フライトジャケットとの出会い① ー黎明編ー | 飛行服千夜一夜物語

飛行服千夜一夜物語

どんなフライトジャケットにも、袖を通した者と歩んだドラマがあるもの。
飛ばなくなったフライトジャケット達との思い出話と、そこに秘められたヒストリーを紹介します。

はじめまして。

ばぐばぐと申します。

突然ですが、私はフライトジャケットが大好きです。

最近、ふと、フライトジャケットと出会った若い頃の記憶を想うことがありました。

せっかくなので、ブログにまとめてみようと思い立ちました。

 

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あれは、約40年前、仙台という街の、もうすぐ冬に差し掛かろうという肌寒い日のことであった。

当時、高校1年生。

自転車で一緒に帰る友人が、緑色の、背中がころんとした、丈の短いジャンパーを着ていることが目に付いた。

「なんてカッコいいジャンパーなんだろう!」

一目惚れである。

 

当時、私は服装には興味がなく、高校生にもなりながら、おしゃれ着なんてまったく持っていなかった。

だが、私の通った高校は私服通学であった。

そのとき私が来ていたコートは、どこかのジーンズショップで買った、ダウンのほとんど入っていない、ペラペラのダウン風ジャケットであった。

それ以外にも、ほとんどの服を母親から買い与えられていたスーパーダサ坊の私にとって、そのジャンパーは、あまりにも魅力的で刺激的であった。

その友人にどこで買ったのかを聞くのが恥ずかしく、謎のまま帰宅した・・・。

 

それから一月ほど経っただろうか、ある日、部屋の床に置かれた週間少年ジャンプの裏表紙の広告が目に入る。そこには、以前、友人が着ていた、あのコロンとした緑色のジャンパーが載っているではないか!

ふむふむ…、「MA-1」というのか。アメリカ軍のパイロットが着るジャンパー。ALPHAというメーカーが製造。MADE IN USA…!、ホンモノのフライトジャケット!?

いろんな情報が入ってきた。

 

当時はこの着こなしがカッコよかったのである。

 

ところで「アフターバーナーⅡ」というゲームをご存知だろうか?

F-14を操縦し、迫り来る敵機を撃墜しまくる、3次元風のシューティングゲームである。

セガ特有のちょっと特殊な筐体で、操縦桿の動きに合わせて座席が左右に傾くのだ(たまに傾いたままみ戻らなくなる時がある)。

 

このゲームで「誘導ミサイル」なるものを初めて知った。

 

中学生のときに近所のボーリング場のゲームコーナーでプレイして感動し、それ以来、チャリンコに乗ったときは、あるはずのないボタンを押し、前を走る自転車を撃墜するが如く妄想したものである。

私は、出来の悪いファミコン版と、まあまあの出来のPCエンジン版を所有していた。

ふと、妄想がわいてきた。・・・「MA-1」を着て「アフターバーナーⅡ」をプレイしたら、どれだけ盛り上がる事だろうか!

 

さて、どうやって「MA-1」を購入するかである。

新聞配達のバイトをしていたので、予算はなんとかなりそうだ。

現代であれば、アマゾンで容易に購入できるが、当時はインターネットのような便利なものはなく、高校生にとって、通販はとてもハードルの高いものであった。

よって、なけなしの一万五千円を握りしめ、仙台の繁華街に買いに行くことにした。

 

フォーラスというおしゃれデパートの近くの、何となくそれらしい服が売ってるっぽい店に入った私は、イケてる服装の客を横目に、早足ですばやく店内を観察し(恥ずかしくて、早く店を出たかった)、約15分後、ようやく「MA-1」の陳列棚を見つけることができた!

なぜ15分も要したかというと、一着しかなかったため、見つけるのが困難だったのだ。

確かにALPHA社製のMA-1であったが、何か思ってたのと違う気がする…。

サイズを確認すると「XLARGE」と記載があるではないか!

試着してみると、US規格のXLARGEは、栄養失調気味のモヤシ小僧だった自分には、余りにもダボダボすぎて、それはもう、飛行服と呼べる物ではなく、着ぐるみのようだ。

 

(とあるショップのスタッフブログより)

令和の現代であれば、こんな着こなしも「アリ」なのだろうか。

しかし、当時の私は、1枚目の写真のようになりたかったのだ。

 

「・・・今買い逃したら、もう手に入らないんじゃないか?」

変な誘惑が頭をよぎる。

「で、でも・・・そうだ、身体を鍛えて、このMA-1の似合う、アメリカ人のようなマッチョになれば良いのだ!」

 

・・・嗚呼、買ってしまった。

あまりにも短絡的な思考。バカすぎる。

「マッチョになるのっていつなんだよ・・・。」

帰り道でひどく後悔した。

 

帰宅後、早速着用して、PCエンジン版アフターバーナーⅡをプレイしてみた。

当然、まったく気分が乗らない。

「・・・こんなの、MA-1じゃない・・・。」

しかしその様子を見た母親は、「何、そのパイロットみたいな服…」と言ってくれたことは、精神的被害をわずかではあるが、緩和してくれたのである。

(しかし、なぜ母はこのジャンパーが飛行服であると知っていたのであろうか。しかもダボダボなのに?)

 

そのダボダボMA-1は、一度だけ外に着ていった。

その後はタンスに封印され、二度と着用されることはなかったのである・・・。

 

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以上が私とフライトジャケットの馴れ初め、とても悲しい初恋の思い出であります。

そのダボダボMA-1はどうなったかって?

 

・・・捨てましたよ。

 

買ってから十数年後に実家の引越しがあり、タンスの封印を解いたんです。

そしたら、黄土色に変色したダボダボMA-1が姿を現したのです。

とても気持ち悪い色でした。

こんなに経年変化するなんて、ウチのタンスの中ってどんだけ過酷な環境なんだよ・・・と思いつつ、そのおぞましい色合いに、なにやら怨念めいたものを感じ、不燃ゴミ袋に、そっと葬ったのであった…。

 

(つづく)