「友情」に感謝 | ぶなまつの昆虫的エッセイ

ぶなまつの昆虫的エッセイ

昆虫の「生活史」をメインに、裏山にて「ソロ虫活」を楽しんでいるシニアです。
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  クローバー秋、9月上旬にこれを書いている。

今年は国連が「地球沸騰化」を発表するほど、観測史上最高の暑い夏だった。8月はほとんど降水量がなく、最高気温も32度以上の猛暑日が続いた。9月に入ってようやく29度ほどになったが、早くも8月上旬には水田の稲が黄金色に変化した。暑すぎる夏は、動植物や昆虫の活動にも変化をもたらす。

 

 

 

 

 ハートオーストラリアに帰国していた友人のA氏が日本に戻ってきた。外国人の彼は善良なクリスチャン青年。「コルベ神父」に風貌がどことなく似ている。日本での仕事も来年の8月まで。

9月初め(1泊2日)の高山採集に誘ってみると

「楽しみです(^^)/」

と笑顔で答えてくれたA氏。

 

 

昆虫に興味がある外国人は日本人以上に少ない。特にキリスト教文化においては(聖書の中に登場する蠅の悪魔ベルゼブブルや畑の野菜を食い荒らすイナゴのように)「昆虫は悪魔(サタン)の使いである」という偏見があるようだ。

 

 

 

現地に近づくにつれ美しい標高の景色に感動し、「素晴らしいですね」と答えてくれるA氏。彼が喜ぶ姿を見て幸せな気持ちになった。

連日忙しい大学生の息子も、日程を調整してくれたのは嬉しいが、連日の暑さの疲れが出ていたのか後部座席で何度も居眠りをしていた。(笑)

 

 

 

 

来年の8月には帰国するかもしれないA氏。「日本のクワガタが大好き」という彼に、楽しい体験を味わわせたかった。

 

「高山に入り発生木にて、アカアシクワガタの雨を体験したらびっくりして腰を抜かすかも?」

と想像をしながら現地に向かった。

 

 

しかし、遅すぎたのか?

後のことを暗示するように、1頭のクワガタも落ちてこなかった。拍子抜けしながらも、急いでヒメオオクワガタが生息する林道に車を走らせた。採集個所に着いてみると、先行者だろうか?既に1台の自家用車が駐車していた。林道を歩くと大きな捕虫網を抱えた2人組の先行者に出逢った。笑顔で話しかけてきた優しそうな中高年の2人組。聞くと「カミキリ」を専門にしているとのこと。すでにたくさんの「ヒメオオクワガタ」を採集し、車に戻るところだったらしい。

 

「私たちは、外国の友人にヒメオオクワガタ採集の楽しさを体験させたいと思い、つい先ほど林道に着いたばかりです。

よかったら見せていただけませんか?」

 

快く見せていただくと、プラケース2つに大きめの♂♀全部で20頭ほどの個体が保管されていた。

 

 

「やばい。全部採集されてしまったかも・・」

 

 

心の中で感じた不安は的中した。

道沿いのヤナギを念入りにルッキングしながら歩いても全く見つからない。工事用のトラックが狭い林道を出入りして、採集どころではなくなり場所を変えたのだが、そこでも全く発見できずに終わった。結局、見つけたのはヤナギから落ちてきた小さなアカアシクワガタ数頭のみ。

夕暮れになり、疲れも出てきたため予約していたホテルに向かった。

 

 

「残念だ。楽しい思い出を作りたかったのに、ヒメオオクワガタが見つからなかった。捕虫網を使って、A氏に採集体験をさせることもできなかった。本当に残念・・」

 

 

宿泊する温泉に入りながらも、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。高山は先週まで平地同様に猛暑が続き、降水量も少なかつた。見るヤナギの多くが黄色に変色していた。水分が足りなかったせいだ。ミンミンゼミの鳴き声も遠く、雑虫もほとんど見られなかった。

採集の楽しさを味わわせたいという気持ちとは裏腹に、もしかしたらボウズかもという不安を感じながら次の日、ルッキングの範囲を広げてみた。

 

 

 

 

 午前10時というのに、道沿いには捕虫網を手に持ち、ルッキングしながら歩いている人とたくさんすれ違った。毎年来るこの場所はヒメオオクワガタの数よりも採集者の数の方が多い現実。

 

 

「残念。昨日と同じく全く見つからず・・」

 

心配そうに後ろをついてくるA氏に、疲れないように車の中で休むように話し、ヤナギがたくさん生えている崖の斜面を単独で藪漕ぎしてみることにした。数年ぶりの藪漕ぎは大変だった。足首にたくさんの弦が絡まり、何度も転んではあちこちをぶつけた。

例年、見つかってもおかしくないヤナギにはアカアシクワガタさえいない。とのヤナギも乾燥して、生気がない。雨が少なかったことが影響したのか、それでもあきらめきれず、一時間以上悪戦苦闘してみたのだが、全く見つからずに終わった。

1泊までしながら頑張ったのだが、虚しさが自分の心を支配した。

 

夕方、仙台に着き、A氏を家まで送迎した。

日本に戻ってきて日が浅いのに、疲れた顔も見せず、彼は笑顔で感謝をしてくれた。

スルーしてもおかしくない小さなアカアシクワガタも、大事に持ち帰ってくれた。

なんだか、申し訳ない気持ちで胸がいっぱいになった。

 

 

『本当に素敵な時間を一緒に過ごせました。感謝ばかりです』

 

 

数日後、A氏から丁寧な日本語で届いたラインメッセージ。

結果的に、ヒメオオクワガタは採集することができずに終わったけれど、高山の「景色」を、「空気」を、「温泉」を、一緒に味わうことができた記憶に残る、とても暑い2日間だった。

親子して彼に感謝し、

「将来は、英語補助教員だけでなく、牧師の資格も取りたい」

という彼の未来に、祝福があることを心から祈りたい。

 

「友情」は人種も国籍も、そして、

言葉や宗教の違いも超えることを、彼は教えてくれた。

 

 ありがとう。愛しています。(^^)/

                令和5年9月7日(木)記す

 

 

★3カ月ぶりの更新なのに、記事を書こうとしたら、画像の取り組みがうまくいかず、デジカメSDカード内の画像が、全て消えてしまった。仕方なく過去の画像を組み合わせてみた。

本音を言うと、下の画像のようなヒメオオクワガタに出逢いたかった。A氏に採集を体験させたかった。笑い泣き