ぼくはさっぱり分からないでいる。
だからレポートのページはいつまでも白いままでいるんだ。