加茂隆康弁護士の著書『自動車保険金は出ないのがフツー』
第6章 落とし所を知れ、あるいは弁護の品格
因果な商売/退くときは退く/落とし所を知れ/類は友を呼ぶ/損保側弁護士の報酬のからくり
司法研修所を出てホームレス/初回の提示580万円、二回目ゼロ回答
K弁護士からの丁重な謝罪/重傷事故では訴訟まで視野に入れる
立証責任五分五分論/闘わずして勝つ
『K弁護士からの丁重な謝罪』
その文書が先方に届いた日の翌日のことです。
K弁護士から電話が入りました。彼はT損保の案件を数多く扱っていましたので、
加茂隆康弁護士にはすぐにピンときたそうです。
「いやぁ、このたびの件では、加茂先生にとんだご迷惑をおかけしました。
私もT損保が出した先生あての『回答書』を読んで、びっくりしました。五八〇万の提示だったのものを
なぜ急にゼロ同然にするのか。先生のお手紙は役員から担当の部長にわたりまして、部長があわてて私の事務所にすっとんできたという次第です。部長は、『回答書』のことを知らなかったようです。このご時勢、なんとか穏便におさめていただけないかと思いまして」
「一七一〇円の提示はどうするんですか」
「もちろん撤回します。こんなの話になりませんよ。先生がお怒りになるのは当然のことです。もうこの際、金額は先生のご要求額を呑みますので、早急に示談させていただけませんでしょうか」
「それならK先生の顔をたてて、示談にしましょう」
それから数日後、こちらの要求通り一九五〇万円で示談書をとり交わしました。
部長が知らなかったといっても、この案件の対応については聞いていなかったというだけで、自動車査定部の社員全員にひごろから不払いを指令していたのは、ほかならぬ部長であることぐらい、加茂隆康弁護士には分かっていたそうです。
要求が通ったから言うわけではありませんが、何が是で何が非か、そのときの状況分析をして落とし所はどこか、T損保側にたつK弁護士は見抜いたのだと思います。相手方代理人であっても、こういうところに品格を感じます。
ちなみに松代さんは、同じT損保に弁護士費用担保特約をつけていました。そのため、加茂隆康弁護士にかかった実際の弁護士費用も、全額T損保が負担することになりました。
加茂隆康弁護士の著書『自動車保険金は出ないのがフツー』
第6章 落とし所を知れ、あるいは弁護の品格
因果な商売/退くときは退く/落とし所を知れ/類は友を呼ぶ/損保側弁護士の報酬のからくり
司法研修所を出てホームレス/初回の提示580万円、二回目ゼロ回答
K弁護士からの丁重な謝罪/重傷事故では訴訟まで視野に入れる
立証責任五分五分論/闘わずして勝つ
『初回の提示580万円、二回目ゼロ回答 3』
「わずか数か月前、不払いの累積について前社長が謝罪会見をしたばかりだというのに、
全く反省の色がなく、またしても故意に保険金不払いを画策するようなT損保に対しては、貴庁(金融庁)から直ちに是正を勧告していただくとともに、同社に対し、六か月間の業務停止命令を発せられますよう要請します。」
金融庁の担当窓口には加茂隆康弁護士自身で電話もかけ、実情を説明します。
先方は上司に報告すると言います。
T損保と金融庁にはその日のうちに速達で送りました。
T損保の役員あての書簡は「親展」にし、金融庁あての文書の写しも同封しました。
ちょうど保険金不払いが大々的に新聞で報じられ、T損保の社長は引責辞任をしたばかりでした。
それなのに、代理人の弁護士に対し、数字のまやかしで保険金不払いを企てるとは何事か。
ナメんじゃない!こんな課長は子会社にとばし、冷や飯を食わせてやる。
加茂隆康弁護士の正義感が一気に火を噴きました。
第6章 落とし所を知れ、あるいは弁護の品格
因果な商売/退くときは退く/落とし所を知れ/類は友を呼ぶ/損保側弁護士の報酬のからくり
司法研修所を出てホームレス/初回の提示580万円、二回目ゼロ回答
K弁護士からの丁重な謝罪/重傷事故では訴訟まで視野に入れる
立証責任五分五分論/闘わずして勝つ
『初回の提示580万円、二回目ゼロ回答 3』
「わずか数か月前、不払いの累積について前社長が謝罪会見をしたばかりだというのに、
全く反省の色がなく、またしても故意に保険金不払いを画策するようなT損保に対しては、貴庁(金融庁)から直ちに是正を勧告していただくとともに、同社に対し、六か月間の業務停止命令を発せられますよう要請します。」
金融庁の担当窓口には加茂隆康弁護士自身で電話もかけ、実情を説明します。
先方は上司に報告すると言います。
T損保と金融庁にはその日のうちに速達で送りました。
