「大イスラエル」構想とは? | ワーカーズの直のブログ

ワーカーズの直のブログ

ブログの説明を入力します。

「大イスラエル」:中東に対するシオニストの計画

<記事原文 寺島先生推薦>

悪名高い「オーディド・イーノン計画」。ミシェル・チョスドフスキーによる序文

“Greater Israel”: The Zionist Plan for the Middle East The Infamous "Oded Yinon Plan". Introduction by Michel Chossudovsky

筆者:イスラエル・シャハク(Israel Shahak) & ミシェル・チョスドフスキー(Michel Chossudovsky)

出典:Global Research 2023年11月15日 Association of Arab-American University Graduates, Inc. 2013年3月 <記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2023年12月22日

本記事の初出は2023年3月1日

***

更新記事と分析

 

2023年10月7日、ハマスが軍最高責任者モハメド・ダイフ率いる「アル・アクサの嵐作戦」を開始した。 同日、ネタニヤフ首相はいわゆる「戦争準備態勢」を確認した。イスラエルは今(2023年10月7日)、パレスチナの人々に対する長い戦争の新たな段階を公式に宣言した

 

「軍事作戦は必ず事前に計画される(下記のネタニヤフ首相の2023年1月の声明を参照)。アル・アクサの嵐作戦」は「奇襲攻撃」だったのか?

アメリカ情報部は、ハマスの攻撃が差し迫っているとは知らなかったと言う。

 

ネタニヤフ首相と彼の巨大な軍事・諜報組織(モサドなど)は、ハマスの攻撃を予見していたのだろうか?

ハマスが「アル・アクサの嵐作戦」を開始する前に、パレスチナ人に対して全面戦争を仕掛けるという入念に練られたイスラエルの計画は想定されていたのだろうか?メディアはそう伝えているが、これはイスラエル諜報部の手落ちではない。正反対だ。

 

ハマスの行動をネタニヤフ政権が予見していたことを示す証拠と証言がある。「彼らはそれを黙認したのだ」

10月7日の「アル・アクサの嵐」作戦の後、イスラエルの国防相はパレスチナ人を「人間の動物」と表現し、「それに従って行動する」と宣言した。同時に戦闘機がガザ地区への大規模な爆撃を行なった」。(Middle East Eye)。

 

ガザ地区の完全封鎖は2023年10月9日に開始された。230万人のパレスチナ人に対する食糧や水、燃料、そして必需品の輸入を阻止し、妨害するもの。これは人道に対する明白な犯罪だ

 

「アル・アクサの嵐作戦」は「奇襲攻撃」だったのか?  偽旗作戦だったのか?

 

ネタニヤフのパレスチナに対する「長い戦争」の「新しい段階」

 

ネタニヤフ首相の掲げる目的は、パレスチナの人々に対する75年前の戦争(1948年のナクバ以来、下記参照)の新たな段階を構成するものであり、もはや「アパルトヘイト」や「分離」が前提ではない。この新たな段階は、平和を望むイスラエル人に対しても向けられているが、パレスチナの人々を祖国から完全に排除するだけでなく、「全面的な横領」によって成り立っている。

 

現ネタニヤフ政権が全力で取り組んでいるのは、「大イスラエル」と「約束の地」、すなわち聖書に書かれたユダヤ人の祖国だ。

<画像中の英文和訳>

ネタニヤフ首相、イスラエル人に「パレスチナ人射殺へ青信号」を与える

イスラエル首相は、イスラエル人に対する銃の所持許可を早めるという計画を発表した。

パレスチナ人にさらなる暴力を加えることになる、とアナリストは言う。

 

ベンヤミン・ネタニヤフは、「イスラエルの植民地計画」、すなわちパレスチナ全土の横領を正式に決定するために邁進している。

 

2023年10月7日の「戦争準備態勢」の数ヶ月前に彼の立場は以下のように明示された。それは完全な横領と同時に、パレスチナ人を彼らの故郷から完全に排除することを含んでいる。

