加茂隆康弁護士の著書『自動車保険金は出ないのがフツー』
第6章 落とし所を知れ、あるいは弁護の品格
因果な商売/退くときは退く/落とし所を知れ/類は友を呼ぶ/損保側弁護士の報酬のからくり
司法研修所を出てホームレス/初回の提示580万円、二回目ゼロ回答
K弁護士からの丁重な謝罪/重傷事故では訴訟まで視野に入れる
立証責任五分五分論/闘わずして勝つ
『司法研修所を出てホームレス』
搾取されたとしても、現在のイソ弁は、到底文句を言える立場にはありません。
新人弁護士の求職難をご存じでしょうか。
いま新人弁護士は厳冬(厳寒のシベリア)の時代を迎えています。
弁護士志望の司法修習生一二〇〇人に対し、求人を出している法律事務所は、一二〇件に届きません。
求人倍率は〇・一倍以下です。
司法研修所の卒業試験に合格しても、イソ弁、ノキ弁(軒下を借りる弁護士の意味で、通常は法律事務所に机だけ置かせてもらい、仕事を分けてもらうのを期待する。しかし、そんな机を置くスペース自体、ない事務所が多く、この形態も実現はきびしい)として採用してくれるところがなければ、路上生活者ということになりかねません。
そんなばかな、と思うことなかれ。
いきなりホームレスにならなくても、どこかの企業にもぐり込めばいいじゃないか、と思いになるでしょう。
現実は甘くはないのです。
加茂隆康弁護士の著書『自動車保険金は出ないのがフツー』
第6章 落とし所を知れ、あるいは弁護の品格
因果な商売/退くときは退く/落とし所を知れ/類は友を呼ぶ/損保側弁護士の報酬のからくり
司法研修所を出てホームレス/初回の提示580万円、二回目ゼロ回答
K弁護士からの丁重な謝罪/重傷事故では訴訟まで視野に入れる
立証責任五分五分論/闘わずして勝つ
『損保側弁護士の報酬のからくり』
審理が終結したとき、東京地裁六階の廊下をエレベーターまで歩きながら、被告側損保の
代理人を務めていた若手の弁護士に、加茂隆康弁護士は訊いたことがあります。
彼は、職場である法律事務所でパートナーをしていました。
「先生のところは、主にS損保の仕事をしているんですか」
「ええ、S損保とA損保ですね。たまにT損保も」
「損保の報酬は安いでしょ?」
「安いなんてもんじゃないですよ。聞いたら驚きますよ。国選をやっていた方がましですから」
彼は洗いざらい、しゃべってくれました。
国選というのは、刑事事件で犯罪者を弁解するため、国が弁護人を選任する事件のことです。
国から支給される弁護報酬はすこぶる安く、弁護士にとっては奉仕活動(ボランティア)になります。
損保は、多数の案件を特定の法律事務所に委任する代り、一件当たりの報酬単価を極端に低く抑えます。
通常の弁護士報酬の三分の一から五分の一と思えばよいでしょう。
薄利多売の方式で、損保は弁護士を酷使するわけです。
当然、法律事務所側は数をこなさないと採算が合いません。
数をこなすためには、一人や二人では処理しきれず、どうしても多人数の弁護士を抱える必要が生じます。
そこでボス弁は若手弁護士を沢山雇い入れ、彼らをこき使って仕事をさせることになります。
こうして損保は法律事務所を、そのボス弁はイソ弁を、酷使するという流れができ上がっています。
酷使の度合が「蟹工船」の搾取になるかどうかは、ひとえにボス弁の器量にかかっています。
第6章 落とし所を知れ、あるいは弁護の品格
因果な商売/退くときは退く/落とし所を知れ/類は友を呼ぶ/損保側弁護士の報酬のからくり
司法研修所を出てホームレス/初回の提示580万円、二回目ゼロ回答
K弁護士からの丁重な謝罪/重傷事故では訴訟まで視野に入れる
立証責任五分五分論/闘わずして勝つ
『損保側弁護士の報酬のからくり』
