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関西での新幹線と在来線の一大結節点である新大阪駅は、改札外のコンコースも賑わっており、ひとつ下の2階も土産物を物色する観光客がフロアを埋めている。
そうした喧噪を横目にさらに階段を降りると、違う駅に来たかのように人が減り、昭和感の漂う飲食店が並ぶ。
「味の街」と名づけられた飲食街で、新大阪から新幹線に乗る前にはよく立ち寄りコナモンで一杯やる。
今回もこちらに入り、まずはレモンサワーで一杯。
15時を過ぎているが、これから新幹線に乗るらしき人々で満席に近く、その多くがアルコールを楽しんでいる。
突き出しの甘めのキムチでレモンサワーが空き、焼きそばをアテにホッピーセット(黒)にスイッチ。
奈良の酒蔵で6種類の日本酒を試飲したので、あまり吞めないかと思ったが、3時間ほど経過したせいか体はアルコールを歓迎しており、ホッピーのナカ(焼酎)と、とん平焼きを追加。
ミルフィーユをメニュー名に冠しているとん平焼きは、層になった豚肉をフワフワのタマゴでくるんだ酒にもよく合う一品で、もう1回ナカを追加。
大阪の方々が焼きそばやお好み焼きを食べる時に新大阪駅構内を選ぶことはないだろうが、ヨソ者にとっては発車までの時間調整を兼ねながら一杯やって新幹線にすぐに飛び乗ることができる便利さはありがたい。
予約していた新幹線の発車20分前に会計を済ませ、若干の買い物をしてからホームに上がると、予定の列車が入線。
コナモンと酒でふくれた腹をさすりながら、指定の座席に収まる。
今回予約したのは、テレワーク向けの「S WORK車両」に昨年10月に設置されたPシート。
ご覧のとおり3人席の真ん中に、パーティションとドリンクホルダーを備えたサイドテーブルが設置されており、今のところN700S系で運行されている列車を対象にサービスが提供されている。
酒をたらふく呑んだ上に、コナモンの香りをまとってから列車に乗るのは隣席の人に申し訳ない気持ちになるが、Pシートなら絶対に隣に客が来ない。
N700Sの列車に10席のみのレアシートだが、休日の今日は私を含めて6席しか埋まっておらず、半数は女性の独り利用でパソコンのキーボードを弾く人もいない。
以前、平日の下り列車で利用した時には、新横浜発車時点で7号車全体の乗車率が60パーセント程度のところ、Pシートは10席全てが埋まっており、多くの人がパソコンと向き合う本来のS WORK車両の雰囲気だった。
今のところPシートの追加料金は距離に関係なく1200円。新大阪~東京間で5000円以上を支払ってグリーン席を奮発した挙げ句、隣に客が来るリスクに比べれば安いといえる。
ちなみに通路幅を除いた横方向性の1人あたりの占有割合は、グリーン車が車体幅の25パーセントであるのに対してPシートは計算上30パーセントでわずかに勝る(座席自体の幅は20パーセント相当)。
現在はEX予約とスマートEXでの予約客を対象に販売されているS WORK車両は、基本的には海外からの旅行客の利用はない。
昨年10月に訪日観光客向けに販売されているジャパン・レール・パスで追加料金(普通車・グリーン車同額)を支払えば「のぞみ」に乗ることができるようになったことを受けて、最近ではグループ客の騒がしさを避けてS WORK車両を選ぶ人も少なくないようだが、今後は一般席と同様の扱いでの販売が予定されていると聞く。
Pシートも今のところ列車を限って試行的に運用されているが、本格運用に移行したのちに定着すれば、追加料金の引き上げも十分に想定できる。
8号車とともに他の車両の2倍のWi-Fi通信速度が提供されているS WORK車両でNetflixを鑑賞しながら、いつまでこの落ち着いた車内の雰囲気が保たれるのだろうかと、ほろ酔いの頭でボンヤリ考えているうちに、列車は多摩川を渡り東京都に入っていた。