フライトジャケット夜話 第五夜 「君の名は? WEPジャケット(前編)」 | 飛行服千夜一夜物語

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どんなフライトジャケットにも、袖を通した者と歩んだドラマがあるもの。
飛ばなくなったフライトジャケット達との思い出話と、そこに秘められたヒストリーを紹介します。

こんばんは。
最近、暖かくなり、フライトジャケットを既に引き出しにしまわれた方も多いことかと存じます。
私は家族の寝静まった深夜にコレクション保管庫を物色し、衣装ケースから飛行服を引きずり出しては悦に浸っております。
最高の時間であります。
さて、今夜は物色中に見つけて、ついうっとりしたフライトジャケットを紹介します。


その名もWEP……G-8?……JACKET, WINTER, FLYING?… JACKET, WINTER, FLYING SUIT?? 

何て呼べばいいんでしょう?

名前がわかりません。

検索してたら「ゴンズジャケット」なんてのも出てきたこのジャケットが今回のテーマです。

私の大好きなフライトジャケットということで、前後半に分けて話をしていきたいと思います!


このフライトジャケット、一般的には「WEP」と呼ばれることが多い気がします。

WEP は「Bureau of Naval Weapons」の略ですね。

この読み方は「ウエップ」? 「ウェプ?」

古着屋さんとか何て読んでるんでしょう?

そう言えば、コレクター歴のそこそこ長い私ですが、このフライトジャケットの名前を口に出したことがありませんでした。


「WEP」は他のジャケットのラベルでも見る略語です。

なぜこのジャケットの通称になったんでしょうね。


ラベルには「Jacket, Winter, Flying Suit」と記載されています。

「ジャケット、冬用、フライトスーツ」……つまり冬用スーツの上着といいことですね。

面倒なので、当ブログでは「WEP」で統一させていただきます。 


1990年代当時、このジャケットのレプリカを作っていたのは、フェローズとアヴレックス、スピワクくらいだったでしょうか。

この3社はWEPに深い思い入れがあるのか、昔からずっと作り続けているような気がします。

好きなんですよね! わかります。


WEPはビンテージとまったく同じように作ってしまうと、どうしても野暮ったくなってしまいます。

着丈も短すぎるし、袖も太すぎる。

しかも全体から醸し出される米国製品ならではのバタ臭さ。

これらWEPの特性をスポイルする事なく、どうアレンジするかが、デザイナーの腕の見せどころなのです。

ビンテージもいいのですが、WEPはレプリカも個性的。

面白いので、色々なレプリカを見ていきましょう!

ちなみにどのメーカーも、毎シーズンデザインは変えてくると思うので、あくまでネットで拾った画像でわちゃわちゃやるだけです。

悪しからず。


ちなみに、比較対象として、ビンテージWEPを着用した画像を貼っておきますね。↓

街中でこんな人が歩いてきたら、目で追いかけてしまいそうです。


⚫️ まずはフェローズから。

ちょっと昔のレプリカです。かっこいい!

