加茂隆康弁護士の著書『自動車保険金は出ないのがフツー』
本日から、第6章に入っていきます。
第6章 落とし所を知れ、あるいは弁護の品格
因果な商売/退くときは退く/落とし所を知れ/類は友を呼ぶ/損保側弁護士の報酬のからくり
司法研修所を出てホームレス/初回の提示580万円、二回目ゼロ回答
K弁護士からの丁重な謝罪/重傷事故では訴訟まで視野に入れる
立証責任五分五分論/闘わずして勝つ
『因果な商売』
弁護士は困果な商売だと思います。
無理だと思われる要求でも、被害者の代理人を務める限り、顰蹙を買わない範囲で請求しなければなりません。損保側の代理人になれば、裁判では通らないと知りつつも、不払いの片棒をかつぐようなことをやらされます。
弁護士は、依頼人の利益(といっても、法的に許される正当な利益のことですが)を最優先にする職責を担っているため、どうしてもそうなります。
中国地方のある県の、整形外科医会に呼ばれて講演をしたことがあります。講演のあと、地元の料亭で宴席を設けてくれました。
少し酒肴が進んだころ、加茂隆康弁護士の真向かいに座った重鎮の医学博士から、こう尋ねられました。
「弁護士の方々は、どうして悪いことをでかした犯罪者を弁護なんかするんですか。うちの病院にも交通事故の患者が沢山みえますが、みんな損保には泣かされています、うちではいま、治療費打切りだなんて言われて、S損保やN損保とやりあってるんですが、そうしたら弁護士が出てきて、一切払わないって言うんですよ、いやぁひどい。先生には、こういうワルの弁護だけはしてもらいたくないですなぁ」
「私は、若いころには、国選弁護事件などで犯罪者の弁護をしましたが、最近ではしておりません」と
前置きしたうえで
「でもワルにも弁護をうける権利があるんで、頼まれれば弁護士も仕方ないんですよ。先生のところにS損保やN損保の代理人を名乗って電話してきた弁護士も、内心では患者や先生に申し訳ないな、と思っているかもしれませんよ」
「いやぁ、そんなふうじゃなかったなぁ。横柄な態度で、いままで払ってあげたんだから、それだけでもありがたく思えって言わんばかりでしたよ」
この先生の鬱憤を聞いていた左右の整形外科医の方々も
「そうだ」
「全くだ」
とおっしゃいます。
やがて酒席のあちこちから、同調の声があがりました。
真向かいの先生がみんなを制して口を開きました。
「弁護士によっては、一人で被害者の代理人をやったり加害者の代理人をやったりする人がいますが、ありゃどういう神経をしてるんですかね。モラルが欠如してるっつうか、私には信じられまへんな」
ほかの先生方の目が、加茂隆康弁護士に注がれます。
「先生、俳優だって、あるときは刑事役を、あるときは殺人者役演じますでしょ。それと同じです」
笑いながら加茂隆康弁護士が言うと、博士は理解しかねるといった風情で首を傾げました。
「弁護士の活動は、ありゃ演技なんですか」
加茂隆康弁護士の著書『自動車保険金は出ないのがフツー』
第5章 もっともっと徹底的に出させる超絶訴訟戦略
弁護士の選択/自賠責保険金を先取りするかしないか/年五%の遅延損害金の付加/和解における「調整金」/被害者の経済状態が決定要因/自賠責への時効中断/加害者が悪質な場合の慰謝料の増額/兄弟姉妹の慰謝料/逸失利益の考え方/県立高校の教師のケース/主夫の逸失利益/女子年少者の逸失利益/顔の傷の男女差別/男は顔の傷の一つや二つでガタガタ言うな/顔の傷は減収をもたらすか/損保側医師による意見書/被害者のとる次への的確な一手/国税調査官並みの税理士の調査/ビデオ撮影の技術/同一の車を使っての実験映像/ナレーションを練る/夜の現場撮影/反論を封じるDVD/和解か判決か/和解決裂から判決へ/金額に差が出る和解と判決/和解するメリットは何か/注意すべき既払金の計算/損保の都合で和解を先送りする場合の「調整金」
『損保の都合で和解を先送りする場合の「調整金」』
「調整金」の関係で、被害者(原告)としては留意すべき点があります。
「調整金」を含む和解案が裁判官から示された場合、原告と被告検討のうえ、次回期日に和解斡旋案の諾否を回答するというのが慣行です。双方が承諾すれば、直ちに和解成立となります。
