住宅新築資金の経緯
そもそも、大和郡山市の住宅新築資金貸付制度は、1969年の同和対策特別措置法施行とともにはじまりました。
当初は、本市の同和対策課が窓口となり、希望者は直接そこに申請することになっていました。
しかし、1975年4月、大和郡山市住宅資金等貸付条例が制定され、同施工規則で、貸し付けを受けようとする住民の借用組合が結成され、そこにカッコ付きの解放同盟の支部長が借用組合の組合長として居座り窓口一本化がおこない不正貸し付けの温床としてきました。
すでに地域では、解放同盟を除名された青年や、反共攻撃に傾斜していく組織の正常化を願う人々によって部落解放同盟正常化連合が結成され、周辺地域住民とともに新たな運動に立ち上がろうとしていました。
しかし、市当局は、解放同盟の支部長に貸付金の業務を委託することによって、地域社会における絶対的支配力を与え、さらに補助金を支給してこれを育成してきました。
本来、旧同和対策事業とは、部落解放の早期実現を目指し、地域住民の社会参加や社会的自立を保証していくものでなければなりません。
しかし、この市住宅新築資金の不正貸し付けによって、それを阻害し、極めて排外的な利権意識を育て上げ、巨額の負の遺産を残す結果となりました。
過去に「不良債権を一括して債権放棄を行う」と答弁
しかし、債権の管理回収に対して過去に「長らく続いている不良債権については出来るだけ早い時期に、一括して債権放棄を行う」との答弁がありました。
これについては、昨年6月の私の一般質問にて、本市は「奈良県の指導や助言を受け。おおむね2年以上にわたり検証することや、あるいは奈良県と事前に協議し、安易に債権を解消することなく、債権放棄について慎重な対応をおこなう」ことと是正されております。
これについては大変評価するものでが、まだ私の中に「本条例を隠れ蓑にしてまた、債権放棄を考えているのではないか」という疑いもぬぐい切れません。
そこで、今条例の課題点について取り上げました。
「情報公開・調査権・不正貸し付け」の文言がないという課題
●まず最初に本条例で新たに第3者審査会を立ちあげるというものです。
私は、この不良債権の回収に、市の職員では限界があると感じています。
これまで100条委員会でも明らかにされたように第3者の圧力や暴力があった事が報告されています。
「エセ同和」といわれる暴力団の存在も危惧されており、市の職員や審査会の安全を確保するため、委員のメンバーに警察関係者や金融関係者を入れ民間の力で調査回収するよう求めてきました。
では、本市は審査会を立ちあげどのようにしていくのかお答えください。
●本条例には、情報公開の規定がありませんでした。
私は、これまでまったく借りた金を返す意思の無い者や、死亡して回収の見込みのない方については、個人情報を公開して対処すべきと考えます。
本市は、情報公開についてどのようにお考えかお答えください。
●調査権についても規定がありませんでした。
私は、返す能力のある者や、財産を持つもの、親族も含めて返済能力があるものが、これまで一度も返済してこなかった147件4億5千万円のなかにおられると思います。
市の権限で調査し回収が可能だと思いますが、お考えをお答えください。
●不正貸し付けの文言が一言もありませんでした。
冒頭にありましたように、この住宅新築資金の不正貸付けによって本市の負の遺産を残す結果となりました。
全国にも同様な条例は、いくつもありますがこれだけ巨額の不正貸し付けを行った市は他に見受けられません。
本市では、不正貸し付けの債権が現に残っている事実を踏まえ、管理回収に努めて頂きたいと思いますが、その決意をお聞かせください。
本市の答弁
●審査会の構成につきましては、委員5名以内を予定しており「弁護士・大学教授・金融機関・警察関係者」などを選定し委託する予定です。
●情報公開につきましては、すでに市情報公開条例が制定されており、その規定に基づき、適切に事務を行いますが、一方で、貸し付け回収は、個人の個人の資力や生活状況・家族構成など、極めて秘匿性が求められる事業であり、人権侵害を引き起こしかねないことから、慎重に対応をして参ります。
なお、債権放棄を行う場合は、事前に議会に「債務者の指名・債権額の情報をお示し」したうえでお諮りするべきものと考えています。
●調査権については、公債権にあたらない「私債権」に該当することから、地方税に準じた財産の調査や差し押さえ等の処分を行うことは、法的に規制されております。
弁護士等の専門家の助言も頂きながら、今後検討する。
●議員も触れられたように、昭和50年代の後半に不適切な事務処理による不正貸し付け事件が発生した経過もございます。
そうした過去の経緯もふまえ、事務の違法性、公平性の確保にしっかりと留意しながら、残債権の解消という目標に向けて着実に事務を進め、…この条例に則り、しっかりと債権の処理に努めて参りたい。
最後に
ご答弁で「この条例に則り、しっかり債権の処理に努めたい」とのことでした。
過去に不正貸し付けが行われた事実を踏まえ、債権の処理だけではなく、回収にもしっかり努めて頂きたい。
例えば日本国憲法の冒頭に「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。」としています。
これは、政府がおこなった過去の過ちを憲法に記したことで、未来永劫、不戦誓いを国民に記したことで、現代にも大きな効力を発揮しています。
本市におかれても、過去におこなってきた旧住宅資金等貸付条例によって、不正、金権政治がおこなわれ市民の主権、平等、人権が脅かされてきました。
その反省に立って本条例を運用して頂くよう訴え質疑を終え、議案に賛成し可決しました。