【16】尾畑酒造さん訪問 | 酔いどれパパのブログ

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「お風呂」と「酒」と「路線バス」に関する駄文を書き連ねております。

過日、佐渡島に初渡航して酒蔵訪問。


佐渡汽船のカーフェリーから両津港に降り立ち、慌ただしく路線バスに乗り換えて、「真野鶴」で知られる尾畑酒造さんを目指す。


乗り込んだ新潟交通佐渡の「南線」は中型バスでの運行で、座席が半分埋まる程度の12人を乗せて発車。バスの発車は、フェリー到着時刻の10分後で、間に合うかと気をもんだが、問題なく乗り継ぐことができた。


両津の街を抜けて、離島最大の湖である加茂湖を右手に見ながら昼下がりの佐渡島を進み、遠くには島内最高峰の金北山とそれに連なる妙見山らしき雪の残る山々を望むこともできて、好天に感謝する。

当初は、新潟市内の酒蔵見学をした後にゆっくりと佐渡入りして、翌日に島内の酒蔵を回ろと思っていたが、天気予報をにらんで佐渡汽船の予約を繰り上げたのが吉と出た。


両津港から約50分で尾畑酒造さん最寄りの真野新町に到着。

真野はかつて国府が置かれ、承久の乱で佐渡に配流された順徳天皇の御陵もある街で、島の歴史に思いを馳せながら酒蔵を目指して歩いていると、小木線のバスが脇を過ぎていく。
小木線は、新潟交通佐渡の本社がある佐和田バスステーションと佐渡汽船の直江津航路が入出港する小木港を通って宿根木という集落を結ぶ島内の準基幹路線で、土曜休日でも1日9往復が運転されている。

真野新町バス停から徒歩7~8分で、今年7蔵目の酒蔵訪問となる尾畑酒造さんに到着。
尾畑酒造さんは、同じ旧真野町内で2010年に廃校となった西三川小学校を2014年に「学校蔵」として再生させ、2020年に内閣府から「清酒特区」第1号に認定されたことでも名が知られているが、こちらは古くから酒づくりを行っている「仕込蔵」と本社、試飲と販売のスペースが併設されている。

試飲は、無料4種類と有料6種類が用意されているので、まずは無料の方から。
 吟醸と大吟醸2種類ずつの無料コーナーからは吟醸生原酒が土産候補に挙がったが、2日間の持ち歩きを考えると火入れしたもののほうがいいと思い、商品が陳列された棚を眺めると、学校蔵で醸された「かなでる」に目がとまり、その味を確かめため有料試飲モードに。
一杯200円を支払って専用メダルを受け取り、マシンに投入して吞みたい酒のボタンを押すと、売価に見合った量が注がれるシステムで、「かなでる」ではプラカップの半分以上が満たされる。

勝手に想像していた味のイメージとは違っていたので、次なる土産候補を見つけるべく200円を支払って蔵元限定の純米大吟醸原酒を。
う~ん、これにしようかなぁ、と思いつつ、マシンの中に入っているものの中で最高売価のものも比較のため試してみようと、追加のメダルを受け取って「磨三割五分 大吟醸 真野鶴 万穂(まほ)」と、「磨三割五分 純米大吟醸 真野鶴 実来(みく) 」を。

万穂は東京でも飲んだことがあるが、5種類試飲後にいただくと個性がよく分かる。

そして最後に実来を口に含むと、柔らかくもしっかりとした甘みと香りを感じ、それらがたおやかにひいていく今日試した中で1番のヒット酒。

おそらく東京でもお目にかかることができると思うので、蔵元限定の純米大吟醸原酒を買うべきだろうかと考える一方で、舌と鼻が実来にしろと告げてくる。

両方買えば悩む必要もないが、このあとのことを考えると、2本をカバンに入れて次の酒蔵に行き、そこでさらに1本仕入れて、その次の目的地に向かうのは苦しい。

もう一度、純米大吟醸原酒を試飲して自分を納得させようと試みたが、知り合いご夫婦への開店祝いにと考えての酒選びなので、慎重にと自分に言い聞かせる。

呻吟しながらほぼマンツーマンで対応して下さっていた女性店員さんに打ち明けると、「私も実来が好きですねぇ」とおっしゃり、私の膨らんだカバンを見ながら「宅配便で送られたら、いかがですか」と提案して下さる。

そうすれば、このあとの行程に影響を与えず2種類を入手可能ということは、私にも理解ができる。

ちなみに、これまでの酒蔵訪問で購った酒を宅配便で送ったことは一度もない。カバンの中身を宅配便で送ってでも、酒を連れて帰るのがこれまでの流儀であった。

冬の北海道新十津川町で4合瓶2本を購入した時にも、かじかむ手で酒の入った袋を握りしめて雪道を歩いたし、おととしの会津酒蔵巡りでも3本を携え帰京した。 

行商人のようではあるが、宅配便で届いた酒を家で受け取るのでは、通販で注文するのと変わらないではないか、そう思ってもいた。

でも、今回は店員さんのご提案に従うことにした。

せっかく佐渡まで来て未練を残すのはしのびないし、最近は加齢のせいか膝や腰に痛みを覚えるようになってきた。新幹線の網棚に置いたカバンから酒が漏れ出して騒ぎになる夢まで見る始末で、そろそろ酒旅のスタイルを変えるタイミングなのではないかという気持ちにもなっていた。

「老いては子に従え」ならぬ「酔いては他人に従え」。

いいきっかけを与えてくれた店員さんに感謝しながら尾畑酒造さんをあとに、次の酒蔵を目指して先ほど歩いてきた真野の街を引き返した。
(つづく)