原告側は和解を受諾する旨、早い時点で回答したのに、被告側損保が、
「まだ本店の部長決裁が下りない」とか、「人事異動があり、新任の部長が着任する四月まで待ってほしい」などということがあります。
この結果、解決は最低一か月は先送りされます。
このように被告側の一方的事情で回答を引き延ばされた場合には、「調整金」を加算してもらうのが合理的です。以前述べた損害認定額八〇〇〇万円の場合、一か月分の調整金は一六万六〇〇〇円になります。
ある和解の席で、このことを加茂隆康弁護士が東京地裁の裁判官に伝えましたら、直ちに賛同してくれたとのことです。
「そりゃそうですね。確かに被告側の都合で和解の成立を先送りするなら、『調整金』もその分、増額しなければならない」
これを聞いた被告代理人の弁護士は、損保に電話してくると言って、いったん退席しました。
戻ってきて、彼は言います。
「じゃあ、本日、和解成立でOKとのことです。原案通りの金額でお願いします」
少しでも支払金額がふえると思うと、損保はすぐに手のひらを返します。
金に対する執着、いじましさを見る思いがします。
第5章 もっともっと徹底的に出させる超絶訴訟戦略
弁護士の選択/自賠責保険金を先取りするかしないか/年五%の遅延損害金の付加/和解における「調整金」/被害者の経済状態が決定要因/自賠責への時効中断/加害者が悪質な場合の慰謝料の増額/兄弟姉妹の慰謝料/逸失利益の考え方/県立高校の教師のケース/主夫の逸失利益/女子年少者の逸失利益/顔の傷の男女差別/男は顔の傷の一つや二つでガタガタ言うな/顔の傷は減収をもたらすか/損保側医師による意見書/被害者のとる次への的確な一手/国税調査官並みの税理士の調査/ビデオ撮影の技術/同一の車を使っての実験映像/ナレーションを練る/夜の現場撮影/反論を封じるDVD/和解か判決か/和解決裂から判決へ/金額に差が出る和解と判決/和解するメリットは何か/注意すべき既払金の計算/損保の都合で和解を先送りする場合の「調整金」
『損保の都合で和解を先送りする場合の「調整金」』
「調整金」の関係で、被害者(原告)としては留意すべき点があります。
「調整金」を含む和解案が裁判官から示された場合、原告と被告検討のうえ、次回期日に和解斡旋案の諾否を回答するというのが慣行です。双方が承諾すれば、直ちに和解成立となります。
原告側は和解を受諾する旨、早い時点で回答したのに、被告側損保が、
「まだ本店の部長決裁が下りない」とか、「人事異動があり、新任の部長が着任する四月まで待ってほしい」などということがあります。
この結果、解決は最低一か月は先送りされます。
このように被告側の一方的事情で回答を引き延ばされた場合には、「調整金」を加算してもらうのが合理的です。以前述べた損害認定額八〇〇〇万円の場合、一か月分の調整金は一六万六〇〇〇円になります。
ある和解の席で、このことを加茂隆康弁護士が東京地裁の裁判官に伝えましたら、直ちに賛同してくれたとのことです。
「そりゃそうですね。確かに被告側の都合で和解の成立を先送りするなら、『調整金』もその分、増額しなければならない」
これを聞いた被告代理人の弁護士は、損保に電話してくると言って、いったん退席しました。
戻ってきて、彼は言います。
「じゃあ、本日、和解成立でOKとのことです。原案通りの金額でお願いします」
少しでも支払金額がふえると思うと、損保はすぐに手のひらを返します。
金に対する執着、いじましさを見る思いがします。
加茂隆康弁護士の著書『自動車保険金は出ないのがフツー』
第5章 もっともっと徹底的に出させる超絶訴訟戦略
弁護士の選択/自賠責保険金を先取りするかしないか/年五%の遅延損害金の付加/和解における「調整金」/被害者の経済状態が決定要因/自賠責への時効中断/加害者が悪質な場合の慰謝料の増額/兄弟姉妹の慰謝料/逸失利益の考え方/県立高校の教師のケース/主夫の逸失利益/女子年少者の逸失利益/顔の傷の男女差別/男は顔の傷の一つや二つでガタガタ言うな/顔の傷は減収をもたらすか/損保側医師による意見書/被害者のとる次への的確な一手/国税調査官並みの税理士の調査/ビデオ撮影の技術/同一の車を使っての実験映像/ナレーションを練る/夜の現場撮影/反論を封じるDVD/和解か判決か/和解決裂から判決へ/金額に差が出る和解と判決/和解するメリットは何か/注意すべき既払金の計算/損保の都合で和解を先送りする場合の「調整金」
