過日、府中で一杯。
訪れたのは、9月に知人と「磯吉」で呑んだ後、分倍河原に向けてブラブラ歩く途中で見かけた日本酒バル「TOKUTOUSEKI」。

実はこの日も磯吉で一杯やるべく、国立「鳩の湯」に入ってから国分寺崖線を切り通して造られた「たまらん坂」を歩いて上がり、坂の上から京王バスに乗り込んで府中入りしていた。

ちなみに国立と国分寺の間で中央線を斜めに横切る国分寺崖線には、段丘の上下を結ぶ坂が無数にあるが、坂の中ほどを国立と国分寺の市境が走る「たまらん坂」はその中でも名がよく知られ、京王バスにも「多摩蘭坂」という停留所がある。


実はこれまで歩いたことがなかったので、初踏破を記念して(大袈裟)一杯やるという建前を用意して府中入りしたのだが、磯吉開店まで30分ほどあったことから、府中駅周辺をそぞろ歩くうちに、「一生懸命 営業中」の札を掲げた「TOKUTOUSEKI」の前に辿り着いたのだった。
湯上がりから小1時間が経ち喉の乾きが絶頂に達していたので、磯吉開店までの時間調整を兼ねて軽く一杯やろうと店舗のある2階へと昇る。
平日は午後5時、土日は2時からの営業で、日曜日の今日は開店から約30分が経過しており、 6席あるカウンターに先客が2人語らっている。
私に続いて入店した常連さんらしきおひとり様とともにカウンターに案内され、店内客は4人に。
2次元コードの印刷された紙を渡され、席からのモバイルオーダーでお願いしますとのこと。
まずは生レモンサワーを飲み干して喉の乾きを癒した後、20種類以上ある日本酒メニューの中から目の前に一升瓶が鎮座していた「北島 燗ガエル white frogger 酵母無添加生もと純米にごり 」を熱燗でお願いする。

肴は、店前の看板に出ていた本マグロ2種盛り合わせと、自家製豆腐冷や奴を3種の塩で。
マグロは、平日は19時まで、土日曜は18時までの注文で税抜き499円で提供されるサービスメニューで、この日は表面をローストしたタタキ風と生赤身の組み合わせ。
日本酒は一杯100ミリで400~700円台が中心で、この日はグランドメニューのほかハロウィーンラベル中心の数種が日替わり酒として別紙で紹介されていた。
近くでお若い男性スタッフさんが、ちろりに入れた日本酒をデジタル温度計で確かめながら燗をつけてくれているので、「50度でつけてもらえますか?」とお願いすると、「かしこまりました」とのこと。
燗酒の温度指定は、行きつけの店や対応する旨がアナウンスされている場合を除いて、お願いするのに気を遣うが、まだ客が少ない時間のせいか快く応じてくれたのが嬉しい。
指定通りの温度につけられた燗ガエルはいわゆる辛口。超ドライな呑み口で3口ほどでツィーと干した。
次なる酒に秋田は横手の「大納川(だいながわ)」のアマビエラベルを選び、今度は55度でお願いする。

大納川は都内で見かけることは少なく、前回は10年ほど前に江東区東陽町の某居酒屋で呑んだと記憶しているが、府中には入手できる酒販店が2軒ある。
秋田県産米「めんこいな」を70%磨きで醸した大納川は思ったより軽快で、豆腐をアテに5口で飲み干す。
最後はどっしりしたのを呑みたいと、こちらを55度で 。

長野の「黒澤」だが、磨きを2割に抑え(つまり精米歩合80%)、生もとで造られた「96380(クロサワハマル)」バージョン。
期待通りのしっかり感で、燻製を合わせようとメニューを見ると、筋子とあんこがある。
これまで、あんこで酒を呑む父親や親戚のおじさんたちを信じられない思いで見てきたが、燻製は珍しいので頼んでみると、低精米の黒澤にマッチして酒もあんこも止まらない。
時間調整のつもりで入ったTOKUTOUSEKIだったが、3種の熱燗に大満足し、磯吉には寄らず京王線で家路に就いた。