1979年7月15日に中野サンプラザで行われた『ロック・ミュージカル ハムレット』実況録音盤より。ハムレット:桑名正博、オフィーリア:岩崎宏美の他、上條恒彦、金井克子ら豪華キャスト、音楽監修:筒美京平。

 

 長らくCD化が待ち望まれ、2004年の30周年記念BOXの際、宏美さんのパートだけが収録された。ところがこれが中途半端な企画で、宏美さんのソロ「オフィーリアの子守唄」は未収録。今日取り上げるメドレーは収録されたものの、アンサンブルの方々による「若いってことは」(中島梓作詞/山下達郎作曲)、桑名さんと宏美さんによる「愛はハーモニー」(松本隆作詞/筒美京平作曲)が終わると、何とお二人による「若いってことは」の部分をカットしてフェイドアウトしてしまう。😂(アレンジは全曲矢野誠さん)

 

 そしてさらに待つこと10年近く。2013年1月、ようやく『ロック・ミュージカル ハムレット』として完全な形で復刻されたのである。

 

 残念ながらこの舞台、まだ私は宏美愛に目覚める以前で見ていない。叶わぬ夢とは知りながら、この時に戻れるならば見てみたい、と切に願う。当時の解説に、企画者の草苅清子さんの興味深い記述があるので引用する。

 

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 オフィーリア探しは難航しました。

 清純でひたむきで、恋のために狂気になるというオフィーリアはもう現代では望めない夢なのかと……

 岩崎宏美さんの名前が上げられた時、それはなぜ今まで気づかなかったのかと思うほど口惜しいものでした。彼女の伸びやかな透明な声、ひたむきな姿勢、手中の玉のごとく育てられている気配は正にオフィーリアそのものでした。彼女は芸能界のオフィーリア姫でもあったのです。

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 このメドレーは、一幕開幕間もないパートで、桑名ハムレットと宏美オフィーリアの顔見せ的な場面ではないかと思われる。アンサンブルの方々の「若いってことは」が終わると、宏美オフィーリアが「♪ もしも 私が 花になるなら〜」と歌いながら登場する、楚々とした可憐な姿を勝手に想像してしまう。そして桑名ハムレットが「♪ 涙に濡れた うつろな日々に〜」で登場、仲睦まじいデュエットを聴かせてくれる。そして「若いってことは」がお二人の声でリプライズされるのだが、アンサンブルの時にはなかった「♪ 若さ それが哀しみだと〜」という新しいフレーズが加わって盛り上がり、二人の登場シーンを終えたのだろうか。

 

 

4分5秒くらいから

 

 それから35年の月日が流れ、2014年8月30日、秦野市文化会館。『Thank You !』ツアーの初日、古くからのファンにはこたえられない選曲がいくつもあった。中でも一番のサプライズが、まさかのこの『ロック・ミュージカル ハムレット』の「愛はハーモニー」だったのである!現在の技術で、若くして亡くなった桑名さん(享年59歳)のボーカル部分だけを当時の音源から取り出し、それに合わせてバックの演奏と宏美さんの歌が入る。まさに夢の仮想デュエットである。私だけではなく多くのファンが、桑名さんを偲び、涙でこのデュエットを聴いた。

 

(1979.9.5 アルバム『ロック・ミュージカル ハムレット』収録)