個人の妄想です
櫻湯の湯船は大小二つ
小さい湯船はお湯の温度が熱めで、大きい湯船はそれよりも若干温めで俺好みだ
はぁー
1日の疲れが飛んでいく
やっぱり広いお風呂はいい
ゆっくり浸かってると身体の芯までポカポカしてくる
眼鏡が曇るので今まで温泉や銭湯は気が進まなかったけれど、家のお風呂が壊れたおかげで銭湯の良さを知ることになった
こういうのを、災い転じて福となすっていうのかな
ゆっくり黙って浸かってる人もいれば、世間話をしてるおじいさんたちもいる
いいお湯だねー
隣りで湯に浸かっている知らないおじさんが声をかけてきた
そうですね
所謂、裸の付き合いってやつ?
そういえば、さっきの人いるかな
キョロキョロしたけど洗い場にはいないみたい
頭に乗せたタオルで曇った眼鏡を拭いて周りを見渡すと、熱い湯船の方から視線を感じた
もう一度そちらにチラッと目をやると、さっきのひとがこちらを見ている
気のせいか
いや、気のせいじゃない
おそらく俺を見ている
挨拶した方がいいかな
でも、なんか話しかけづらい感じ
番台の彼をアニキと呼んでいたが、弟ではないらしい
兄弟以外でアニキって
少なくとも俺の周りにはそんな風に呼ぶ人はいない
うーん…
あーっ
兄ちゃん、どうした?
思わず出た大きい声に隣りのおじさんが、びっくりしたみたい
す、すみません
なんでもないです
もしかしてあの人
そっち系っていうかやばい人なのか!
だとしたら背中に絵があるかも
なんとなく後ろに下がって確かめようとしたそのとき、あの人が湯船から立ち上がった