『注意すべき既払金の計算』
和解でも判決でも、既払金をさしひくというプロセスがあります。
たとえば、休業損害一〇〇〇万円のうち、相手損保ですでに七〇〇万円を払っていれば、それをさしひかなければなりません。
ここで注意すべきは、原告側が損害として計上しなかった(またはできなかった)損害は、既払金に組み入れてはいけないということです。
たとえば、原告が資料から把握できた治療費は、七〇万円なのに、被告側損保は四〇〇万円の治療費を払っているから、それをさしひけという主張が出ることがあります。
治療費の支払いは、損保と病院が直接やりとりするため、治療費の裏付け資料が被害者の手に一部分しか渡されないということがあります。
こういう場合には、被告側損保の言っている治療費の明細と、原告が把握しているそれをつき合わせる必要があります。どんな項目にせよ、損害として計上した金額について、その全部または一部を被告側損保で払ったというのなら分かりますが、損害として計上していない金額を、払ったといって引かせようとするのは、整合性がありません。
損保側が意識的にそういうことをするとまでは言いませんが、訴訟において、このようなすり替えの主張が、被告側損保からよく出ます。
小額ですと見逃しやすいですから、被害者もその代理人の弁護士も、照合が肝心です。
第5章 もっともっと徹底的に出させる超絶訴訟戦略
弁護士の選択/自賠責保険金を先取りするかしないか/年五%の遅延損害金の付加/和解における「調整金」/被害者の経済状態が決定要因/自賠責への時効中断/加害者が悪質な場合の慰謝料の増額/兄弟姉妹の慰謝料/逸失利益の考え方/県立高校の教師のケース/主夫の逸失利益/女子年少者の逸失利益/顔の傷の男女差別/男は顔の傷の一つや二つでガタガタ言うな/顔の傷は減収をもたらすか/損保側医師による意見書/被害者のとる次への的確な一手/国税調査官並みの税理士の調査/ビデオ撮影の技術/同一の車を使っての実験映像/ナレーションを練る/夜の現場撮影/反論を封じるDVD/和解か判決か/和解決裂から判決へ/金額に差が出る和解と判決/和解するメリットは何か/注意すべき既払金の計算/損保の都合で和解を先送りする場合の「調整金」
『注意すべき既払金の計算』
和解でも判決でも、既払金をさしひくというプロセスがあります。
たとえば、休業損害一〇〇〇万円のうち、相手損保ですでに七〇〇万円を払っていれば、それをさしひかなければなりません。
ここで注意すべきは、原告側が損害として計上しなかった(またはできなかった)損害は、既払金に組み入れてはいけないということです。
たとえば、原告が資料から把握できた治療費は、七〇万円なのに、被告側損保は四〇〇万円の治療費を払っているから、それをさしひけという主張が出ることがあります。
治療費の支払いは、損保と病院が直接やりとりするため、治療費の裏付け資料が被害者の手に一部分しか渡されないということがあります。
こういう場合には、被告側損保の言っている治療費の明細と、原告が把握しているそれをつき合わせる必要があります。どんな項目にせよ、損害として計上した金額について、その全部または一部を被告側損保で払ったというのなら分かりますが、損害として計上していない金額を、払ったといって引かせようとするのは、整合性がありません。
損保側が意識的にそういうことをするとまでは言いませんが、訴訟において、このようなすり替えの主張が、被告側損保からよく出ます。
小額ですと見逃しやすいですから、被害者もその代理人の弁護士も、照合が肝心です。
加茂隆康弁護士の著書『自動車保険金は出ないのがフツー』
第5章 もっともっと徹底的に出させる超絶訴訟戦略