審理が終結したとき、東京地裁六階の廊下をエレベーターまで歩きながら、被告側損保の
代理人を務めていた若手の弁護士に、加茂隆康弁護士は訊いたことがあります。
彼は、職場である法律事務所でパートナーをしていました。
「先生のところは、主にS損保の仕事をしているんですか」
「ええ、S損保とA損保ですね。たまにT損保も」
「損保の報酬は安いでしょ?」
「安いなんてもんじゃないですよ。聞いたら驚きますよ。国選をやっていた方がましですから」
彼は洗いざらい、しゃべってくれました。
国選というのは、刑事事件で犯罪者を弁解するため、国が弁護人を選任する事件のことです。
国から支給される弁護報酬はすこぶる安く、弁護士にとっては奉仕活動(ボランティア)になります。
損保は、多数の案件を特定の法律事務所に委任する代り、一件当たりの報酬単価を極端に低く抑えます。
通常の弁護士報酬の三分の一から五分の一と思えばよいでしょう。
薄利多売の方式で、損保は弁護士を酷使するわけです。
当然、法律事務所側は数をこなさないと採算が合いません。
数をこなすためには、一人や二人では処理しきれず、どうしても多人数の弁護士を抱える必要が生じます。
そこでボス弁は若手弁護士を沢山雇い入れ、彼らをこき使って仕事をさせることになります。
こうして損保は法律事務所を、そのボス弁はイソ弁を、酷使するという流れができ上がっています。
酷使の度合が「蟹工船」の搾取になるかどうかは、ひとえにボス弁の器量にかかっています。
加茂隆康弁護士の著書『自動車保険金は出ないのがフツー』
第6章 落とし所を知れ、あるいは弁護の品格
因果な商売/退くときは退く/落とし所を知れ/類は友を呼ぶ/損保側弁護士の報酬のからくり
司法研修所を出てホームレス/初回の提示580万円、二回目ゼロ回答
K弁護士からの丁重な謝罪/重傷事故では訴訟まで視野に入れる
立証責任五分五分論/闘わずして勝つ
『類は友を呼ぶ』
法律事務所のボス弁が陰険ですと、不思議なものでイソ弁(勤務弁護士)もそういう者が集まります。
話題にのぼったF弁護士のイソ弁と対決したことがあります。
法廷で会っても会釈ひとつせず、ツンとすましていて実に感じが悪い。
いくら敵味方に分かれて対決しているからといっても、挨拶ぐらい交わすものです。それに加えて、
先方の出す反論の文書でも、微に入り細を穿って、どうでもいいことを突いてきます。
性格の悪いボスだから、こういうイソ弁を選ぶのか。
そう加茂隆康弁護士は思ったそうです。
第6章 落とし所を知れ、あるいは弁護の品格
因果な商売/退くときは退く/落とし所を知れ/類は友を呼ぶ/損保側弁護士の報酬のからくり
司法研修所を出てホームレス/初回の提示580万円、二回目ゼロ回答
K弁護士からの丁重な謝罪/重傷事故では訴訟まで視野に入れる
立証責任五分五分論/闘わずして勝つ
『類は友を呼ぶ』
法律事務所のボス弁が陰険ですと、不思議なものでイソ弁(勤務弁護士)もそういう者が集まります。
話題にのぼったF弁護士のイソ弁と対決したことがあります。
法廷で会っても会釈ひとつせず、ツンとすましていて実に感じが悪い。
いくら敵味方に分かれて対決しているからといっても、挨拶ぐらい交わすものです。それに加えて、
先方の出す反論の文書でも、微に入り細を穿って、どうでもいいことを突いてきます。
性格の悪いボスだから、こういうイソ弁を選ぶのか。
そう加茂隆康弁護士は思ったそうです。
加茂隆康弁護士の著書『自動車保険金は出ないのがフツー』
第6章 落とし所を知れ、あるいは弁護の品格
因果な商売/退くときは退く/落とし所を知れ/類は友を呼ぶ/損保側弁護士の報酬のからくり
司法研修所を出てホームレス/初回の提示580万円、二回目ゼロ回答
