ヴァンスとピーター・ナヴァロの演説紹介! | ワーカーズの直のブログ

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古村治彦の政治情報情報・分析ブログ 2024年07月21日

ヴァンスの演説は自分を知ってもらうための自分の物語、刑務所から釈放されて直行してきたピーター・ナヴァロは民主党への敵愾心を煽り立てた

古村治彦です。

共和党の全国大会はドナルド・トランプ前大統領の候補指名受諾演説で締めくくりとなった。4日間のお祭りが終わった。共和党全国大会では多くの有名人や政治家が登壇したが、やはり重要なのは、J・D・ヴァンス副大統領候補であり、ピーター・ナヴァロホワイトハウス元通商製造業政策局長だ。

ヴァンスはラストベルトの一部であるオハイオ州の出身で、貧しい白人家庭(シングルマザー)から、アメリカ海兵隊に入隊後、GIビルでオハイオ州立大学に入学し、最優秀の成績で卒業、奨学金を得てイェール大学法科大学院に進学し、修了後はヴェンチャーキャピタリストとして活躍した。ピーター・ティールの立ち上げた会社の副社長をしていたこともある。彼は、自分自身の経験を語り、人々の関心を集めた。

ピーター・ナヴァロは対中強硬派として知られ、トランプの経済政策関連の側近として知られている。2021年1月6日の連邦議事堂襲撃事件に関する、連邦議会の調査に関して、議会からの将官を拒み、そのために刑務所に4カ月間服役することになった。彼が釈放された日が、全国大会の3日目で、マイアミで釈放され、そのままの足で、ミルウォーキーの全国大会に出席し、演説を行った。ナヴァロは自身が、民主党の司法の「武器化(weaponization)」の犠牲者であることを強調し、ホワイトハウスと連邦議会での共和党の勝利がなければ、参加者たちが犠牲者になるという内容の演説を行った。やや穏やかな内容が続く中で、トランプの忠臣という立場でナヴァロが、敵愾心と不安を掻き立てる演説を行った。トランプは、次期トランプ政権でのナヴァロの起用を明言した。

 

ピーター・ナヴァロやスティーヴン・ミラーといったトランプに対しての忠誠心が厚いグループと「アメリカ・ファースト・ポリシー・イニシアティヴ」という2021年に創設されたばかりのシンクタンクに集う、トランプ政権に参加した別の側近たち(ラリー・クドローやロバート・ライトハイザ―など)の間はうまくいっていない。ナヴァロが「祟り神」として、第二次トランプ政権をかき乱す存在になる可能性がある。トランプとしてはそこをうまくバランスしているように見える。

 

トランプ勝利の可能性が高まる中で、私たちはこれから次期トランプ政権の顔ぶれや内容についても注目していかねばならない。

 

(貼り付けはじめ)

ヴァンスがセンターステージに登場:共和党全国大会3日目の5つのポイント(Vance takes center stage: 5 takeaways from RNC’s Day 3)

ジュリア・ミュラー、ジャレッド・ギャンズ筆 2024年7月18日 『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/4779112-jd-vance-donald-trump-republican-national-convention-rnc/

 

共和党全国大会(Republican National Convention、RNC)の3日目は、移民と外交政策が演説の大半を占め、オハイオ州選出の連邦上院議員J・D・ヴァンスはドナルド・トランプの副大統領候補指名を受諾し、自らのルーツを強調した。

共和党全国大会の3日目は、ヴァンスの発言で最高潮に達し、賑やかな群衆たちからの激しい反応を引き起こした。ヴァンスは相手に対して激しく攻撃するタイプ(attack odg)としての評判を築いてきたが、ヴァンス上院議員は彼自身の生い立ち、国に対するヴィジョン、そしてトランプ再選の必要性に焦点を当てながら演説を行った。

大会3日目の5つのポイントをこれから紹介する。

 

(1)ヴァンスがスポットライトの中に踏み込む(Vance steps into the spotlight)

J・D・ヴァンス連邦上院議員(オハイオ州選出、共和党)は、小さな町のルーツとアパラチア山脈地方での生い立ちに焦点を当てたスピーチでトランプ大統領の副大統領候補としてデビューした。かつて、「アメリカのヒトラー(America’s Hitler)」と呼んだ、トランプの信頼できる副大統領候補として自らを名乗り出た。 

ヴァンスは正式に副大統領候補指名を受諾した後、「今夜ここに立つことになるとは、全くもって想像だにしていなかった」と語った。 

「私はオハイオ州ミドルタウンで育った。この小さな町では、人々が自分の考えを話し、自分たちの手で築き、彼らの神、家族、コミュニティ、そして国を心から愛していた。しかし、その場所はワシントンのアメリカ支配層によって見捨てられ、忘れ去られた場所でもあった」と述べた。トランプとヴァンスの大統領・副大統領候補コンビを国内のこうした地域のチャンピオンであるとアピールした。