胸ポケットを長くする事で、全体的なバランスを崩さず、上手に着丈を長くしています。

肩周りのボリュームの取り方と袖の太さも絶妙。

WEPアレンジの教科書に載せたいくらい。

WEPに限りませんが、フェローズはオリジナルのデザインを現代的にモデファイするのが上手ですな。



こちらは最近のレプリカです。

胸ポケットから裾までの長さを広く取ることで、さらに着丈を長く取っていることがわかります。

なんだかなあという気持ちになりますが、今はこういうデザインでないと売れないんでしょう。

仕方のないところです。


⚫️ 次は米国の老舗、スピワク。

米国製であることしか取り柄のない程度のフライトジャケットを販売していました(しかも高い)。


上は80年代のものですが、たぶんスピワクが作った歴代WEPで一番出来が良いと思う(笑)。この写真だけでは、実物のビンテージと言われても信じてしまいそう。


そしてスピワクと言えば、そう、ご存知、あのギラギラしたタイタンクロスですね。


「タイタンクロス」とは……

「スピワック社が誇るタイタンクロスは、ナイロンとレーヨンの混紡素材で、ナイロンの最大の弱点である耐熱・耐摩擦性能を克服した強靭な特殊繊維素材です。」

ナイロンとかレーヨンが熱に強いって聞いたことないんだけど……

「なお製品は、米軍ほか各官庁にも納入しています。」

本当かなあ?……なんかあやしいなあ……


↓やたらポケットが下側にある青タイタンのWEP。

こうしてみると37J1の子孫なんだなと思った。


そういえば、金色に輝くタイタンWEPありましたね。神々しい。でも、あまり違和感を感じない。↓


↓ロングWEP。これをゴンズジャケットと呼ぶらしい。実物にこんなものは存在しないが、これはこれでカッコいい。


↓元ネタとなったマーク・ゴンザレスさん。ロングWEPをかなりのオーバーサイズで着ている?



⚫️ 次はアヴィレックス。

ふむ、これは良い。

アレンジの仕方は昔のフェローズに似てますね。

米国ブランドだからなのか、実物の持つバタくさい雰囲気を残した上手なアレンジだと思います。

アヴィレックスって、本命のA-2とかB-3とかMA-1はどうしようもない出来ですが、不思議とWEPは良いものを作ってるんですよね。

こんな画像もありました。↓

WEP着用の好例ですね。

カッコいい!!


アヴィレックスは、なぜか昔から「G-8」と呼称しています。なぜなんでしょうね。


⚫️ 次はヒューストン

ナイロン生地がイケてない! おさんジャンパー!

ヒューストンは、せっかく高品質で低価格なものを作れる技術力があるんだから、実物をよく研究するとともに、もっとデザインに力を入れてほしい。


⚫️ (現)リアルマッコイズ

ぱっと見良いんだけど、なんか違うんだよなあ。現代的なデザインに固執しすぎてWEP特有のバタ臭さが消えてしまった。


⚫️ (旧)リアルマッコイズ

見てください、この着丈の短さと肩周りの無駄なボリューム! 生地も皺も実物と見紛うほど!

「現代的なアレンジって何? それっておいしいの?」という声が聞こえてきそう。

ビンテージと並べると、確かに至らない部分はあるものの、そこをどう解釈してどのように再現するか、デザイナーの思いと精神が伝わってくる良いブランドでした。

新品で買えないのが残念。

レプリカとしては100点満点。


⚫️ 次はトイズマッコイ

岡本先生(神)も、先生の造られたWEPもカッコよすぎです!

トイズのフライトジャケットってどれもそうなんですが、実物の持つカッコよさとバタ臭さを損なうことなく、「ここをこう直すともっとカッコよくなる」というポイントを、しっかり押さえてくるんですよね。

ファション的にも素晴らしく、しかもビンテージマニアも満足させる完成度。

流石です。


⚫️ バズリクソンズ


ロングタイプとのことだが、バズらしからぬ作りだ。

2000年前後のバズは、実物をひたすらに追求する、まさに「求道者」といったブランドであり、「バズはマッコイの下位互換」なんてのたまう輩は鉄拳制裁の対象にしたものである……が、それも今は昔。


⚫️ 次はユナイテッドアローズ

ポイントをしっかり抑えているので、ここまでいじってもWEPに見えてしまうのが凄い。

ヨレヨレナイロン生地が良い感じ。

たぶんビンテージWEPが大好きで、しかもよく知っている人間が、酒を飲みながらデザインしてる。


⚫️ 最後はCOOTIEなるブランドのゴンズジャケット。

これはもはやWEPではない……。

でもカッコいいから許す!

スピワクのロングWEPと基本デザインは同じですね。

裾の作りなんか、もうWEPの面影はないが、ブラックもよく似合っており、あえて外してこういうのを着てもいいかも?と思ってしまった。


話が長くなりすぎましたね。

WEPのカッコよさが、少しでも伝わりましたでしょうか?

あなたならどのWEPを買いますか?

自分ならトイズ一択ですね。高いけど。


後編は、ビンテージWEPの魅力について語りたいと思います。

お楽しみに!