KYON2(キョンキョン)こと小泉今日子さんの19thシングル。キョンキョンと言えば、私は「艶姿ナミダ娘」「なんてったってアイドル」「見逃してくれよ!」などのイケイケなイメージが強い。だが、この「夜明けのMEW」や「魔女」などの路線も捨て難い魅力がある(2曲とも筒美京平作品)。

 

 榊ひろと氏の『筒美京平ヒットストーリー』から、この曲に関する部分を引用させていただく。

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 86年7月に発売された「夜明けのMEW」は、秋元康=筒美京平コンビの別の側面がうかがえる「魔女」の続編的な切ないナンバーで、チャートでは第2位にランクされた。猫の鳴き声を模した“MEW”という言葉は、小泉がナレーションを担当した映画『子猫物語』の主題歌に使われることが決まっていた*ために選ばれたとされる。武部聡志によるアレンジは、打ち込みのビートとシンセの音色をフルに活用しながらも、間奏ではオルガンのソロをフィーチャーして情感を引き出している。

 田村(※田村充義ディレクター)によると“間奏に出てくるシンセ音3連打の微妙なタイミングを決めるために、一人スタジオに残って延々とコンピュータの数値を操作する武部君の姿が印象的だった”という。

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*実際には『子猫物語』の主題歌には、吉永敬子さんの「子猫物語」が採用されている。

 

 

 秋元康さんによる詞の世界は、うまくいかなかった若い二人の恋を、男の子の視点から切り取ったものだ。秋元さんの凄さは、同じようなテーマで書いても、アプローチの仕方が無数にあるように思えること。そして男の子視点なのに、女の子の気持ちも浮き彫りになる。“MEW”という鳴き声のような音(おん)や、「君は仔猫の姿勢で」というフレーズ、「泣いた」「抱いた」の韻の踏み方、そして「もっと」「きっと」の繰り返しなど、小技もふんだんに使われている印象だ。

 

 京平先生のメロディーメイクも負けてはいない。短調とその平行長調を行ったり来たりするメロディーが、この詞の表す情景のやるせない雰囲気とよくマッチしている。最初の「♪ 夜明けの MEW〜」というリフレインの後、前半はお二人のバージョンともセーブの効いたボーカルで、比較的淡々と若い男女の風景を描き出す。

 

 サビの「♪ 愛をごめんね〜」に入ってからは、宏美さんのお気に入りになったという「♪ ごめんね」の追っかけのコーラスが、何とも切ない。キョンキョンのオリジナルでは別の男女の声のようだが、宏美さんはご自分でバッキングボーカルも吹き込んでいる。

 

 この曲は最初や最後に出てくるリフレインと、最も盛り上がるサビの部分との贅沢な二重構造になっていると私は捉えている。そしてそのサビの最後に置かれたフレーズ「♪ 君をすべて知っていると思っていた」が、必殺の反則技じゃないかと思うくらい、心に刺さる。「2拍3連が効果的な宏美さんの歌ベスト20❣️」でも上位に選出した通り、♪ ドシラ、ドシラ…とドシラ(※キョンキョンのキーの場合)の2拍3連を6回繰り返す。しかしコードの方は、Am7 - Am7/D - Cm6 - B7 - と1小節ずつ変化してゆくのだ。特にCm6の響きが泣ける。😭99%間違いなく、このコード進行は京平先生の指定であろう。

 

 宏美さんはキョンキョンの1音下でDマイナー。このメロとコードで、お二人の声が最も憂いを帯びて響く最適なキー設定が考えられていると思うのだ(宏美盤のアレンジは上杉洋史さん)。いずれ劣らぬ名唱である。

 

 

 宏美さんとキョンキョンは、同じスタ誕出身でビクターの後輩だったこともあり、お若い頃から親交があったようだ。宏美さんのコンサートやライブにも来てくれていたとか。ファンクラブ会報『HIROMI’S倶楽部 第49号』(2013.6)には、当時大人気だった朝ドラ『あまちゃん』収録のスタジオでキョンキョンと久々に再会したエピソードが載っている。下のツーショットはその時のもので、会報より再撮した。お二人の共演というものも、いつかどこかでやってくれないかしら。🥰

 

 

(2019.8.21 アルバム『Dear Friends Ⅷ 筒美京平トリビュート』収録)