ヴァンスは海兵隊時代と、現在1期目を務めている連邦上院議員の経験について言及したが、「少しのことではへこたれない頑健な(tough-as-nails)」祖母とシングルマザーで依存症に苦しんだ母親の、聴衆の感情に訴える内容を演説の中心に据えた。 

ヴァンスはまた、先週末の暗殺未遂で命を落としかけたトランプ前大統領が、ペンシルヴァニア州の選挙集会で、拳を振り上げた瞬間を強調し、この機会を利用してトランプを称賛した。

ヴァンスは、トランプの危機一髪(close call)の後の瞬間について。「雄々しく立ち上がって、拳を突き上げている彼の写真を見て欲しい。ドナルド・トランプがペンシルヴァニア州の大地に立ち上がったとき、全米が彼を支持した」と述べた。トランプ前大統領は銃弾がかすった耳に包帯を巻いて姿で、ヴァンスの演説を観客席から見守っていた。

ヴァンスは「彼の最も危険な瞬間でさえ、私たちのことが気になっていた。彼の本能は、私たちをもっと高いところへ呼び寄せようとするものだった」と述べた。

 

(2)民主党にとっては厳しい分割画面となっている(A brutal split screen for Dems)

今回の全国大会は、共和党にとっては特に良い時期であり、民主党にとっては非常に厄介な時期である。

共和党が、暗殺されかけた候補者トランプの周囲に結集するために総力を挙げる一方、民主党はジョー・バイデン大統領に退陣を求める声が上がる中、党内の混乱が再び表沙汰になった。

カリフォルニア州選出の連邦上院議員候補として出馬している、民主党所属のアダム・シフ連邦下院議員(カリフォルニア州選出、民主党)は、バイデンに再選を断念するよう求める、民主党内の最も著名な議員の1人となり、バイデンが秋にトランプ氏を打ち負かす能力について「深刻な懸念(serious concerns)」を抱いていると述べた。

質議員の発言と同じ日、AP通信の世論調査が発表され、バイデンに対する不満が広がっていることが明らかになった。民主党員、支持者の3人に2人がバイデン大統領は撤退すべきだとし、バイデンに有能な大統領になる精神的能力があるかについて、ほぼ半数が確信していないことが示された。

また、民主党が資金を提供する世論調査グループが発表板新しいメモによると、4人の著名な民主党所属の政治家たちがバイデンの後任として大統領候補となった場合、主要な激戦州ではバイデンを上回るだろうということだった。

これら全ては、投票日が近づく中、誰が民主党を率いるべきかについて民主党内に残る分裂を浮き彫りにした。一方、共和党は、民主党に対するいくつかの激しい攻撃が国家として団結するという共和党のメッセージを損なったにもかかわらず、共和党全国大会での演説で党員間の団結を一貫して強調してきた。

ヴァンスは、共和党員へメッセージを送り、「私たちはこの国を愛しており、勝利するために団結している」と述べ、これまでの共和党全国大会の数々の演説の内容をうまく要約しているようだった。 

ヴァンスが演説をしている間、CNNは、ナンシー・ペロシ前連邦下院議長(カリフォルニア州選出、民主党)がバイデンに、大統領選挙では勝てず、民主党が連邦下院の多数派を取り戻すチャンスを台無しにする可能性があると非公式に伝えたと報じた。この報道は、チャック・シューマー連邦上院多数党(民主党)院内総務(ニューヨーク州、民主党)もバイデンに対し、撤退が最善であると伝えたとの報道と併せて、バイデンが選挙戦に残留することへの疑問が民主党党の上層部でも広まっている可能性があることを示唆している。シューマー議員の広報担当者は、シューマー上院議員に関する報道を「根拠のない憶測(idle speculation)」と呼んだ。

 

(3)「日常」の演説者たちが外交政策についてバイデンを批判(‘Everyday’ speakers hit Biden on foreign policy)

この夜の最も効果的な講演者の中には、政治家などではなく、実際には外交政策でバイデンを厳しく批判した「日常のアメリカ人たち(Everyday Americans)」がいた。

共和党の著名人たちが登場する間に挟まれた「日常的な」演説者たちは、バイデンの外交政策がいかに個人的に手痛い損失をもたらしたかを語った。

アリゾナ州の牧場主であるジム・チルトンとスー・チルトンは、彼らの土地がアメリカとメキシコの国境に8マイル以上接しており、麻薬密輸(drug smuggling)と人身売買(human trafficking)について警鐘を鳴らした。

ジム・チルトンは国境越えについて、「それはまるで侵略のようであり、侵略のように感じられている」と語り、自身の牧場の防犯カメラを通して、そのような状態になっていることに気づいたと語った。