K弁護士からの丁重な謝罪/重傷事故では訴訟まで視野に入れる
立証責任五分五分論/闘わずして勝つ
『落とし所を知れ』
前章で加茂隆康弁護士は、徹底的に出させる訴訟戦略についてお話ししました。
いくら徹底的に出させるといっても、ゴリ押しはできません。
被害者に過失があったり、既往症があったりした場合には、それなりの譲歩は必要です。
被害者の中には、弁護士の説得にも一切耳を貸さず、強硬に自説を並べたて、和解折衝の席で裁判官にまで喰ってかかる人がいます。これは感心しません。
夜、歩道道の区別のない道を歩いていたとき、後ろからバイクにはねられ死亡した方がいます。
この方は七〇歳を超えた高齢で、当時、酒が入っていました。歩行がふらつき、道路の端ではなく、
車道にはみ出していた疑いが濃厚です。
警察の実況見分調書の「現場見取図」から、そう読めます。
どう考えても、被害者には一〇%以上の過失があるケースでした。
被告共済側は三〇%の過失相殺を主張しています。
残された遺族である二人の息子さんのうち、ご長男は過失相殺されることをすぐ了解されましたが、ご次男は頑として譲りません。あくまでも〇%対一〇〇%を主張します。
三回の和解を試みましたが、だめです。
四回目に裁判官が直接、本人に話しました。
加茂隆康弁護士とご長男とで、いま和解しないと判決では、被害者の過失をもっと大きく認定されかねないことを説明します。その結果、「加害者が出頭し、自分たちの前で謝罪してくれるのなら、一〇%の過失を認めてもよい」というところまで、ようやく歩み寄ってくれました。
被告側弁護士も折れ、次回に、加害者本人を東京地裁に呼んで謝罪させることに、尽力してくれました。
いくら加害者に対する恨みつらみがあったとしても、賠償金については、落とし所があることを知っていただきたいと思います。
第6章 落とし所を知れ、あるいは弁護の品格
因果な商売/退くときは退く/落とし所を知れ/類は友を呼ぶ/損保側弁護士の報酬のからくり
司法研修所を出てホームレス/初回の提示580万円、二回目ゼロ回答
K弁護士からの丁重な謝罪/重傷事故では訴訟まで視野に入れる
立証責任五分五分論/闘わずして勝つ
『落とし所を知れ』
前章で加茂隆康弁護士は、徹底的に出させる訴訟戦略についてお話ししました。
いくら徹底的に出させるといっても、ゴリ押しはできません。
被害者に過失があったり、既往症があったりした場合には、それなりの譲歩は必要です。
被害者の中には、弁護士の説得にも一切耳を貸さず、強硬に自説を並べたて、和解折衝の席で裁判官にまで喰ってかかる人がいます。これは感心しません。
夜、歩道道の区別のない道を歩いていたとき、後ろからバイクにはねられ死亡した方がいます。
この方は七〇歳を超えた高齢で、当時、酒が入っていました。歩行がふらつき、道路の端ではなく、
車道にはみ出していた疑いが濃厚です。
警察の実況見分調書の「現場見取図」から、そう読めます。
どう考えても、被害者には一〇%以上の過失があるケースでした。
被告共済側は三〇%の過失相殺を主張しています。
残された遺族である二人の息子さんのうち、ご長男は過失相殺されることをすぐ了解されましたが、ご次男は頑として譲りません。あくまでも〇%対一〇〇%を主張します。
三回の和解を試みましたが、だめです。
四回目に裁判官が直接、本人に話しました。
加茂隆康弁護士とご長男とで、いま和解しないと判決では、被害者の過失をもっと大きく認定されかねないことを説明します。その結果、「加害者が出頭し、自分たちの前で謝罪してくれるのなら、一〇%の過失を認めてもよい」というところまで、ようやく歩み寄ってくれました。
