フライトジャケットとの出会い② ー再会編ー | 飛行服千夜一夜物語

飛行服千夜一夜物語

どんなフライトジャケットにも、袖を通した者と歩んだドラマがあるもの。
飛ばなくなったフライトジャケット達との思い出話と、そこに秘められたヒストリーを紹介します。

(「黎明編」からの続き)

 

ダボダボMA-1事件から約1年が経った。

 

高校2年の冬、相変わらず私の服装はダサく、周囲からバカにされること、度々であった。

「その服、どこで買ったの(笑)」

「どこでもいいだろ・・・(母が買ってきたなんて言えない)」

 

中には自分が着ていた服を格安で売ってくれる友人もいた。

本人は小遣い稼ぎのつもりだったのかもしれないが、リーバイスのジーンズとかコットンのネルシャツなんかは、本当にありがたいものであった。

 

さすがにこのままではいけないとは思ったが、どうすればいいのかわからない。

まずは予備知識を蓄えることが第一と考え、通学経路の途中にあるコンビニで、それらしい雑誌を買ってみた。

 

それが、この「モノマガジン」である。

「特集 男のブランドヒストリー」の文字が、ダサ坊の心の琴線に引っかかったのかもしれない。

何度も読んだのでボロボロである。この本が私の与えた影響は極めて大きい。名著。

 

「グレゴリー」、「オールデン」や「レッドウイング」、「ペンドルトン」、「パタゴニア」、「ザ・ノース・フェイス」、「グルカ」、「バブアー」、「ゴローズ」、「マグライト」、「ラブレス」のナイフや工具の「スナップオン」まである・・・。

フライトジャケットの「アルファ」もあった。

世界中から116ブランド。

何度も何度も繰り返し読み、真綿が水を吸うように知識を吸収していった。

なお、五十近くなった今でも、その知識は脳に刷り込まれており、このカタログに記載されたブランドのものを優先的に買うようにしている。

 

読んでいて、フライトジャケットに関する広告や記事が何か所かあることに気づいた。

上野「中田商店」が博物館を併設した御徒町店をオープンしたという記事、そしてフライトジャケットの広告は、「フェローズ」と、先ほどの「中田商店」のものがあった。

 

フェローズの広告は写真の撮り方が上手で、とても「美味しそう」に見える。質感が写真を通して伝わる。そして、なかなかツボを押さえたアイテム選択だ。

 

 

 

こちらは中田商店の広告。写真の撮り方が下手で、とてもチープに見える。ラインナップは結構マニアック。どのくらい売れたんだろうか・・・。タイタンクロスが当時、すごい気になった。

 

フェローズの広告には、MA-1のテストサンプルとされる「B-15D」、空軍のエリート、テストパイロットの為の「L-2A」、世界でも希なライムカラーの「WEP(中期)」とか、その他にも色々と記載されていた。

MA-1以外にも様々な種類のフライトジャケットが存在することを知った。

しかし、いずれもかっこいい!

特にフェローズのフライトジャケットは、価格こそは高いが、圧倒的な雰囲気の良さ(実物感?)のようなものを醸し出している。

 

一度は忘れかけてしまっていたが、もっとフライトジャケットについて知りたいと思った。

そして、この本には、「ワールド・ムック」シリーズを一覧で紹介したページがあり、そこに「飛行服発達史」が掲載されていたのである。 

 

同世代のフライトジャケット愛好家であれば、皆、この本を穴が開くほど読んだはず。

 

「飛行服発達史」を買うしかないと思った私は、直ちに本屋へ直行した。

 

本屋に到着するやいなや、普段行くことのない、ファッション雑誌コーナーに直行した。

そこには、目当ての「飛行服発達史」の他に、コンバットマガジン別冊の、いわゆるフライトジャケット三部作の一作目である、その名も「MA-1」が陳列されていた。

 

以降、「B-3」、「A-2」と続く三部作の一作目。名著。

 

どちらも様々な種類のフライトジャケットが体系的に記載されており、満足のいく内容であった。

どちらも購入したかったが、両方買うだけのお金がない。

そこで私は、なんとなくアカデミックでページ数が多く、写真が大きい「飛行服発達史」をレジに持って行ったのであった(なお、雑誌「MA-1」は次に行った時には、既に品切れであった。大変後悔したが、後年にヤフオクで無事入手することができた)。

 

「飛行服発達史」・・・家に帰って落ち着いて読んでみると、すごい本である。

この当時に、この価格で、これだけのクオリティのものを出すには、相当な苦労があったのだろうと推察する。

今の目で見ると、結構いい加減なことも書かれていたりするが、それは大したことではない。

先の「モノマガジン」もそうだが、単に知識を羅列するだけの内容ではなく、とにかく「モノ」に対する愛があふれている。

「自分の思いを伝えたい。理解者、仲間を増やしたい」という編集者やライターの気持ちがひしひしと伝わってくる。

「買いたい」よりも、「もっと知りたい、自分の目で見て、手で触れてみたい」という感情のほうが先に来る。いわゆる「憧れ」の感情である。まるで宗教の勧誘のようだ。

 

「飛行服発達史」を徹底的に熟読し、フライトジャケットを多少なりとも知った気になった私は、「あのときのダボダボMA-1」以来となる、新しいフライトジャケットを欲しくなった。

ちょうど季節も寒くなってきたし、スカスカダウン風ジャケットも手垢で汚くなり、新しい防寒着が欲しくなってきた頃であった。

「次は失敗しない! 必ずMサイズを買うぞ!!」

と、心に誓ったのであった・・・。

 

(つづく)