13CATSプロデュースによる岩崎宏美の本格的復帰オリジナル・アルバム『FULL CIRCLE』収録。作詞:JANE CHILD •岩崎宏美•有里泉美、作曲:JANE CHILD、編曲:13CATS 、オーケストラ編曲:CLARE FISCHER。

 

 「時間の早さに」の後、ファンタジックなコーラスアレンジの「ロマンス」をインタールードに挟んで、スローで静かなストリングスのイントロで始まる味わい深い楽曲である。内容は、英詞部分は「全てが変わってしまった。私も同じままではあり得ない」を繰り返す。日本語部分(宏美さん本人も作詞にクレジットされている)は切れ切れに6行しかなく、全体の意味が捉えにくい。「途切れゆく愛をつなぐ鍵はない。だが人は孤独ではいられない」といったところか。

 

 このアルバム再発の折りのライナーノーツに、「ここで大きく学んだのがファルセット」と書かれている。特にこの「NEVER BE THE SAME」では、リフレインの英詞部分はほとんどファルセットで歌われている。日本語詞の部分では、「♪ 決しーて戻れない」の「し」や、「♪ さーごーオアシス」の「い」「の」など、上のE音やD♯音など攻めのファルセットで、これ以前も宏美さんの楽曲ではあまり見られなかったファルセットの使い方である。

 

 それでいて、「♪ 孤独を愛せるひとなどいなから」の上のD音の「い」は今度は強い地声で歌い切るなど(ライブ盤ではファルセット)対比的なプロデュースをしており、キャット・グレイやジェーン・チャイルドの音楽的こだわりがそこから透けて見えるようである。

 

 リフレインのバックコーラスも秀逸で耳に残る。『TOTOからはじまったイモづる式音楽日記』というブログでは、宏美さんの『FULL CIRCLE』について3回にわたって論じられている。洋楽ファンの視点から書かれた興味深い記述も多い。このアルバムのことを「13CATS FEATURING 岩崎宏美」と断じていて、「宏美ファンの間では賛否両論のアルバム」とも書かれている。この「NEVER BE THE SAME」についても、「JANE CHILDの世界に染まってます」とピシャリ。

 

 

 そう言えば、13CATSとのコラボ実現について、「沼澤尚が岩崎宏美と以前より懇意であったということがあったようです。~そのせいか、一部スポーツ紙では岩崎宏美に新たな恋人発覚!お相手は慶応大学出身のJAZZドラマー!みたいな記事が賑わった事もありましたが」という記載もあった。そんな噂は全く初耳だった私には微かな驚きだったが、皆さんはご存知だっただろうか。25年以上前の話題だが、こんなブログ記事も見つかった。

 

 先ほども取り上げたライナーノーツにこんなことも書いてあった。「放し飼いさながらに歌っていた“岩崎宏美”が、もう一度歌を見つめ直すという点で、キャットと出逢えたことは本当に良かったと思います」ーーー宏美さんがこれから50周年、いやそれよりも先を見据えて歌い続けてくださるのは嬉しい。だが、であるならばこそ、ここでもう一度、京平先生やキャット・グレイのように、音楽的な面から宏美さんにキチンと物申せるプロデューサーが必要なのではないだろうか。今の宏美さんでなければ歌えない歌、今の宏美さんだからこそ歌える歌を、宏美さんと共に創り上げていけるブレインの出現を熱望する。

 

(1995.11.22 アルバム『FULL CIRCLE』収録)