【22】船酔い体験こがね丸 | 酔いどれパパのブログ

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「お風呂」と「酒」と「路線バス」に関する駄文を書き連ねております。

初めて佐渡を訪れた時のことは【16】~【21】に記した通りで、当然のことながら佐渡汽船に乗るのも初めての経験だった。


新潟港~佐渡島・両津港間の所要時間はカーフェリーが2時間半、ジェットフォイルなら67分。


そもそも乗船時間が2時間を超える航路に乗った経験は、苫小牧~秋田間のフェリーぐらいで、あとは2時間に満たない東京湾フェリーや今はなき宇高連絡船、島原半島の口之津港と天草の鬼池港を結ぶ島鉄フェリー、熱海港~初島航路あたりの思い出しかない。


このほか、東京湾内をクルーザーや納涼船、東京海洋大学の実習船で遊覧したことがあるものの、これらは目的地に向かうための航路ではない。


佐渡汽船は、新潟港~両津港と直江津港~小木港の2つの航路を持ち、カーフェリー、ジェットフォイルを各3隻保有する。


今回、新潟港からの往路に乗船した「こがね丸」は、直江津港~小木港航路で運航される船舶で、同航路の冬季運休中には、新潟港~両津港航路での運航にも用いられている。

3隻のカーフェリーの中ではもっとも小さい2483トン584人乗りで、車両積載能力は乗用車換算150台。

昨年に、九州の別府港と四国の八幡浜港を結ぶ豊予海峡航路から佐渡汽船に転じた2001年製の元・宇和島運輸「えひめ」で、5階建て構造の船内には特等、1等、2等の各船室のほか、佐渡汽船で初めてとなる犬との同伴が可能なウィズドッグルームを備える。

3階前方と4階後方にある2等船室内は、じゅうたんの敷かれた雑魚寝スペースが何区画かに分かれて配置されており、4人の先客がくつろいでいた3階の一角に靴を脱いで上がり足を投げ出す。

スピーカーから銅鑼の音が流れ、船底からガーッ、グォーンという離岸時特有の騒音と振動が伝わってきて、新潟港を出港したのが寝転がっていても分かる。

いくつかある雑魚寝スペースは、窓側エリアに人が多く、私のいる通路に囲まれたエリアは、詰めれば20人くらいは入れそうなひとつの区画に4~5人しかいないので、ゆっくりできる。

佐渡汽船の新潟港は、信濃川の河口近くに造成された万代島に設けられているので、フェリーはしばらく信濃川を進む。

西突堤灯台と東防波堤灯台の間を抜け日本海に出ると、舳先を北北東から北西に変え、佐渡島を目指して速力を上げる。

両津港到着までは、まだ2時間ほどかかるので、横になりながらフェリーターミナルで手に入れた佐渡島のパンフレットに目を通していると、スピーカーから「海上は北西の風10メートル、波の高さは2メートルです。時折船が大きく揺れることがございますが、運航の安全には問題ございませんので、ご安心下さい」と、飛行機で耳にするのに似た船内放送が流れる。

飛行機ではたびたび大きな揺れを経験しているが、具合が悪くなったことは1度もなく、むしろ楽しんでしまうタチなので、船の揺れはどんなものかと期待と不安が相半ばする。

この規模の船にとって、案内のあった数値が運航にどの程度影響を与えるのか想像がつかないが、揺れの説明に「大きく」が付いているのが気にならなくもない。

気にしてどうなるものでもないので、目で文字を追うのはやめにして、頭の後ろで組んだ掌を枕に仰向けになって目を閉じる。

両津港に着いたら新潟交通佐渡の南線のバスに乗り真野新町に向かって、などと下船後の行程を再確認していると船がにわかに揺れはじめ、やがて舳先を上げ下げするようなピッチングを繰り返す。

頭を船の前部に向けて寝ているので、舳先が沈めば頭が下がり、ひと呼吸おいてから今度は足側が下がる。

レントゲン台にでも載せられたようで次第に気分が悪くなり、横向きに姿勢を変えたり膝を曲げたり組んだりして気を紛らわせるが、さしたる効果はなく、目まで回ってきて、よろつきながらトイレへGO!

隣の個室からも似た状態と思われる気配が伝わってきて、えも言われぬ不協和音がトイレ内に響く。

いったんデッキに出て潮風を浴びてみるが、体内の第2波が遅ってきてトイレに逆戻り。

若かりし頃に一升瓶をあけた後に襲ってきたダメージに近い感覚で、船酔いとはこんなにもパンチ力があるものかと思い知らされる。

少し落ち着いたので雑魚寝スペースに戻りがてら、揺れに順応しやすいスタイルがあるのではないかと、他の客の体勢をそれとなく観察してみるものの、みな思い思いに寝そべっていて参考にならない。

酒酔いなら横になれば多少は楽になるが、揺れる船内で床に背を付けるのは却って辛い。 

3回目のトイレから出た頃に揺れが収まり、デッキに出ると佐渡島が見えていて、気分も晴れてくる。
予定通りに2時間半で両津港に着き、「あの揺れは(波の高さ)2メートルじゃなかったな」と話し合う島民らしき下船客の会話にうなずきながら、ブリッジで手を振る船長に掌で答礼して初めての佐渡島に降り立った。