「プリンセス・トヨトミ」 | 文学ing

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森本湧水(モリモトイズミ)の小説ブログです。

投稿原稿の仕上げに取り掛かりながら息子が高熱を出しました。
そして熱が下がらない息子を決死の覚悟で昼寝させて、
嵐の火曜に鳥取市簡易郵便局から当日消印で投函しました。

なのですがすがしい気持ちで、楽しみに置いておいた
万城目学 「プリンセス・トヨトミ」
を読了しました。
で、
読んでる間わりとほっといたせいか
息子の熱が再び上がりました。うえええん。

「プリンセス・トヨトミ」
これ以上ないくらいキャッチーなタイトルですよね。これだけで
この作者、うまい! と思ってしまいます。

内容を詳しく書いてもいかんですので
もりもとの一番印象深かったポイントを、感想文としてどうぞ↓

戦国時代の終わり、豊臣家の血統が途絶えてから四百余年。
その四百年間、ずっとあるひとつの
「スローガン」
をよりどころに大阪「国民」としての
民族のアイデンティティ
を保ち続けてきた大阪のおっさんおばはんたち。

彼ら大阪「国民」に対して日本政府が果断に戦いを挑みたいわけなんですが、
なんで国は彼らアンダーグランド組織に断固立ち向かいたいのか。
日本政府が彼らの何を恐怖しているのか。
その点が自分の中で興味深かったのです。

政府が恐怖すること、それは
「たった一つの目的のために
何百万人の人間が
一瞬で団結することが出来ること。」

大阪「国民」はとある秘密を守り続ける人々です。
その「秘密」になんらかの危険が迫った時、彼らはどんなリスクを厭うことなく
立ち上がる。

この場合の立ち上がるの意味は、まんま「起立」と捉えて差し支えないくらい、
ただただ立ち上がるだけなんです。
しかしそれこそが人間に出来る最大の抵抗、
そして人間にとっての最大の恐怖。
だってそんなに一つに団結している百万人が、
ただ立ち上がるだけでなく「本気」を出したら、どうなるか?

作中で顕かにされる「秘密」自体は、実際信用度も低く
ほとんど意味が無い程の「秘密」でしかないのですが、
意味とか真実が問題なんじゃない。
大阪「国民」として秘密を共有していることこそが
彼らの存在意義であり生きて子孫を残していく誉なのでした。
凄い発想です。
「神に選ばれた民」
というイデオロギーで
何千年国を持てなくても
民族の「人格」を維持し続けたイスラエルの人達を連想しますね。

結局アメリカも中国も軍隊にどんどんお金を使いたいのは
「人間」が怖いからなんでしょう。
否、「団結した人間」が怖いからなんでしょう。
主要先進国の中に
たった一つのスローガンで全国民が団結できる国なんか無いです。
それがすなわち自由、
そしてそれ故の不自由、なんですね。

銀河英雄伝説からちょこっと引用
「貴族を恐れることはありません。
しかし、『貴族たち』は警戒すべきです。」

こわやこわや。
団結は力。力である以上、暴力。