被告側弁護士も折れ、次回に、加害者本人を東京地裁に呼んで謝罪させることに、尽力してくれました。
いくら加害者に対する恨みつらみがあったとしても、賠償金については、落とし所があることを知っていただきたいと思います。
加茂隆康弁護士の著書『自動車保険金は出ないのがフツー』
第6章 落とし所を知れ、あるいは弁護の品格
因果な商売/退くときは退く/落とし所を知れ/類は友を呼ぶ/損保側弁護士の報酬のからくり
司法研修所を出てホームレス/初回の提示580万円、二回目ゼロ回答
K弁護士からの丁重な謝罪/重傷事故では訴訟まで視野に入れる
立証責任五分五分論/闘わずして勝つ
『退くときは退く』
損保側の弁護士は一般に損保からの依頼事件をメインとしています。
被害者代理人を務める弁護士は、そちらを仕事の中核に据えます。
しかしなかには、双方からの仕事を同程度にうける人もいます。同一の事件で、加害者、被害者の双方から受任するのは、双方代理として禁止されていますが、別の事件で、あるときは加害者、あるときは被害者の代理人を務めるのは、別に問題はありません。
ある事件の和解成立の席で、裁判官の出席を待つまでの間、相手方(被害側損保)の年輩の弁護士が
加茂隆康弁護士に言いました。
「先生は、Fという弁護士をご存じですか」
「知っています」
「親しいですか」
「いいえ、全然」
「あの人は、全く品が悪い。大嫌いです」
彼は吐き捨てました。およそ推測はつきましたが、あえて尋ねました。
「どんなふうに品が悪いですか」
「損保側についたときは、徹底的に出し渋り、どうでもいいような細かな点までいちいち反論してきます。その反面、被害者側の代理人をしたときは、絶対に和解せず、ことごとく判決を求めます。われわれ弁護士は、主張すべきことは主張したとしても、落とし所をわきまえて、退くときは退くじゃありませんか。あの男にはそれがないんです」
「たぶん、あの人の性格なんでしょうね」
彼は、加茂隆康弁護士が同じ思いを抱いていたと知って、安心したようでした。
第6章 落とし所を知れ、あるいは弁護の品格
因果な商売/退くときは退く/落とし所を知れ/類は友を呼ぶ/損保側弁護士の報酬のからくり
司法研修所を出てホームレス/初回の提示580万円、二回目ゼロ回答
K弁護士からの丁重な謝罪/重傷事故では訴訟まで視野に入れる
立証責任五分五分論/闘わずして勝つ
『退くときは退く』
損保側の弁護士は一般に損保からの依頼事件をメインとしています。
被害者代理人を務める弁護士は、そちらを仕事の中核に据えます。
しかしなかには、双方からの仕事を同程度にうける人もいます。同一の事件で、加害者、被害者の双方から受任するのは、双方代理として禁止されていますが、別の事件で、あるときは加害者、あるときは被害者の代理人を務めるのは、別に問題はありません。
ある事件の和解成立の席で、裁判官の出席を待つまでの間、相手方(被害側損保)の年輩の弁護士が
加茂隆康弁護士に言いました。
「先生は、Fという弁護士をご存じですか」
「知っています」
「親しいですか」
「いいえ、全然」
「あの人は、全く品が悪い。大嫌いです」
彼は吐き捨てました。およそ推測はつきましたが、あえて尋ねました。
「どんなふうに品が悪いですか」
「損保側についたときは、徹底的に出し渋り、どうでもいいような細かな点までいちいち反論してきます。その反面、被害者側の代理人をしたときは、絶対に和解せず、ことごとく判決を求めます。われわれ弁護士は、主張すべきことは主張したとしても、落とし所をわきまえて、退くときは退くじゃありませんか。あの男にはそれがないんです」
「たぶん、あの人の性格なんでしょうね」
彼は、加茂隆康弁護士が同じ思いを抱いていたと知って、安心したようでした。