弁護士の選択/自賠責保険金を先取りするかしないか/年五%の遅延損害金の付加/和解における「調整金」/被害者の経済状態が決定要因/自賠責への時効中断/加害者が悪質な場合の慰謝料の増額/兄弟姉妹の慰謝料/逸失利益の考え方/県立高校の教師のケース/主夫の逸失利益/女子年少者の逸失利益/顔の傷の男女差別/男は顔の傷の一つや二つでガタガタ言うな/顔の傷は減収をもたらすか/損保側医師による意見書/被害者のとる次への的確な一手/国税調査官並みの税理士の調査/ビデオ撮影の技術/同一の車を使っての実験映像/ナレーションを練る/夜の現場撮影/反論を封じるDVD/和解か判決か/和解決裂から判決へ/金額に差が出る和解と判決/和解するメリットは何か/注意すべき既払金の計算/損保の都合で和解を先送りする場合の「調整金」
『和解するメリットは何か』
それなら、和解するメリットはあるのかと思われるでしょう。
こうして、金額だけを比較対照すれば、当然の疑問です。
前述の例は、分かりやすい一例としてご説明しました。
事案によっては、被告損保側で逸失利益や慰謝料を徹底的に争ってくることがあります。
一審の段階では、裁判官が異動で代わらない限り同じ裁判官が判断しますから、和解提示案での損害認定額と、判決でのそれが大きく異なるということは考えがたいところです。
しかし、一審判決に対し被告側だった一審の判断がくつがえり、高裁で逆転することもないわけではありません。
その点、和解というのはお互いに控訴権を放棄し、紛争を終結させるということです。
和解が成立すれば、審理が高裁にもち込まれるということはありえません。
金額の多寡よりも、一日も早い解決を望んでいる被害者の場合には、和解も十分に考慮すべき選択肢です。
第5章 もっともっと徹底的に出させる超絶訴訟戦略
弁護士の選択/自賠責保険金を先取りするかしないか/年五%の遅延損害金の付加/和解における「調整金」/被害者の経済状態が決定要因/自賠責への時効中断/加害者が悪質な場合の慰謝料の増額/兄弟姉妹の慰謝料/逸失利益の考え方/県立高校の教師のケース/主夫の逸失利益/女子年少者の逸失利益/顔の傷の男女差別/男は顔の傷の一つや二つでガタガタ言うな/顔の傷は減収をもたらすか/損保側医師による意見書/被害者のとる次への的確な一手/国税調査官並みの税理士の調査/ビデオ撮影の技術/同一の車を使っての実験映像/ナレーションを練る/夜の現場撮影/反論を封じるDVD/和解か判決か/和解決裂から判決へ/金額に差が出る和解と判決/和解するメリットは何か/注意すべき既払金の計算/損保の都合で和解を先送りする場合の「調整金」
『和解するメリットは何か』
それなら、和解するメリットはあるのかと思われるでしょう。
こうして、金額だけを比較対照すれば、当然の疑問です。
前述の例は、分かりやすい一例としてご説明しました。
事案によっては、被告損保側で逸失利益や慰謝料を徹底的に争ってくることがあります。
一審の段階では、裁判官が異動で代わらない限り同じ裁判官が判断しますから、和解提示案での損害認定額と、判決でのそれが大きく異なるということは考えがたいところです。
しかし、一審判決に対し被告側だった一審の判断がくつがえり、高裁で逆転することもないわけではありません。
その点、和解というのはお互いに控訴権を放棄し、紛争を終結させるということです。
和解が成立すれば、審理が高裁にもち込まれるということはありえません。
金額の多寡よりも、一日も早い解決を望んでいる被害者の場合には、和解も十分に考慮すべき選択肢です。
加茂隆康弁護士の著書『自動車保険金は出ないのがフツー』
第5章 もっともっと徹底的に出させる超絶訴訟戦略
弁護士の選択/自賠責保険金を先取りするかしないか/年五%の遅延損害金の付加/和解における「調整金」/被害者の経済状態が決定要因/自賠責への時効中断/加害者が悪質な場合の慰謝料の増額/兄弟姉妹の慰謝料/逸失利益の考え方/県立高校の教師のケース/主夫の逸失利益/女子年少者の逸失利益/顔の傷の男女差別/男は顔の傷の一つや二つでガタガタ言うな/顔の傷は減収をもたらすか/損保側医師による意見書/被害者のとる次への的確な一手/国税調査官並みの税理士の調査/ビデオ撮影の技術/同一の車を使っての実験映像/ナレーションを練る/夜の現場撮影/反論を封じるDVD/和解か判決か/和解決裂から判決へ/金額に差が出る和解と判決/和解するメリットは何か/注意すべき既払金の計算/損保の都合で和解を先送りする場合の「調整金」