チルトンは「バイデンの国境開放が我が国にとって最大の国家安全保障上の脅威であることを私たちは直接見聞きして、知っている」と述べた。

ガザ地区で人質になったアメリカ人の両親、オルナ・ノイトラさんとロネン・ノイトラさんは「怒りはどこに行ったのか​​?」と疑問を呈した。10月7日のイスラエルに対する攻撃後、息子のオマーと他の数人のアメリカ人がハマスの人質になったことを踏まえて。彼らは、ハマスの攻撃はイスラエルだけでなくアメリカ人に対するものだと述べ、バイデン政権がアメリカ人を解放するためにさらなる措置を講じるべきであることを示唆した。

そして、その夜の最も悲しい瞬間の1つとなったのは、2021年のアフガニスタンからの撤退中にカブール空港での爆破事件で死亡した13人のアメリカ軍人のうちの何人かの家族が、個人的な損失について語った。彼らが家族を喪ったことは、バイデンの最も触れて欲しくない問題の1つである。

 

(4)演説者たちはトランプを人間味あふれる人物として描こうとしている(Speakers seek to humanize Trump )

演説した政治家ではない人々が、繰り返し話したテーマの1つは、トランプを父親、祖父、そして思いやりのある人物として、人間らしく表現しようと努めた。

最も注目を集めた演説者は、ドナルド・トランプ・ジュニアの娘で、孫娘のカイ・マディソン・トランプだった。彼女は祖父ドナルド・トランプのことを「インスピレーション(inspiration)」「普通のおじいちゃん(normal grandpa)」と呼んだ。

トランプが笑顔を浮かべて見ている中で、孫娘カイは、「おじいちゃんはお父さんとお母さんが見ていない隙に、私たちにお菓子とジュースをくれました。おじいちゃんはいつも、私たちが学校でどんな様子かを知りたがっているんです」と述べた。

個人的な苦難を経験した、複数の演説者も、演説中にトランプ大統領が自分たちへ示してくれた気遣いに感謝の意を表した。

ゴールドスター勲章受章者の家族たちはアフガニスタンについて話し、トランプ前大統領が自分たちに同情を示してくれたことを称賛した。義理の娘が戦死したクリスティ・シャンブリンは、トランプ大統領が家族と一緒に6時間過ごてくれたと語った。

「彼は私たちが悲しむことを許してくれた。彼は私たちが英雄を思い出すことを許してくれた。ドナルド・トランプは私たちの子供たちの名前を全員知っていた」と彼女は語った。

一方、彼らはバイデンについて、事件の発生を許した政権の「失敗(failure)」について「沈黙(silence)」していると非難した。

オハイオ州イーストパレスティナ市長のトレント・コナウェイは、昨年に鉄道脱輪事故で有毒な化学物質が漏れたために、市民の一部が避難を余儀なくされたという事件が起きたが、事件の発生直後にトランプがイーストパレスティナを訪問してくれたと述べた。バイデン大統領の訪問は「台本通り(scripted)」だったが、トランプの訪問は純正の本物(atuhentic)だったと述べた。

「トランプは、私たちの話に耳を傾け、ヴォランティアたちと食事を共にした。彼の存在は本物だった」とコナウェイは語った。

 

(5)ナヴァロが満場をうならせた(Navarro brought down the house)

トランプ政権のホワイトハウスで通商担当大統領補佐官を務めたピーター・ナヴァロは、釈放されてからわずか数時間後に共和党全国大会の演壇に上がり、満場の拍手喝采を受けた。 

2021年1月6日の連邦議事堂襲撃事件に関連した、連邦議会の召喚状に応じなかった罪で4カ月の懲役刑を言い渡されたナヴァロは、スタンディングオベーションと1分以上にわたる拍手を受けながら、コンヴェンションホールに入場した。

「そう、今朝、私はマイアミの連邦刑務所から出てきたところだ」とナヴァロは述べ、更なる喝采を受けた。

「私は、ピーター・ナヴァロ、皆さん方がそうであるように、私は罪を犯していないのに、私は刑務所に行っていた」と続けた。

ナヴァロはマイクの前での時間を利用して、保守派に対して「法律戦争(lawfare)」を仕掛けているとして民主党を激しく非難し、聴衆に民主党が「あなた方を迎えに来るだろう(will come for you)」という不気味な警告を発した。 

ナヴァロは「私たちが政府の3つの機関をコントロールしなければ、政府は、私たちのうちの誰かを、私やスティーヴ・バノンのように、刑務所に入れるだろう。そして、私たちをコントロールするだろう」と語った。

ナヴァロの演説は、通路の反対側にいる民主党が政治的動機に基づいた戦争の道を進んでいるという、共和党の広範なメッセージを強調した。トランプ前大統領は、11月に再選されれば元補佐官であるナヴァロを「絶対に」再び起用すると述べた。

ナヴァロは次のように語った。「トランプのアメリカでは、政府に反対していることで刑務所に入れられるというような心配をしなくて済んだ。私は刑務所に入ったが、(トランプが当選すれば)皆さん方は刑務所に行かなくてよい。私の存在は皆さん方にとっての目覚ましの音だ」。

(貼り付け終わり)

 

(終わり)