クローバー夜中に玄関脇でブンブン羽音を立てている甲虫を見つけた。

 

 

 

 
 
  小さくて黒色のコガネムシ。
 
 クロコガネである。
 
 小さく地味なこのコガネムシこそ私を甲虫好きにした原点だ。
 
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  幼い頃の実家周辺は建物も少なく地名も
     
 【ハゲヤマ】
 
 とよばれていた(笑)。
 
  田畑に囲まれて墓地につながる野山もあった。
 
 路上に横になれるほど車も少なく静かな場所だったのだ。
 
 
 
  幼児期の私の楽しみは移植ベラを持って、
 
  盛り土に登りクロコガネを採ることだった。
 
 
 
 
 粘土層が多く、乾燥している盛り土の表面にはヨモギのような草が
 
 たくさん生えていた。
 
 
  草の根っこを目印に、粘土層の土を斜面に沿って丁寧に削っていく。
 
 
  しばらくすると、羽化したばかりのクロコガネが見つかる。
 
 
 
  1頭採れると立て続けに3~4頭の成虫が採れた。
 
  ヨモギの葉と土の匂いが身体に染み込み、 
  そのたびに服を汚してしまい母に怒られた。
 
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 「どうして成虫が土の中にいるのだろうか??」
 
 草の根にそって幼虫がそれを食としていることや、
 
 羽化後の状態のまま越冬することも幼い私にはわからなかった。
 
 
 土を削るには慎重さが必要だ。
 
  蛹室を壊し成虫まで×にしてしまうからだ。
 
  蛹室から成虫を取り出したその時、
 
  口先からうがい薬のような茶色の液体が出てきた。
 
 「まさか×になったのでは?」
 
  そんなことを感じながら採集した個体をケースに入れる。
 
  どの個体も動きがぎこちなく,
 
  前足で威嚇ポーズをとっていて爪も痛い。
 
 「土の中と外の成虫とでは、同じクロコガネでも何か違うなぁ」
 
 幼心に感じた懐かしい思い出だ。
 
 
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 甲虫は羽化したからといってすぐに成虫になるわけではない。
 
  徐々に外気に触れながら内面の意識が変化していくのだ。
 
 卵から幼虫→幼虫から蛹→蛹から成虫へと完全変態する甲虫
 
 は、内面的にも想像以上の変化が起きているはずだ。
 
 
 
 
 
 幼い自分を優しく包んでくれた野山や畑等は、
 
  自然の不思議さや多様性を教えてくれた。
 
  いつ頃からか野山もなくなり、
 
  田畑も駐車場に変わってしまい昔の面影まで消えつつある。
 
  クロコガネは作物の害虫といわれているが、
 
  私にとっては懐かしくそして可愛い甲虫だ。
 
  もしも自分の人生で戻ってみたい時間があるのなら、
 
  幼児のままの姿であの時間にもう一度戻ってみたい。
 
  ヨモギと土の匂いを嗅ぎながら当時と同じ体験をしてみたい。
 
  レアな昆虫でもなく、
 
  庭の土を掘ればどこにでも見つかりそうなクロコガネだが
  あの頃とっても輝いて見えたのはなぜだろうか。