前を通るたびに気になっていながら、なかなか入る勇気や機会がない飲食店というのは誰しもあるのではないだろうか。
私には地元と通勤経路上にそういった店がそれぞれ１ダース以上あってチャンスをうかがっているものの、時間が合わなかったり、つい行きつけの店に入ってしまったりで、なかなか訪問に至らない。
そんな煮え切らない心構えで過ごしていた某日、地元八王子市内で気になっていた店の一つに入ってみた。
JR・京王電鉄の高尾駅南口から徒歩約２分の場所に建つビル内に「高尾名店街」なる飲食店や専門店の集まった昭和感溢れるエリアがある。
そば屋やカレー店、喫煙可能な喫茶店などが並ぶ２階フロアで、時の流れを感じさせる食品サンプルを店頭に飾っている「多花美」さんに入る。
平日夕方のせいか店内は空いており、テーブル席にゆったり腰掛けて生ビールを注文。
グラスに薄氷の張ったキンキンのビール（なぎら健壱風に言うと「チンカチンカのルービー」)で喉を潤しながらメニューに目を通すと、サンプルにあった各種洋食のほか、刺身盛り合わせやモツ煮込み、焼き鳥をはじめとする居酒屋メニューも充実しており、酒もワインやウイスキー、日本酒など豊富で、ブランデーや焼酎のボトルキープも可能。
さて何を頼もうかと迷った挙げ句、チキンソテーを注文。
街の洋食屋さんの一品、といった見た目通りの味と食感で、２杯目に選んだ赤ワインにもよく合う。
休日の午後に店の前を通る時には、いつもハイキング帰りのグループで賑わっており、独りでの入店は勇気を要するが、今回は平日の夕方とあって仕事帰りのおじさん１人客がメインで、キープしたボトルからアルコールを注いでいる人も多い。
やっと入ることができた喜びをチキンとともに噛み締めながら、今後も豊富なメニューを味わいに立ち寄りたいと思った。