【65】からのつづき
回送表示でやってきた関越交通のいすゞキュービックは、15時08分発伊香保榛名口行きとして乗り場に入る。
2本の普通列車からの接続を受け、座席が半分以上埋まる乗り具合となっており、エンジン音を楽しめる最後部付近は若者グループや外国人集団などで空席はなく、最前列左側の「マニア席」に着座。
発車時刻になりドアが閉まると、駅前の交差点を右折して旧市街地を進む「四ツ角経由」のルートを辿る。
伊香保榛名口行きは、V8キュービックを知り尽くしたことが伝わってくるドライバーさんの熟練したハンドル捌きとアクセルワーク、シフトチェンジで高度を上げていく。
最前部にいてもしっかり轟いてくるエンジン音に耳を澄ませ、2000回転近辺を行き来する運転席のタコメーターを眺めながら、板バネの振動が生み出す乗り心地を味わっているとバスは伊香保温泉地区に入っていき、停留所ごとに客が数人ずつ降りていく。
先ほどのエルガでは伊香保バスターミナル直前の急勾配を3速で登りきれずに一旦停車して2速で再発進したが、キュービックは3速のまま進む。同じエンジンを積んでいながらこうした差が出るのは、エルガが市街地向けのギア比になっているから。
先ほど列車で渋川駅に到着する直前に、バス営業所内の線路際にキュービックが2台並べて停めてあるのが見え、もしかしたら今乗ってきた3080以外はナンバーが切られてしまったのではないかと心配だったのでその件を聞いてみると、3083はまだナンバーが付いているものの、デフの不調で復帰はないのではないかとの見通しを示される。
4か月前にいとこと乗った時には健脚ぶりを披露してくれた3083号車だが、すでに満身創痍だったのかも知れない。
とすると、目の前で発車を待つ3080号車が関越交通渋川営業所で唯一営業運転に入っているキュービックということになる。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240703/20/bu10kb/3a/ac/j/o1080081015458980639.jpg?caw=800)
今日の3080号車が就いている355ダイヤは、これから渋川駅まで降りた後に伊香保温泉まであと2往復するので、ダイヤ終了までキュービックに身を預けたいところだが、仙台からお越しの先輩との一杯が待っているので、これから渋川駅までの時間をしっかり味わおう。
そう思いながらキュービックに乗り込み、約1時間半の間に2回来たにもかかわらず、1度も風呂に入らないまま伊香保温泉をあとにした。
(つづく)