私が「沢田研二」「ジュリー」という名を意識したのは、小学校に上がる頃か。日本のグループサウンズの筆頭格として絶大なる人気を博したザ・タイガースのリード・ボーカルが、言わずと知れたこのジュリーこと沢田研二さんである。

 

 私が初めて買ってもらった歌謡曲のレコードは、「花の首飾り/銀河のロマンス」(1968)だった。「花の首飾り」はトッポ(加橋かつみ)がリードだが、「銀河のロマンス」はジュリー。ジュリーの少し鼻にかかった甘いボーカルが、子ども心に大好きだった。

 

 小学校高学年になり、南沙織さんの大ファンになった頃、ジュリーはソロ活動を開始し、「許されない愛」(1972)「危険なふたり」(1973)などのヒットを連発していた。

 

 私が宏美ファンになり、再び歌謡番組をよく観たり聴いたりするようになった頃は、「TOKIO」(1980)「恋のバッド・チューニング」(1980)など奇抜な演出で『ザ・ベストテン』の常連だった。

 

 今回取り上げた2曲は、ちょうどその中間の時期で、私が歌謡番組から遠去かっていた頃の楽曲だ。しかし、もちろんジュリーのヒット曲はそれでも耳に入って来ており、どちらも馴染みのある曲である。そして、どの時代も、ジュリーはいつも色っぽくてカッコよかった。😍

 

「憎みきれないろくでなし」(1977)作詞:阿久悠、作曲:大野克夫、編曲:船山基紀

 

「立ちどまるなふりむくな」(1976)作詞:阿久悠、作編曲:大野克夫

 

 この2曲は、『阿久悠 君の唇に色あせぬ言葉を』(1978)という企画アルバムのために宏美さんがレコーディングしたものである。岩崎宏美・紙ジャケシリーズ復刻時に、臼井孝さんが宏美さんの未発表曲や未CD化音源の発掘に力を尽くしてくださり、『恋人たち+7』に収録され、現在も聴くことができる。

 

 宏美さんが沢田研二さんの大ファンであることは、宏美ファンの間では周知の事実である。1980年代にはジュリーのナンバーである「ある青春」をステージで好んで歌われていた。また、今世紀に入ってからも「コバルトの季節の中で」「時の過ぎゆくままに」をそれぞれ西脇辰弥、国府弘子の斬新なアレンジで吹き込んでいる。

 

 この70年代に吹き込まれた2曲(編曲:田辺信一)は、どちらかと言うと原曲のアレンジをなぞるような形でのバックの演奏である。若き日の宏美さんのボーカルは、伸びやかで力強く、ジュリー顔負けの「男らしさ」で小気味良い歌いっぷりだ。

 

 宏美さんは、ジュリーの歌を相当聴き込んでらっしゃったのだろう。真似をする、というわけでもないのに、どことなく似てしまっている。「憎みきれないろくでなし」の「♪ 昨日は昨日で どこかで浮かれてー⤵︎」「♪ 憎みきれないー⤵︎rrrrろっくでーなしぃー」という部分など、女ジュリーか、という感じである。「立ちどまるなふりむくな」でも、「♪ 冷たい握手も二度とできない」の「♪ 二度と」という高音の出し方など、おや?と思うほど似ている。

 

 さらに、前者の「♪ 忘れてしまったーーよー」と下降して行く音程の取り難い部分などはさすがの歌唱力を見せ、特に最後の低音の「♪ よー」の響かせ方など、ジュリーの上を行っていると言っても過言ではない。痛快なこの2曲、是非聴いていただきたいものである。

 

 

 

 

 宏美さんも、そしてジュリーも現役バリバリである。またどこかで夢の競演を見せていただけないものか。そんな期待を込め、お二人の貴重なデュエット動画をご紹介してお別れしよう。

 

 

(1978.11.25 企画アルバム『阿久悠 君の唇に色あせぬ言葉を』収録)