さてさて…
『光る君へ』に関するお話を本格的にスタートさせたいと思います
第一回放送の王道として、主人公の幼少時代を演じる子役が、限定的な主役を務めるのですが
今回の紫式部こと、まひろの子役も、なかなかの名演技でしたね
いつもながら、大河ドラマの子役は本当に演技が上手だなと感心させられますが、今回は特に印象的でした
第一回放送では、今一人の主役である藤原道長も子役でしたが、同じ藤原氏でも、その身分に大きな違いがある両者が
初対面の際、敢えて身分を隠す所が微笑ましかったです
それにしても、まひろが
『私は皇族に連なる者です』と大ぼらを吹くシーンは、違和感よりは笑えましたが
さて、楽しそうな雰囲気で終わりそうに見えた初回でしたが…
ラスト数分の衝撃シーンには、本当に驚きを禁じ得ませんでした
平安時代とは言え、決してその名の通りの平安(平穏)な世であった訳ではなく、都でも治安の悪い区域では
しばしば喧嘩や乱闘、中には死者すら出ることも、少なくはありませんでした
夜はおろか、白昼強盗に襲われることもあり、酷い場合は、殺人事件も起きていたのです
都の治安は決して良好だった訳ではなく、そうした取り締まり機関として、朝廷は検非違使(けびいし)という警察と裁判を任務とする役所を設置犯人検挙に当たっていたのです
そんな殺人事件が、『光る君へ』の第一回放送のラストで勃発
しかも、被害者が、国仲涼子(くになかりょうこ)さんが演じる、まひろの母『ちはや』
対する加害者は、道長の同母兄の道兼(みちかね)という、信じられない図式でした
雅の世界に生きる貴族は、全てが和歌や音楽を好む、穏かな性格ばかりの面々ではなく、中には激しい気性の持ち主もいた訳で…
そうした貴族の面々は、しばしば都で騒擾(そうじょう)を起こしたのですが、彼等が直接刀で斬り合ったり、素手で殴り合った訳ではなく、その従者同士が徒党を組んで喧嘩をするというのが常でありました
したがって、今回激昂した道兼が、背後からちはやの背中を刀で刺し貫くという場面は、史実では考え難く、それだけショックを受けた次第です
劇中では、『ちはや』こと、紫式部(まひろ)の母親の実名は不明で、一般には藤原為信(ふじわらためのぶ)の娘と呼ばれています
娘の式部の実名も不明なのですが、彼女もまた、藤原為時(ふじわらのためとき)の娘と呼ばれており、同時代の公卿である
藤原実資(ふじわらのさねすけ)の日記『小右記』(しょうゆうき)では、上記の様に名前が記されています
為信の娘(式部母)は生年・没年についても不詳なのですが、少なくとも式部が幼い時に死別したことは確実みたいです
それ故、今回の様な初回での唐突な退場劇となったと思われます
かたや、加害者の道兼ですが、歴史物語の『大鏡』(おおかがみ)ではその人となりについて
『性格は非常に冷酷で、人々から恐れられていた』と語られています
同じく歴史物語の『栄花物語』(えいかものがたり)でも
『容姿は顔色が悪く、毛深く且つ、醜かった』と散々で、雅な好男子な貴族というイメージとはかけ離れていますね
劇中では、母を同じくする、長兄道隆(みちたか)と、末弟道長との間の挟まれ、ストレスからなのか、気性の激しい人物として
描かれている様ですが、恐らくは、前述の歴史物語の記述内容を参考にキャラクターを作ったと思われます
まひろにとって、生涯のソウルメートとなる道長
その兄が、こともあろうに、母を殺害した張本人である
劇中において、まひろはまだこの事実を知らないのですが…(父為時は既に知っていますが…)
やがて、そのことを知ることになる彼女は…
どんな気持ちを懐き、どんな行動に出るのでしょうか
辛い展開が待っていそうですが、気になります
本日はここまでに致します