【166】からのつづき
トイレから出てきたM君に遅参を詫び、さてどうしようかと言いながら駅前に出ると、旧式の江ノ電バスが停まっていたので衝動的に乗車。
われわれの他に数人を乗せたN2系統大船駅行きは、駅前交差点を左折して若宮大通りを進み、鶴岡八幡宮前の信号を左折。八幡宮の周囲を回り込むように右折してから、建長寺に続く上り坂に挑む。
乗っている2008年式三菱ふそうPKG-MP35UPは、日産ディーゼル(現UDトラックス)製MD92エンジンを積んでおり、最高出力300馬力のゆとりある走りで坂道を上っていく。
何故三菱ふそう車にUDエンジンが搭載されているかは、ここでは割愛するが、短期間だけ生産されたモデルで鎌倉の街を抜けて大船に向かう初乗車の路線をたどることができたのはラッキー。
バス好きのM君もゴキゲンかと思えば、テンションは低く顔色も冴えない。
聞けば、昨晩鎌倉で開かれた懇親会にて痛飲し、未だ不調とのこと。
私よりも症状は重そうで、当初予定していた「鎌倉からバスを乗り継いで北上し、途中で風呂に寄ってからM君が気になっている鴨居駅近くの居酒屋で祝杯」のプランは厳しそう。
バスは明月院や北鎌倉駅を右手に見てから横須賀線の踏切を渡り、常楽寺で左折して大船駅東口に入る。
バスを降りてまずは2人でトイレを済ませ、柏尾川に沿う長いペデストリアンデッキを歩いて西口バス乗り場に向かう。
ちょうど戸塚バスターミナル行きが入ってくるものの、M君は「ちょっと厳しいかも」とのことなので、バスは諦めて駅に向かう。
先ほどペデストリアンデッキからお顔を拝することのできる大船観音様に「罪深き深酒従兄弟2人組にご慈悲を」と心で願ったけど、そんなご都合主義的な祈りこそ罪深いというもの。
改札を抜け、乗り換えせずにM君の住む大宮まで行くことのできる上野東京ラインのトイレ付き車両に乗車。
クロスシートに腰掛けて、離れゆく大船の街に別れを告げながら、M君の体調回復を祈った。
(つづく)