【183】大館ぶらぶら | 酔いどれパパのブログ

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「お風呂」と「酒」と「路線バス」に関する駄文を書き連ねております。

【182】で北鹿さんに立ち寄った話を記した秋田県大館市には、親族の眠る墓があるにもかかわらず、訪れたのは今回を含めてわずか5回。


秋田市にはこれまで30回以上出かけており、少し足を延ばせば大館を訪ねる回数を重ねることもできたはずだが、その機会を持つことができずにいた。


ここ数年で2基の墓石に3人の名が加わり、私自身も老いを感じる場面が増えてきたこともあって、いつも墓参のことが頭にあった。


そんな日々を過ごす中、3月の平日に連休を取る機会が訪れた。


今年度の消化日数が4日だった有給休暇の申請が許可された後、スマホで大館市内の宿泊施設を検索すると、駅近くのホテルを難なく取ることができたので、懸案にして念願の大館行きを決めた。


父親から墓の場所を聞きつつ、叶うことなら最後に会ってから約40年が経つ従兄弟とも再会したいと伝言を頼むと、数日後に本人から会えるとの連絡が来た。


新青森で新幹線から乗り継いだ特急「つがる」は、陽光に輝く雪原の中を走り、1時間ほどで陽の傾きはじめた大館に到着。


途中駅では、うず高く積み上げられた雪が溶け残っており、車窓を眺めながらどうなることかと気を揉んだが、大館盆地に入ると思ったほど雪はなく寒さも感じない。


真新しい大館駅舎と秋田犬の銅像を眺めたのち、ホテルでチェックインを済ませ、慌ただしく大浴場に浸かってから約束の時間にエントランスに立つと、昔会った頃と変わらない人懐っこい面立ちの従兄弟N君が近づいてくる。


傍らに立つ息子さんも、父親譲りの親しみやすさと真面目さを感じさせる好青年で、この春から教員として社会人生活をスタートさせるという。


N君の運転するクルマで大館の繁華街に向かい、【182】で記した店で酒と料理を満喫し、ディープなエリアでカラオケを楽しんでから代行ドライバーの運転でホテルまで送ってもらって1日目が終了。


翌朝は墓参り前に大浴場に浸かってから、大館駅の周辺をぶらぶら。

手書きの絵看板が掲げられた「御成座」は、昔の面影を色濃く残す映画館で、2004年に経営難により一旦は幕を閉じたものの、千葉の電気工事会社の経営者ご夫婦が復活させ、35ミリフィルムの上映も行っているという。

先月、信州松本の上土シネマで35ミリフィルム映写機のレストア記念に立ち会ったばかりなので、いつか御成座でもフィルムから写し出される映像を楽しみたい。
御成座から少し歩くと、新駅舎が完成するまで使用されていたバスターミナルの跡地が、ほぼそのまま残っているのが見える。
建物は、秋田県北の地域輸送を担う秋北(しゅうほく)バスの本社で、こちらでもドライバーの確保に人事担当者が奔走しているんだろうなぁ、と余計なお節介が脳裏をよぎる。

駅前の「秋田犬の里」の裏手には、こうしたカバーが掛けられた物体が。
かつて東急線で活躍した初代5000系(通称青ガエル)のうちの1両が、信州で第2の人生を送ったのち、東急に里帰りしてからしばしの保存期間を経て、渋谷駅前に「ハチ公像」と並ぶ待ち合わせ場所として展示された。

さらに、渋谷駅周辺の大規模再開発に伴って2020年、ハチ公の出身地である大館に移設されている。

4度目の冬を迎えた青ガエルは、ごらんの通り冬眠中だったが、信州で第2の人生を送っていた5000系に乗務したことのある身としては、僚車の1両が縁ある土地で余生を送っていることに感慨を覚える。

そんなことを思いながら緑のカバーを眺めていると、雨粒が落ちてきたので慌ててホテルに戻った。

(つづく)