「これらは、私が率いる国民政府の基本路線である: ユダヤ民族は、イスラエルの土地のすべての地域に対する排他的で疑う余地のない権利を有する。政府は、ガリラヤ、ネゲブ、ゴラン、ユダヤ、サマリアなど、イスラエルの土地のあらゆる場所での入植を促進し、発展させる」。 (2023年1月)

<画像中の英文和訳>

イスラエルは「戦争準備態勢」を宣言

ハマスがガザ地区からの大規模なロケット攻撃を行なったと主張した後でイスラエル軍は、ハマス軍事集団がイスラエルに対する新たな作戦を発表した後、空襲警報が鳴り響く中、ガザ地区の標的を攻撃していると発表した。

 

歴史:モサドとハマスの間の関係

 

モサドとハマスとの関係は何なのか?ハマスは「情報機関」なのか? 古い歴史がある。

ハマス(Harakat al-Muqawama al-Islamiyya)(イスラム抵抗運動)は、シェイク・アーメド・ヤシン(Sheik Ahmed Yassin)によって1987年に創設された。パレスチナ自治政府を弱体化させる手段として、当初はイスラエル情報機関の支援を受けていた:

「モサド(イスラエルの「諜報・特殊任務研究所」)のおかげで、ハマスには占領地での存在感を強めることが許された。一方、アラファトのファタハ民族解放運動とパレスチナ左派は、最も残忍な弾圧と脅迫にさらされた。
 
忘れてはならないのは、ハマスがイスラエルによって作られたという事実だ。エルサレム・ヘブライ大学の歴史学者ジーブ・スターネル(Zeev Stternell)によれば、「イスラエルは、パレスチナ解放機構(PLO)に対してイスラム主義者を押し出すための賢い策略だと考えた」のだという。(L'Humanité、フランス語からの翻訳)

ハマスとモサドや米国諜報機関とのつながりが、ロン・ポール議員の米国議会での声明で認められた: 「ハマスはイスラエルが始めた」?

 

「ハマスの歴史を見ればわかるが、ハマスがイスラエルによってテコ入れされ、実際に始められたのは、ヤーセル・アラファトに対抗するためにハマスが必要だった・・・。(ロン・ポール議員、2011)

 

この発言が意味するのは、「ハマス内の派閥」が「諜報機関」、すなわち「諜報機関の利益に奉仕する機関」を構成しているということだ。

WSJも参照(2009年1月24日)「イスラエルはどのようにハマスの誕生を助けたか」

 

コーエン氏によれば、イスラエルは当初からガザのイスラム主義者を抑制しようとするのではなく、パレスチナ解放機構とその支配的な派閥であるヤーセル・アラファトのファタハの世俗的な民族主義者に対抗するものとして、長年彼らを容認し、場合によってはテコ入れしてきた。(WSJ、強調は筆者)

<画像中の英文和訳>

イスラエルはどのようにハマスを誕生させたか

アンドリュー・ヒギンズ(Andrew Higgins)

2009年1月24日 12:01東部標準時

 

ナクバ

 

2023年5月13日の記念日: ナクバ。75年前の1948年5月13日。パレスチナの惨状は至る所に。2018年の報告書で、国連はガザが「住めない」状態になったと述べた:

経済が自由落下し、若者の失業率が70%に達し、飲料水が広く汚染され、医療制度が崩壊したガザ。パレスチナ自治区の人権に関する特別報告者によれば、ガザは(2018年に)「住めない」状態になった。

上記の国連の評価は2018年にさかのぼる。ネタニヤフ首相の下、イスラエルは現在、パレスチナ領土の大部分を併合する計画を進めている。「一方、パレスチナ住民は深刻な収奪と孤立の状況に置かれている」

 

極度の貧困と経済破綻の状況を作り出すことは、パレスチナ人を祖国から追放し、脱出させるための手段である。 それは併合過程の一部である。

「この作戦が成功すれば、イスラエルは1967年の戦争で征服したすべての領土(ゴラン高原とエルサレム、パレスチナ自治区の大部分、最高の水源と農地を含む)を手に入れることになる。

