型染友禅 手捺染 体験記 | 着物と私

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家族が大好き、我が家が大好き。優しく穏やかで静かに暮らしたい。

渋谷・東急本店で開催中の京友禅の老舗『千總(ちそう)』友禅展へ行って参りました。

駅を降りると想像通りで 日曜日の渋谷は人出が多く賑わっていました。

恐らく、千總友禅展も沢山の方がいらしてるのだろうなぁ と思いながら

渋谷東急本店の7階特設会場へ急ぎ足で向かいました。

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しかし、会場へ着くと、想像に反して人はまばらで静かでした。

客人が少ないと 店員さんにあれこれとしつこく話かけられそうで

ちょっと嫌だなぁ と思いましたが、適度に声を掛けて頂き

とっても良い雰囲気の中で 鑑賞することができました。





やはり 京友禅の中でもっとも品格の高い 千總さん だけあってでしょうか、

素人の私が見ても 一反一反 丁寧に染め上げられた 反物の「美しさ」や「見事さ」

を肌で感じることができました。

繊細な柄、色とりどりの染め色、絶妙なぼかしが平面の絵図を立体的に見せていました。

正に日本の伝統工芸の集大成がここにあると言っていいのではないでしょうか。





早速、今回の目的である手捺染の実演を見せていただこうとお声を掛けたところ、

なんと 私に染めの体験をさせていただけると言うのです。

私は 何て幸せ者なのでしょうか。

まさかまさか、夢では無いか?とホッペをつねりそうになりました。




私が体験させて頂いたのは、

生地の上に置かれた型紙の掘りぬかれた部分に

染料の液を染み込ませたハケで染料を刷りこむ作業です。

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型紙は一反仕上げるのに 平均で50枚 多くて100枚程度使用するそうです。

下の写真は竹の節を染めているところです。

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今回私が体験させて頂いたのは3枚の型紙でした。

べたっと濃淡無く塗る箇所はヘラで染料を伸ばすそうです。(これは体験していません)

今回は濃淡をつける染めを体験させていただいたので、

ハケの運び方や当て方に強弱をつけながら 立体的に見えるように染めました。

とても緊張して全身汗びっしょりでした。

熟練された職人でも体調や気分によって仕上がりが微妙に違ってくるそうです。

現代ではプリント技法も精巧になり、美しいお着物ができるそうですが、

手仕事で染め上げられるお着物は例え同じ型紙や染料を使っても同じ物は二つと無く、

一反一反それぞれの表情を持っているからこそ尊く、素晴らしいのだそうです。





ハケで染めたら 型紙を外して 染まり具合を確かめます。

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とってもワクワクする瞬間です。





こんな具合に染まりました。

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緑のモミジ、竹の節、朱色の波模様 の数箇所を 染めさせていただきました。

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実際にはもっともっと美しい色なのですが、私のデジカメではこれが最大限で、

手ほどきを頂いたI先生に申し訳が無いです。

I先生は京都からいらした染め職人でとても穏やかで優しく大きな懐の方でした。

職人の世界は厳しく 特に千總の職人ともなれば 少しの失敗も許されない

緊張の連続だと思います。

その厳しさの中をくぐり抜ける中で 精神が磨かれ、優しさ、穏やか、

大きな懐の持ち主に成られたのだろうと思います。





そして、いよいよ試着です。

I先生の作品を纏わせて頂きました。

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ほんわかと柔らかい地色に可愛い五つ花びらの小紋です。

帯は川島の帯とお聞きしたかと思います。

いずれも気に入りました。でも今の私には到底手が届かない品です。

申し訳ない気持ちで、今回の体験に感謝をし、いつの日か千總を手にしたいと

お伝えして、帰宅となりました。





さすがに一流の老舗だけあり、購入の意思が無い旨をお伝えしても、

変わらぬお優しい対応をして頂き、本当に一生の思い出に残る一日となりました。





いつかその日が着たら、改めてお礼を述べたいと思います。





今回の体験を通して、一枚の着物が着る方の手元に届くまでに

たくさんの人々の手を介し、形が出来、色づき、表情が生まれ、

整えられ、努力と愛情がたっぷりと込められていた事に気づきました。

これからも末永く職人さんたちに美しいお着物を生み出し続けて頂きたいと思います。






そして、縁があって私の手元に集まったお着物を大切にしていかなければならないと思いました。





今日は記事を書くのに数時間かかるだろうと思いましたので、

平行して ミネストローネを作っているところです。

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今日のポイントは牛蒡を入れたことかな。

最近、晩酌をするので、美味しくて太らない食事をつくらないと大変なことになります。

今日はお野菜たっぷりで鷹の爪を利かせて、ピリッと辛い味付けで、益々お酒が進みそうです(^^;)