小説「卒業5年後の逡巡」 | 文学ing

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森本湧水(モリモトイズミ)の小説ブログです。

 成人式なんてシステムを作ったのは誰だ。責任者出て来い。俺は今ものすごく迷っている。

 俺は今年二十歳になった。年明け地元に帰ったら中学の同期来れるやつ集めて町が成人式を開く。そのシステムを作ったのは誰だ。明治政府なのか。GHQなのか。悪いのはペリーかマッカーサーか、なんだよどっちにしろアメリカのやってることじゃないか。情けないぞますらおよ。大和魂はどうしたっていうんだ。

 俺はものすごく迷っている。なんで迷っているかと言うと、可能な情報網を駆使して調べに調べた結果、池波が来ることがほぼ確実だからだ。

 中学の卒業式、俺は池波に言ってしまっているのだ。

‘おれお前のこと好きだったんだけどな”

 出来心だったのだ。

 確かに池波のことが嫌いだったわけじゃないが、それは単に絡みやすかったと言うのかいじりやすかったというのか、女どものなかでは比較的会話が多かったということなのだ。それ以上の意図はない。

 でもまあしかし、池波は女子校いっちゃうし俺は西校で高校離れちゃうから、なんとなくこのまま会えなくなるのも残念だなって、で最後にやつに何か言いたくて、でつい出来心で言ってしまったのだ。

 しかし言葉とは恐ろしいもので、そう言ってしまったら、おれはなんとなく池波のことが頭から離れなくなってなんとなくいつも考えているようになって、で気がついたら本当に好きになっていた、言葉とはおそろしいものだ。

 その池波が成人式に来る。俺はものすごく逡巡している。

 いったいどんな顔をして会ったらいいのかと。

 俺は中学生が行う無鉄砲が一人の男の人生を脅かす瞬間に今立ち会っている。男って俺なんだけどな。

 何であんなこと言ってしまったのかって今思っている。池波が今俺をどう思っているのか考える。ものすごく気まずい。今まで生きてきて一番気まずい。

 しかし言わなきゃよかったとは思わないから不思議だ。

 しかしああ、俺はいったいどんな顔して池波にあったらいいというのだ。俺は迷っている。ものすごく迷っている。

 迷った挙句この星空を吹き飛ばす勢いのカメハメ波打っちゃいそうだぜ。

 あの日の俺が目の前に現れたらきっと俺はぼこぼこにしてしまうだろう。

 成人式。

 あと一週間もないじゃないか。