・妻たちの鹿鳴館(石井ふく子プロデュース、1988年放映)

・TBSで1988年に放映された時代劇ドラマです。題名にも明らかな通り、明治10年代後半の鹿鳴館時代を背景に、政府高官の婦人たちが時代に翻弄され苦闘する姿を描いています。かねて観たいと念願していたのですが、最近、某ケーブルテレビチャンネルで放映され、ようやく通しで観ることができました。

 脚本にはいささか不満があるのですが、豪華なキャストが見事な存在感を発揮していて、観ごたえがありました。2時間を超えるシャクがあっという間でした。

 で、主な配役を紹介すれば……

・山本登喜(山本権兵衛の妻):大原麗子=主役

・山本権兵衛(海軍少佐、のちの海軍大将、海相、首相):竹脇無我

・伊藤梅子(伊藤博文の妻):池内淳子

・伊藤博文(首相):若山富三郎

・井上武子(井上馨の妻):草笛光子

・井上馨(外相):田村高廣

・黒田滝子(黒田清隆の妻):佐久間良子

・黒田清隆(後の首相):すまけい

・森常子(森有礼の妻):音無美紀子

・大山捨松(大山巌の妻):片平なぎさ

・ナレーション:渥美清

 伊藤や井上、黒田といった明治の元勲たち=元革命家たち=元跳ねっ返りたちのはちゃめちゃな個性を名優たちが面白おかしく演じる一方、彼らを支えた女性たちの逞しい生き様を絢爛たる女優陣が艶やかに演じています。もう40年近く前に制作されたテレビドラマとあって画質の粗いのは切ないところで、現代の技術で改めて制作してもらえないものか、などと考えしまいました。

 脚本にいささか残念な気分を覚えたのは、原作の大ファンだからです。山田風太郎の明治もののなかでも傑作中の傑作というべき「エドの舞踏会」なのですが、その味わいをドラマは十分に活かしていない、と感じました。

 原作では山縣有朋や大隈重信、陸奥宗光、ル・ジャンドルの妻たちも大いに存在感を発揮するのですが、ドラマに全く登場しませんでした。彼女たちの生き様も実に興味深いものがあるだけに、紹介して欲しかったなあ、と。もっとも、すでに2時間を超えているので、制作する側としては断腸の思いで断念したのだろう、と推察するのですが。

 さらに、原作は最後の最後に山本権兵衛夫妻の最期を紹介することで、昭和に至る日本の歩みを鮮やかに照射しています。これぞ風太郎、という戦慄の着地となっているのですが、この原作の凄さはドラマからは全く伝わってきません。

 ただ、原作では権兵衛と捨松が担っている狂言回しの役割を登喜にあてがっているのは、なかなか味な設定だと感じました。今更ながら大原麗子に魅了されたのです。

 振り返ると、1980年のNHK大河ドラマ「獅子の時代」で主人公の恋人役を演じた大原麗子も、とても魅力的だった記憶があります。明治の女は当たり役だったのではないでしょうか。

 大山捨松を演じた片平なぎさも適役だと感じました。捨松は日本人離れした個性で知られた女性ですが、片平なぎさは結構背が高くてスタイルがよく、観るからに日本人離れした存在感を醸し出していました(そういえば、現在放映中のNHKの連続ドラマ小説「風、薫る」では、多部未華子が捨松を演じています。これまたなかなか日本人離れした個性がよく出ているように感じます)。

 それにしても、大原麗子や竹脇無我、池内淳子、若山富三郎、田村高廣ら、主な出演者たちの過半がすでに鬼籍に入っていることには、なんともいえない気分になりました。