ヨルダン川西岸地区は、外界から遮断され、敵対するイスラエル軍とイスラエル入植地に囲まれた、ガザ地区と同じ状況に陥るだろう」。(South Front)
人権はパレスチナ国境で終わったのだ。買収され、金で雇われたアメリカ議会は、これでもかというほどの平身低頭だった:
「2023年7月19日、アメリカ議会はイスラエルのイツハク・ヘルツォグ大統領のために特別合同会議を開いた。民主・共和両党は29回も拍手を送った」。

「パレスチナの消滅を見ながら」ポール・クレイグ・ロバーツ博士、2023年9月12日

 

「大イスラエルは多くの代理国家を生み出すだろう。レバノンやヨルダン、シリア、シナイ半島の一部、そしてイラクとサウジアラビアの一部を含むだろう」。

「パレスチナは消滅した!消滅した!パレスチナの苦境は残酷なまでに痛々しく、その痛みは、欧米列強がその痛みを不可解なまでに無下にし、消し去っていることによって、さらに増している」リマ・ナジャール(Rima Najjar)、グローバル・リサーチ、2020年6月7日号

ミシェル・チョスドフスキー、2021年6月10日、2023年10月11日、2023年11月1日

________________________________________

「大イスラエル計画」への序文 ミシェル・チョスドフスキー

 

「大イスラエル」の形成に関する以下の文書は、ネタニヤフ現政権、リクード党、イスラエル軍および情報機関の強力なシオニスト派閥の礎石となっている。

ドナルド・トランプ大統領は2017年1月、イスラエルの違法入植地(ヨルダン川西岸地区におけるイスラエル入植地の違法性に関する国連安全保障理事会決議2334への反対を含む)を支持することを確認した。トランプ政権は、ゴラン高原に対するイスラエルの主権を認めると表明した。そして今、ヨルダン川西岸地区全体がイスラエルに併合されようとしている。

 

バイデン政権下では、政治的言説の修辞的転換はあるが、ヨルダン川流域全体とヨルダン川西岸の違法入植地を併合するイスラエルの計画を、ワシントンは依然として支持している。

 

心に留めておいてほしい: 大イスラエル構想は、厳密にはシオニストの中東計画ではなく、アメリカの外交政策に不可欠なものであり、その戦略的目的は、アメリカの覇権を拡大し、中東を分断し、バルカン化することにある。

この点で、ワシントンの戦略は、トルコやイランを含む中東地域の経済大国を不安定化させ、弱体化させることにある。この政策は大イスラエル主義に合致しているが、政治的分断のプロセスを伴っている。

 

湾岸戦争(1991年)以来、国防総省はイラクやシリア、そしてイランの一部とトルコの併合を含む「自由クルディスタン」の創設を考えてきた。

「新しい中東」:ラルフ・ピーターズ中佐による米陸軍士官学校非公式地図

 

シオニズムの創始者セオドア・ヘルツル(Theodore Herzl)によれば、「ユダヤ国家の領域はエジプトの小川からユーフラテス川まで広がっている: 「エジプトの小川からユーフラテス川まで」。 ラビ・フィシュマンによれば、「約束の地はエジプトの川からユーフラテス川まで広がり、シリアとレバノンの一部を含む」。

ガザ包囲を含む現在の文脈で見れば、シオニストの中東計画は、2003年のイラク侵攻や2006年のレバノン戦争、2011年のリビア戦争、現在進行中のシリア、イラク、イエメン戦争、そして言うまでもなく、サウジアラビアの政治危機と密接な関係がある。

「大イスラエル」計画は、アメリカ・イスラエルの拡張主義計画の一環として、近隣のアラブ諸国を弱体化させ、最終的には分裂させることで成り立っている。それはNATOとサウジアラビアの支援を得てなされる。この点で、ネタニヤフ首相の視点に立てば、サウジとイスラエルの和解は、中東におけるイスラエルの勢力圏を拡大する手段であり、イランと対峙する手段でもある。言うまでもないが、「大イスラエル」計画はアメリカの帝国主義的設計と一致している。

