【23】新潟BRTで均一運賃を考える | 酔いどれパパのブログ

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【11】で新潟駅バスターミナル新旧交代の話に触れたが、旧ターミナルのある新潟駅万代口に入りながらもバックで乗り場に入線しない系統があった。


「新潟BRT 萬代橋ライン」で、来年で開業から10年を迎える。

ご覧の通り、オーストラリア製の連節バスも運用される新潟市中心部の基幹路線で、新潟駅から萬代橋を渡り、オフィスや商業施設などの集まる信濃川と関屋分水に囲まれた「新潟島」と呼ばれるエリアを抜けて青山までの約7キロメートルがメイン区間となっており、青山から先へと運行する派生系統もある。

運賃は、新潟駅~万代シテイ間が120円となっているほかは新潟駅~青山間260円均一。

BRTに限らず、新潟市中心部のバス運賃は昨年9月に210円均一から260円均一に50円引き上げられ、政令市の均一運賃で最も高くなった。

均一運賃は、そのエリアや路線の初乗り運賃であり最高運賃でもあるので、設定価格が上がるほど、短距離利用者と遠距離利用者の移動距離当たりの価格差が開く。

均一運賃制は、バス利用が活発で現金扱いがメインだった高度経済成長期に運賃収受をスムーズにして乗降や運行を円滑に行うことが主な理由だったが、乗客のほとんどがICカード利用や敬老パスになった令和に入っても見直しの話が出ないのは、均一運賃のほうがバス会社にとって都合がいいからだろうか。

ちなみに、路線バス運賃の値上げには、様々な経費を積み上げて算出された「総括原価」に「適正利潤」を加えた新たな運賃への変更を国土交通大臣(一定台数以下は地方運輸局長)に申請し、大臣が運輸審議会に諮問(地方運輸局長への申請の場合を除く)して、運輸審議会から「申請の内容は適当である」との答申が得られて実現する。

変動する多様な費目からなる原価の計算を実績や認可基準と照らしながら行う作業は複雑をきわめ、小規模事業者ではその煩雑さから値上げ自体を諦めることもあると聞く。

そうした厳格な仕組みの中で均一運賃の19パーセントにものぼる値上げが認められたのは、2020~22年度の3年間で約20億円の損失を計上するほどの新潟交通のバス事業をめぐる経営環境の厳しさがある。

新潟市も新潟交通に対してバス交通維持のための支援を行っているが、新潟交通自体は不動産収入などで黒字決算となっているため、税金の投入には批判も多い。

東京都内でも昨年9パーセントを超える値上げを上限運賃(バス事業者が収受してもよいとされる運賃)として認められたものの、利用者への影響を考慮して、4・5パーセントの値上げに抑えている(「実施運賃」を採用した)事業者もある。

利用者が減る中で運賃を上げなければ路線を維持できないが、上げれば「企業努力が足りない」などの批判にさらされるのは公共交通機関の宿命といえる。

こうした状況は東京や新潟のような都市部のみならず、バス事業を取り巻く全国共通の課題で、コロナ禍で傷んだ経営に、いわゆる「2024年問題」がのしかかり、待遇改善を通じたドライバー確保に向けた原資創出も見据えた運賃値上げ申請が一昨年から昨年にかけて各地で相次ぎ、いずれも認められている。

運賃値上げは実績年度の収支が赤字であることが申請の条件(要否要件)なので、コロナ期間中に全ての路線バス事業者が営業損失を出したことを鑑みれば、一斉に値上げ申請がなされたのは当然といえる。

加えて、ドライバーや路線の維持・確保にもつながる値上げとなるよう、監督官庁による手厚いフォローがあったとも聞く。

官製値上げの匂いが漂うとの批判もあるバス運賃値上げの波だが、社会インフラともいえる路線バスを維持するには不可避の痛みだろうと思う。

滋賀県では、「交通税」導入に向けた検討が進められているが、反対意見も多く実現へのハードルは高い。

日本の公共交通の行く末を考えながら萬代橋ラインの連節車に揺られ、夜の街が動き出した古町へと運ばれた。