『金額に差が出る和解と判決 2』
裁判所の認定した損害額が八〇〇〇万円だったとしましょう。
そうしますと、四〇〇万円(~八〇〇万円)程度の弁護士費用が判決ならつきます。
これが和解ですと、ゼロになります。
この例で、判決での弁護士費用を含めた認定損害額が、八四〇〇万円だと仮定しましょう。これに年五%の遅延損害金がつきます。事故日から被告側の支払日まで二年が経過するとしますと、
五%×二年分=一〇%
の遅延損害金がさらに加算されます。
八四〇〇万円×一〇%=八四〇万円
八四〇〇万円+八四〇万円=九二四〇万円
これが判決にもとづき、被告側損保に請求できる金額となります。
和解ですと、この遅延損害金が原則としてつきません。「原則として」と書いたのは、
東京地裁では、判決に至った場合に認められるであろう遅延損害金の約五〇%を「調整金」という名目で認めているからです。
前述の例でご説明しましょう。
和解では、弁護士費用はつきませんので、裁判所の認定学は八〇〇〇万円です。
この認定額に、和解案提示時点までの遅延損害金の約五〇%を上乗せします。事故日から和解案提示時まで一年九か月が経過しているとしますと、「調整金」は概ね次のようになります。
八〇〇〇万円×五%×(一年+九か月/一二か月)×五〇%=三五〇万円
この「調整金」を和解での認定額に加算しますと、次のようになります。
八〇〇〇万円+三五〇万円=八三五〇万円
結局、判決なら九二四〇万円になるのに、和解では八三五〇万円にしかなりません。
この差は八九〇万円です。
これは誰が考えても、判決の方が得だといえます。
第5章 もっともっと徹底的に出させる超絶訴訟戦略
弁護士の選択/自賠責保険金を先取りするかしないか/年五%の遅延損害金の付加/和解における「調整金」/被害者の経済状態が決定要因/自賠責への時効中断/加害者が悪質な場合の慰謝料の増額/兄弟姉妹の慰謝料/逸失利益の考え方/県立高校の教師のケース/主夫の逸失利益/女子年少者の逸失利益/顔の傷の男女差別/男は顔の傷の一つや二つでガタガタ言うな/顔の傷は減収をもたらすか/損保側医師による意見書/被害者のとる次への的確な一手/国税調査官並みの税理士の調査/ビデオ撮影の技術/同一の車を使っての実験映像/ナレーションを練る/夜の現場撮影/反論を封じるDVD/和解か判決か/和解決裂から判決へ/金額に差が出る和解と判決/和解するメリットは何か/注意すべき既払金の計算/損保の都合で和解を先送りする場合の「調整金」
『金額に差が出る和解と判決 2』
裁判所の認定した損害額が八〇〇〇万円だったとしましょう。
そうしますと、四〇〇万円(~八〇〇万円)程度の弁護士費用が判決ならつきます。
これが和解ですと、ゼロになります。
この例で、判決での弁護士費用を含めた認定損害額が、八四〇〇万円だと仮定しましょう。これに年五%の遅延損害金がつきます。事故日から被告側の支払日まで二年が経過するとしますと、
五%×二年分=一〇%
の遅延損害金がさらに加算されます。
八四〇〇万円×一〇%=八四〇万円
八四〇〇万円+八四〇万円=九二四〇万円
これが判決にもとづき、被告側損保に請求できる金額となります。
和解ですと、この遅延損害金が原則としてつきません。「原則として」と書いたのは、
東京地裁では、判決に至った場合に認められるであろう遅延損害金の約五〇%を「調整金」という名目で認めているからです。
前述の例でご説明しましょう。
和解では、弁護士費用はつきませんので、裁判所の認定学は八〇〇〇万円です。
この認定額に、和解案提示時点までの遅延損害金の約五〇%を上乗せします。事故日から和解案提示時まで一年九か月が経過しているとしますと、「調整金」は概ね次のようになります。
八〇〇〇万円×五%×(一年+九か月/一二か月)×五〇%=三五〇万円
この「調整金」を和解での認定額に加算しますと、次のようになります。
八〇〇〇万円+三五〇万円=八三五〇万円
結局、判決なら九二四〇万円になるのに、和解では八三五〇万円にしかなりません。
この差は八九〇万円です。
これは誰が考えても、判決の方が得だといえます。