東京は八王子のミリタリー系ラーメン屋「アバディーン」、これから行くのはそのウェイティングバー。
平日の夕方の常連客がおりなす、三多摩で10番目位の飛行服的日常会話。
聞き逃したくないばかりに、つい足が向いてしまうんです…。
さあ、着きました。私が扉をお開けしましょう。
カランカラン…
「イラサイマセー」
🎵
常連客である仕事帰りのマスクド・オッサンと機付長が、なにやら、フライトジャケットの話をしているようです…。どれ、聞き耳をたててみましょうか・・・
注:バーの中です
管理人:マスター、甲類焼酎ふたつ、いつもの。
マスター:カシコマリマシター。
機付長:しかし、今日は暑かったですね。ところで管理人、その巨大な紙袋は何なんです?
これか? なんと・・・ (ゴソゴソ)N-2Aだよ!
何でこのクソ暑い日にそんなヘヴィなモノ持ってきたんです?
フム、よく聞いてくれた。最近、今更ながらブログを始めてね…。フライトジャケット大好きブログなので、せっかくだからとっておきを紹介しようと、引っ張り出してきたのだ。
ああ、「フライトジャケットとの出会い」でしたっけ? 酒に酔った上で自分にも酔わなきゃ書けないような、ある意味、斬新な噺でしたね。
あの当時のアメカジシーンは、メーカーもショップも、どこもあんな酔っぱらったような文体だったんだよ。
この年になると、たまに当時の世界観に再び浸りたくなってね。まあ、斬新というより、残心だな。
ところで、このN-2Aを見てくれ。どう思う?
この茄子みたいな色の褪色具合、ドライバックですかね。
でもこんなにゴージャスな雰囲気でしたっけ? ファーがなんか…?
よく気が付いたな。そう、ドライバックは本来、化繊ファーだ。これは、レア物でも何でも無く、後からコヨーテファーを付けたモノなんだよッ!(キリッ)
あんた…ビンテージになんて事を…(ワナワナ)。
狼狽えるな! 実は手に入れた時は、ファーは付いてなかったんだ。
N-2Aってたまにファー無しを見ますよね。
でも、コヨーテファーだったらひび割れて取っ払うってのはわかるんですが、硬化しない化繊をわざわざ取っちゃうのって、何なんでしょうね?
首のあたりがチクチクするから取っちゃったんじゃないのか? アレ着ての東京の満員電車なんか、凄い迷惑だと思うぞ。
それに、・・・なんか不潔感みたいなのを感じるから、取りたくなる気持ちもわかる。
そもそも、あのチクチクファーにファーとしての機能があるのか疑問だ。
新品の時はふわふわだった…という感じでもないですよね。90年代はアザラシの毛とか言われてましたよね。
初出は何だったのか忘れましたが。
バズのカタログやFULLGEARではナイロンファーと言ってるな。復刻したメーカーがそういうのならそうなんだろう。
自分も昔、チクチクファーの毛をライターで燃やしてみたら溶けてなくなったので、動物の毛では絶対ないと思っていた。
しかし、バズはたまにチクチクファーのN-2AやN-3Aを出してくるな。
初めて見たときはよくこんな物を再現したものだと感心したが、どれだけ売れたんだろうか。
バズのN-2A。チクチクファーは、気持ち柔らかい。
結構な金額するんですよね、これ。
私だったら、同じ金額を出すならN-2にします。
見た目も地味だし、このチクチクファーは当時のパイロットからも、絶対不評だったはず。
チクチクファーはN-2AとN-3Aでしか見ないよな。
アビクロとかマスランドとか天然ファーのN-2Aもあるが、何の生き物のかわからない、ボリュームのない白っぽい毛だ。
それで、マッコイなんかがレプリカ出す時は、フサフサのコヨーテファーにゴージャスな黄金色のムートン仕様がお約束だ。
まあ、そうしないと売れないんだろう・・・。
マッコイのN-2A。バズと見比べていただきたい。モフりたいがとても高い。
少しでも存在感出すために、パッチによるデコレートや褪色するナイロン生地やリブなんかにしちゃったりとか、よく見ますね。
ところで管理人は、マッコイに倣ってコヨーテファーを付けたんですか?
そもそもチクチクファーなんて、実物かバズのレプリカから共喰わない限り手に入らないからな。
それと、今ではめっきり見なくなったが、2000年代の初め頃までは、コヨーテファーの付いたM-51用のフードが安価に手に入ったんだ。
リペア用のコヨーテファーを大量にゲットしたものよ・・・。
茄子色のボディにコヨーテファーの組み合わせって、ドカジャンぽさが消えて、とてもカッコいいのだ! とにかく存在感と迫力が凄い。
確かに、言われてみれば、アリですね。
ところで、このN-2Aって一時期、価格が凄い暴落してましたけど、いくらで買ったんです?
ファー無しのリブは虫食いだらけの状態で5万5千円だ。
フライトジャケットブーム真っ盛りの1995年に買ったので、当時としては妥当な価格じゃないかな?
その当時は、エアフォース・ブルーのフライトジャケットは製造期間が短く「激レア」と思われていたから、見つけたときは感激したよ。
まあ、ドン底の時は程度極上でも2万円台で買えたりできたけどね…(遠い目)。
昔は他にもN-2Aを持ってたけど、みんなヤフオクで二束三文で売ってしまった。
1万円でも買い手がなかなかつかなかったのよ・・・(涙目)。
これは着るために残したんですか?
コレを着て街中を歩くのは、周りから浮きすぎて、職質されそうだよ。
このN-2Aを残したのは、MASHのリペアパーツなんかを使って、初めて自分で修理したフライトジャケットだったからだ。
つまり記念品。
どうりでリブも新品ですね。
N-2Aって、地味で人気もないけど、なんか、言葉で言い表しにくい妖しい魅力があるんだよ。
たぶん、フライトジャケットをそれなりに見てきた人だけが感じるような何かがある…と、私は思う!(キリッ)
私が嫁さんだったら、こんな大きくて汚らしくて着もしない物、さっさと処分してこいと言いそうです。
案ずるな・・・、既に母からも嫁からも言われている!
コレクターの通過儀礼みたいなもんだ。
まあ、それもそうですね…
・
・
・
さて、そろそろ帰るか。
マスター、お会計!
イチマン…ニセン…エン…デス!
高けえ甲類焼酎だな、常連からもボッタクルのかよ・・・!
(終わり)