T損保の役員あての書簡は「親展」にし、金融庁あての文書の写しも同封しました。
ちょうど保険金不払いが大々的に新聞で報じられ、T損保の社長は引責辞任をしたばかりでした。
それなのに、代理人の弁護士に対し、数字のまやかしで保険金不払いを企てるとは何事か。
ナメんじゃない!こんな課長は子会社にとばし、冷や飯を食わせてやる。
加茂隆康弁護士の正義感が一気に火を噴きました。
加茂隆康弁護士の著書『自動車保険金は出ないのがフツー』
第6章 落とし所を知れ、あるいは弁護の品格
因果な商売/退くときは退く/落とし所を知れ/類は友を呼ぶ/損保側弁護士の報酬のからくり
司法研修所を出てホームレス/初回の提示580万円、二回目ゼロ回答
K弁護士からの丁重な謝罪/重傷事故では訴訟まで視野に入れる
立証責任五分五分論/闘わずして勝つ
『初回の提示580万円、二回目ゼロ回答 2』
事故前年度は彼に五〇〇万円の年収があったのに対し、事故が発生した年の年収は、
五九〇万円になっている。事故が起きた年の方が年収がふえているのだから、逸失利益は発生しないと。
この理屈には、まやかしがあります。事故が起きたのは、その年の一〇月三一日夜、
仕事を終えてからであり、一月から一〇月までの一〇か月間、彼は健康体で働いていたのです。
一一月、一二月は入院中で、給与は支給されませんでした。
ですから、事故発生年の年収が五九〇万円といっても、それは一〇か月分にすぎません。
事故の翌年度は四二〇万円に減っています。
五九〇万円を一〇か月で割りますと、事故直近の給与は、五九万円です。
もし事故に遭遇していなかったなら、
五九万円×一二か月=七〇八万円
の給与を、事故の翌年も受けとれていたはずです。これが四二〇万円になったということは、
七〇八万円-四二〇万円=二八八万円
も減少したのです。
この現実を無視して、逸失利益がゼロとは何事か。
松代さんが歯ぎしりしたのはもちろんですが、加茂隆康弁護士自身も担当課の横っ面を殴りつけたいくらい、カッとなりました。
こういうとき、待ったなしで、加茂隆康弁護士は怒りを行動に移します。
抗議の電話を担当課長に入れるなどという手ぬるいことはしません。
その日のうちに、T損保の代表取締役社長、常務取締役兼業務品質改善部長あて、「自動車保険金不払いに対する是正勧告書」を作りました。カッとなりますと、炎にあおられるせいか、文章を書く勢いが猛烈に速くなります。溶岩のように火口から文章が噴き出してきます。手が追いつきません。あわせて金融庁の「金融サービス利用者相談室」に対しても、「T損保への是正勧告及び業務停止命令動の要請書」を作成しました。
第6章 落とし所を知れ、あるいは弁護の品格
因果な商売/退くときは退く/落とし所を知れ/類は友を呼ぶ/損保側弁護士の報酬のからくり
司法研修所を出てホームレス/初回の提示580万円、二回目ゼロ回答
K弁護士からの丁重な謝罪/重傷事故では訴訟まで視野に入れる
立証責任五分五分論/闘わずして勝つ
『初回の提示580万円、二回目ゼロ回答 2』
事故前年度は彼に五〇〇万円の年収があったのに対し、事故が発生した年の年収は、
五九〇万円になっている。事故が起きた年の方が年収がふえているのだから、逸失利益は発生しないと。
この理屈には、まやかしがあります。事故が起きたのは、その年の一〇月三一日夜、
仕事を終えてからであり、一月から一〇月までの一〇か月間、彼は健康体で働いていたのです。
一一月、一二月は入院中で、給与は支給されませんでした。
ですから、事故発生年の年収が五九〇万円といっても、それは一〇か月分にすぎません。
事故の翌年度は四二〇万円に減っています。
五九〇万円を一〇か月で割りますと、事故直近の給与は、五九万円です。
もし事故に遭遇していなかったなら、
五九万円×一二か月=七〇八万円
の給与を、事故の翌年も受けとれていたはずです。これが四二〇万円になったということは、
七〇八万円-四二〇万円=二八八万円
も減少したのです。
この現実を無視して、逸失利益がゼロとは何事か。
松代さんが歯ぎしりしたのはもちろんですが、加茂隆康弁護士自身も担当課の横っ面を殴りつけたいくらい、カッとなりました。
こういうとき、待ったなしで、加茂隆康弁護士は怒りを行動に移します。
抗議の電話を担当課長に入れるなどという手ぬるいことはしません。
