夫にとって生き物はネコくらいの大きさが理想である。
「犬はでっかくなっちゃうから買うの止めたんだ。」
と言った。アパート住まいでペット禁止の現状は、だから彼にとって非常に味気ないようだ。
「愛でて下さいな。」
と訴えてみるものの、彼はいつでもやおら考えて、
「大きすぎるもの。」
と言う。
膝に抱えて居たいんだそうだ。ゲームするだの漫画読むだのお菓子食べるだのしている間、胡坐の膝に抱えておいて、時折撫でたり出来るもの。ネコが理想的なんだそうだ。
おそるべきしなやかな体躯、ぎょっとするくらい柔らかい肉、そしてなによりも得がたいその毛並み。
彼の体は、胡坐組んだ膝の上辺りにどうも穴が開いている。運が無かったり人に持っていかれたりしてぽっかりと空いた穴だ。どうにもなんともしようのない穴だ。
それを塞ぐには、ネコくらいの大きさが丁度いいのだそうだ。そして、出来ることなら、生きているものであって欲しいのだそうだ。
私はたまたま生きてはいるんだけど、いかんせん体が大きすぎる。だから私は愛でてもらうことは出来ない、ずっと、いつまでも。
いっそこの世からネコを消し去ってしまったらどうかと考えることがある。その方が逆にすっきりするんじゃないかと。
技術の発達した現在だから、何らかの策を講じればすくなくともこの国の内くらいなら、あらゆるネコを一掃することもそんなに難しいことではないんじゃないのかな。
でもそれはしない。時間労力とかじゃなくて、私はそれをしない。
なんでしないのかというと、まあ愛情だと思ってもらったら。