【182】で北鹿さんに立ち寄った話を記した秋田県大館市には、親族の眠る墓があるにもかかわらず、訪れたのは今回を含めてわずか5回。
秋田市にはこれまで30回以上出かけており、少し足を延ばせば大館を訪ねる回数を重ねることもできたはずだが、その機会を持つことができずにいた。
ここ数年で2基の墓石に3人の名が加わり、私自身も老いを感じる場面が増えてきたこともあって、いつも墓参のことが頭にあった。
そんな日々を過ごす中、3月の平日に連休を取る機会が訪れた。
今年度の消化日数が4日だった有給休暇の申請が許可された後、スマホで大館市内の宿泊施設を検索すると、駅近くのホテルを難なく取ることができたので、懸案にして念願の大館行きを決めた。
父親から墓の場所を聞きつつ、叶うことなら最後に会ってから約40年が経つ従兄弟とも再会したいと伝言を頼むと、数日後に本人から会えるとの連絡が来た。
新青森で新幹線から乗り継いだ特急「つがる」は、陽光に輝く雪原の中を走り、1時間ほどで陽の傾きはじめた大館に到着。
途中駅では、うず高く積み上げられた雪が溶け残っており、車窓を眺めながらどうなることかと気を揉んだが、大館盆地に入ると思ったほど雪はなく寒さも感じない。

傍らに立つ息子さんも、父親譲りの親しみやすさと真面目さを感じさせる好青年で、この春から教員として社会人生活をスタートさせるという。
N君の運転するクルマで大館の繁華街に向かい、【182】で記した店で酒と料理を満喫し、ディープなエリアでカラオケを楽しんでから代行ドライバーの運転でホテルまで送ってもらって1日目が終了。
翌朝は墓参り前に大浴場に浸かってから、大館駅の周辺をぶらぶら。

そんなことを思いながら緑のカバーを眺めていると、雨粒が落ちてきたので慌ててホテルに戻った。
(つづく)