その日のうちに、T損保の代表取締役社長、常務取締役兼業務品質改善部長あて、「自動車保険金不払いに対する是正勧告書」を作りました。カッとなりますと、炎にあおられるせいか、文章を書く勢いが猛烈に速くなります。溶岩のように火口から文章が噴き出してきます。手が追いつきません。あわせて金融庁の「金融サービス利用者相談室」に対しても、「T損保への是正勧告及び業務停止命令動の要請書」を作成しました。
加茂隆康弁護士の著書『自動車保険金は出ないのがフツー』
第6章 落とし所を知れ、あるいは弁護の品格
因果な商売/退くときは退く/落とし所を知れ/類は友を呼ぶ/損保側弁護士の報酬のからくり
司法研修所を出てホームレス/初回の提示580万円、二回目ゼロ回答
K弁護士からの丁重な謝罪/重傷事故では訴訟まで視野に入れる
立証責任五分五分論/闘わずして勝つ
『初回の提示580万円、二回目ゼロ回答』
後遺障害等級一〇級になった、松代さんという四九歳の男性被害者がいました。
このケースで、T損保からの初回の提示額五八〇万円に対し、加茂隆康弁護士が、
二一五〇万円を請求したときのことです。この金額には、「弁護士費用」という名目で二〇〇万円が
含まれていますから、これをさしひけば、正味損害額は一九五〇万円です。
二週間以内に回答をくれるよう文書で求めたところ、四か月も待たされた挙句、T損保から
送られてきた再提示案は仰天するものでした。
「今後のお支払い額は一七一〇円」だというのです。
それを見たとき加茂隆康弁護士は、先方では「一七一〇万円」と記載すべきところを、うっかり「一七一〇円」と入力ミスをしたのか、と思いました。
しかし、よく読んでみますと、誤植ではなく本気だと分かります。
損保側の提示案は、回を重ねるごとに少しずつではあっても金額がふえていくのがふつうです。
五八〇万円が一気にただ当然の一七一〇円に落ち込むなどというケースは、見たことがありません。
なぜこんなに急降下したのか。
加茂隆康弁護士が文書を送ったのは、三月中旬の、先方にとっては人事異動の時期でした。
初回に五八〇万円を提示した担当者が転勤し、四月から新任の担当者と課長がこの件を引き継ぎました。
松代さんはサラリーマンです。事故の直前に数回、転職していました。
彼らは、記録を一から洗い直し、被害者の松代さんの過失利益をゼロと算定したのです。
その理由はこういうことです。
第6章 落とし所を知れ、あるいは弁護の品格
因果な商売/退くときは退く/落とし所を知れ/類は友を呼ぶ/損保側弁護士の報酬のからくり
司法研修所を出てホームレス/初回の提示580万円、二回目ゼロ回答
K弁護士からの丁重な謝罪/重傷事故では訴訟まで視野に入れる
立証責任五分五分論/闘わずして勝つ
『初回の提示580万円、二回目ゼロ回答』
後遺障害等級一〇級になった、松代さんという四九歳の男性被害者がいました。
このケースで、T損保からの初回の提示額五八〇万円に対し、加茂隆康弁護士が、
二一五〇万円を請求したときのことです。この金額には、「弁護士費用」という名目で二〇〇万円が
含まれていますから、これをさしひけば、正味損害額は一九五〇万円です。
二週間以内に回答をくれるよう文書で求めたところ、四か月も待たされた挙句、T損保から
送られてきた再提示案は仰天するものでした。
「今後のお支払い額は一七一〇円」だというのです。
それを見たとき加茂隆康弁護士は、先方では「一七一〇万円」と記載すべきところを、うっかり「一七一〇円」と入力ミスをしたのか、と思いました。
しかし、よく読んでみますと、誤植ではなく本気だと分かります。
損保側の提示案は、回を重ねるごとに少しずつではあっても金額がふえていくのがふつうです。
五八〇万円が一気にただ当然の一七一〇円に落ち込むなどというケースは、見たことがありません。
なぜこんなに急降下したのか。
加茂隆康弁護士が文書を送ったのは、三月中旬の、先方にとっては人事異動の時期でした。
初回に五八〇万円を提示した担当者が転勤し、四月から新任の担当者と課長がこの件を引き継ぎました。
松代さんはサラリーマンです。事故の直前に数回、転職していました。
彼らは、記録を一から洗い直し、被害者の松代さんの過失利益をゼロと算定したのです。
その理由はこういうことです。
加茂隆康弁護士の著書『自動車保険金は出ないのがフツー』
第6章 落とし所を知れ、あるいは弁護の品格
因果な商売/退くときは退く/落とし所を知れ/類は友を呼ぶ/損保側弁護士の報酬のからくり
司法研修所を出てホームレス/初回の提示580万円、二回目ゼロ回答
K弁護士からの丁重な謝罪/重傷事故では訴訟まで視野に入れる
立証責任五分五分論/闘わずして勝つ
『司法研修所を出てホームレス 続き』
