増渕邦治全仕事
ART DIRECTION vol-01・雑誌広告005
my belle epoque & nostalgie
『宝石の広告にキャッチコピーは必要か』
この広告はミキモトの主要媒体である雑誌ミセスに、
私が10年間担当していたシリーズの一つです。
1979年という年は、丁度5年目にあたり、
自分で言うのも変ですが、仕事の上で油の乗り切った時代でした。
ライバルは勿論、カルティエでありティファニーでした。
今ではPHOTOSHOPで画像加工は簡単にできますが、
その当時は多重露光という撮影のやり方で、
ジュエリーとバックを別々に撮り、
カメラ上で合成するというやり方でした。
この方法では撮影に最低3時間、
場合によっては5時間くらいかかったように記憶しています。
カメラマンはライトパブリシティOBの吉田さんで、
彼からは商品撮影に関して多くのこと学びました。
この頃宣伝部である議論が起こりました。
それは宝石の広告にキャッチコピー(ヘッドライン)は
いらないのではないか、というものでした。
確かにティファニーやカルティエの広告には
商品画像と社名ロゴしかありません。
さすがに一流ブランドはゴチャゴチャと意味のないコピーは
入っていないのです。
一方で日本の殆どの企業の広告にはコピーが入っています。
私の主張は、
「日本の広告はビジュアルとコピーは表裏一体である」
というものでした。
結局その時は私の主張が通ったのですが、
宝石の広告にはコピーが必要かどうか、という問題は
私を悩ませ続けたのです。