ホタルブクロというそうだ。あのころはそんな事知らなかった。
どんどろけ花と呼んでいた。
どんどろけ花と呼ばれていた。
田んぼのあででひと休みしているおっさんらがいつも言った。
「おおおい、どんどろけ花がじょーにしゃあとるで、はよ居ねえやああ。」
どんどろけ花がよく咲き出したから、寄り道せずに家に帰れ。そう言われた。
そして私たちが通り去りがけおっさんたちは、
「今年もどんどろけ花がよお咲くなあ。」
と土色の顔を更に汚ならすのだった。
どんどろけ花の繁る年は、子どもがとられる。
それはあの頃の自分たちには知り得るも無いこと。
どんどろけ、
は豊泥の怪
の訛りで、地域のウブスナさまのことらしい。
自分たちの土地はウブスナが肥えすぎていて、何年か置きにその埋め合わせみたいに子どもがとられていたそうだ。
そしておっさんらは知らんだろうが、
どんどろけ花の繁みにはいつも
ともだち
が居た。こっちいったらおうちだよ。そう教えてくれるともだちがいつも居たのだった。
だからちっとも危なくなかった。
むしろ私もいつの日か、
そんな風に迷ったこを助けてあげようと、強く想って疑わなかった。