弁護士などという小うるさそうな資格をもった人物は、企業側で歓迎しません。
有資格者だからといって、給与を高くは設定しづらい。法律問題で困ったときは、顧問弁護士で足りてしまう。
年間顧問料の方が、従業員一人ふやすより、はるかに安あがりだ。企業側はそう考えるのです。
法律事務所の門戸は狭く、民間企業は採用しない、裁判官や検察官への任官は本人が希望しないし、時期的にもう手遅れだとなりますと、
行き所がありません。そうなると、即独(即独立のこと)といって、自宅を法律事務所として構えるか(といっても、誰もお客様は来ないでしょう)
さもなくばホームレスということになります。
これまで一年間の司法修習期間中、司法修習生には、国から給与が支給されてきましたが、
二〇一〇年一一月末採用予定の修習生からは、給与は支給ではなく、希望者への貸与に変わります。
貸与された給与は、後日、返還しなければなりません。果たして返せるのか。
加茂隆康弁護士は思わず、シベリアの収容所(入ったことはありませんが)を思い浮かべてしまいます。
日弁連の集計によれば、二〇一〇年の三月時点で、司法研修所を卒業し法曹資格をとりながら、任官せず、弁護士として法律事務所や企業に就職できず、結局、どこにも就職した気配のない人(進路不明者)が七七人いるということです。
これが現在の司法修習生をとりまく環境ですから、司法研修所の卒業試験までに就職先が決まっていない修習生は、精神的に不安定な状況におかれます。なかには、神経を病み、結局、落第する人もいると聞いています。
司法研修所を卒業するとホームレス、は決して非現実的な話ではありません。
運よく就職できたイソ弁にとっては、自分の船が、豪華クルーザーではなく「蟹工船」であったとしても、夜露がしのげ、毎日の食事にありつけるだけまし、と考えなければならないでしょう。
新人弁護士の数の多さは、質の低下を招いています。
質の悪い若手弁護士が、陰険なボス弁のもとで、損保の言いなりに喧嘩腰で訴訟してくる。
被害者は、そういう人物を相手にしなければならない時代になっています。
第6章 落とし所を知れ、あるいは弁護の品格
因果な商売/退くときは退く/落とし所を知れ/類は友を呼ぶ/損保側弁護士の報酬のからくり
司法研修所を出てホームレス/初回の提示580万円、二回目ゼロ回答
K弁護士からの丁重な謝罪/重傷事故では訴訟まで視野に入れる
立証責任五分五分論/闘わずして勝つ
『司法研修所を出てホームレス 続き』
弁護士などという小うるさそうな資格をもった人物は、企業側で歓迎しません。
有資格者だからといって、給与を高くは設定しづらい。法律問題で困ったときは、顧問弁護士で足りてしまう。
年間顧問料の方が、従業員一人ふやすより、はるかに安あがりだ。企業側はそう考えるのです。
法律事務所の門戸は狭く、民間企業は採用しない、裁判官や検察官への任官は本人が希望しないし、時期的にもう手遅れだとなりますと、
行き所がありません。そうなると、即独(即独立のこと)といって、自宅を法律事務所として構えるか(といっても、誰もお客様は来ないでしょう)
さもなくばホームレスということになります。
これまで一年間の司法修習期間中、司法修習生には、国から給与が支給されてきましたが、
二〇一〇年一一月末採用予定の修習生からは、給与は支給ではなく、希望者への貸与に変わります。
貸与された給与は、後日、返還しなければなりません。果たして返せるのか。
加茂隆康弁護士は思わず、シベリアの収容所(入ったことはありませんが)を思い浮かべてしまいます。
日弁連の集計によれば、二〇一〇年の三月時点で、司法研修所を卒業し法曹資格をとりながら、任官せず、弁護士として法律事務所や企業に就職できず、結局、どこにも就職した気配のない人(進路不明者)が七七人いるということです。
これが現在の司法修習生をとりまく環境ですから、司法研修所の卒業試験までに就職先が決まっていない修習生は、精神的に不安定な状況におかれます。なかには、神経を病み、結局、落第する人もいると聞いています。
司法研修所を卒業するとホームレス、は決して非現実的な話ではありません。
運よく就職できたイソ弁にとっては、自分の船が、豪華クルーザーではなく「蟹工船」であったとしても、夜露がしのげ、毎日の食事にありつけるだけまし、と考えなければならないでしょう。
新人弁護士の数の多さは、質の低下を招いています。
質の悪い若手弁護士が、陰険なボス弁のもとで、損保の言いなりに喧嘩腰で訴訟してくる。
被害者は、そういう人物を相手にしなければならない時代になっています。