 

「大イスラエル」とは、ナイル渓谷からユーフラテス川までの地域を指す。スティーブン・レンドマン(Stephen Lendman)によれば、

「100年近く前、世界シオニスト機構のユダヤ人国家建設計画には、次のようなものが含まれていた:

- 歴史的パレスチナ;- シドンとリタニ川までの南レバノン;- シリアのゴラン高原、ハウラン平原、デラ、そして- デラからヨルダンのアンマンまでのヒジャーズ鉄道とアカバ湾の支配。

 

シオニストの中には、さらに西のナイル川から東のユーフラテス川まで、パレスチナ、レバノン、シリア西部、トルコ南部の土地を求める者もいた。

シオニスト・プロジェクトは、ユダヤ人入植運動を支援してきた。より広義には、パレスチナからパレスチナ人を排除し、ヨルダン川西岸とガザをイスラエルに併合する政策である。

「大イスラエル」計画は、レバノンやヨルダン、シリア、シナイ半島の一部、そしてイラクとサウジアラビアの一部を含むいくつかの代理国家を作ることである。(地図参照)。

 

2011年のGlobal Researchマハディ・ダリウス・ナゼムロアヤ(Mahdi Darius Nazemroaya) の記事によれば、イーノン・プランは中東におけるイギリスの植民地支配の継続であった:

 

「イーノン・プランは)イスラエルの地域的優位性を確保するための戦略的プランである。イスラエルは、周辺のアラブ諸国をより小さく弱い国家にバルカン化することによって、その地政学的環境を再構成しなければならないと主張し、規定している。

イスラエルの戦略家たちは、イラクをアラブ国家からの最大の戦略的挑戦とみなしていた。イラクが中東とアラブ世界のバルカン化の目玉として概説されたのはこのためである。イラクでは、イーノン・プランの考え方に基づき、イスラエルの戦略家たちはイラクをクルド人国家と、シーア派イスラム教徒とスンニ派イスラム教徒の2つのアラブ国家に分割することを求めた。これを確立するための第一歩はイラクとイランの戦争であり、イーノン・プランはこれを論じている。

 

2008年の「アトランティック(The Atlantic)」誌と2006年の米軍「アーメッド・フォース・ジャーナル(Armed Forces Journal)」誌は、いずれもイーノン・プランの素描に忠実な地図を広く流布した。バイデン・プランも求めているイラクの分割はさておき、イーノン・プランはレバノンやエジプト、そしてシリアの分割を求めている。イランや、トルコ、ソマリア、そしてパキスタンの分割も、すべてこれらの見解に沿ったものである。イーノン・プランはまた、北アフリカでの分割を求め、エジプトから始まり、スーダンやリビア、そしてその他の地域に波及すると予測している。

 

「大イスラエル」は、既存のアラブ諸国を小国に分割を求めることになるだろう。

「この計画は2つの本質的な前提に基づいている。イスラエルが生き残るためには
1)帝国的な地域大国になること。
2)現存するアラブ諸国をすべて解体し、地域全体を小国に分割すること。
ここでの小国は、それぞれの国家の民族や宗派の構成に左右される。その結果、シオニストが望むのは、宗派を基盤とする国家がイスラエルの衛星国となり、皮肉なことに、イスラエルの道徳的正当性の源泉となることである・・・これは新しい考えではなく、シオニストの戦略的思考において初めて浮上したものでもない。実際、すべてのアラブ国家をより小さな単位に分断することは、繰り返し語られてきたテーマである。(イーノン・プラン、下記参照)

この文脈で見れば、米国とNATOが主導するシリアとイラクへの戦争は、イスラエルの領土拡張過程の一部である。

この点で、ロシアやイラン、そしてヒズボラの支援を受けたシリア軍が米国の支援するテロリスト(ISIS、アル・ヌスラ)を敗北させたことは、イスラエルにとって大きな後退となる。ミシェル・チョスドフスキー、グローバル・リサーチ(2015年9月6日、2019年9月13日更新)