サラパルータ:ドゥーカ エンリコ 1984 その2 | 古きイタリアワインの魅力を読み解く

古きイタリアワインの魅力を読み解く

イタリアンワインガイド ガンベロ・ロッソ 1988-1989
イタリアワイン界に多大な影響を与えるガンベロ・ロッソ Gambero Rossoですが、この初期(1988や1989当時)のレアなイタリアワインと古酒の数々を、掘り下げて解説します。

Vini d'Italia 1989 Gambero Rosso Vol.08

Duca di Salaparuta-Duca Enrico 1984

 

Nero d’Avola。『Avola村の黒(ぶどう)』。

海岸線に位置するこの村(Avola村)出身のブドウは混醸ワイン用のベースワインとして最適で、Avolaから少し南のMarzamemiから国内と海外へ大量に船積み輸出されていました。つまり、この地の集積所にシチリア全土から届いたワインが集められ、そこからパイプを利用してバルクワイン用タンクに注入されるのです。国内用にはNapoli、Genova、海外用としてボルドーまで運ばれており、実はかなり早い時代からボルドー赤に(違法ですが内緒で)混醸されていました。特にNero d’AvolaとCSの相性が良かった。多少のシラーぽいニュアンスは変わらず存在し、きちんと絞れば濃密で、ラズベリー、プラム、ベリーなどの熟した赤い果実系の薫りと甘草、ミント、チョコレート、ローズマリーや黒コショウ系(特にサラワク)の薫り・味があります。強すぎる酸味は無く、補助ワインとして使い勝手が良い。ボルドーにローヌの赤を持ってくるよりも、このシチリア赤の方が安価で多量で、陸送を使わず港から港への輸送が楽と良い事づくめだったのです。

 

その当時の生産者はNero d’Avolaの良さは重々に知りながらも、その良さを最大限に利用して単一品種を造ろうとしなかった、それをFranco Giacosa率いるSalaparutaが最初に試みたという訳ですね。

リリース後には早速国内外で注目を浴びますが、特に伊ワイン好きの英国で高評価を付け、それでオークションに多数登場する事になります。マルケージでも特に外国のお客様の需要が多かった(オークションブックを手に、どのロットが良いかとゲストから意見を求められた事もあります)。

 

例の如くマルケージでサービスしていた私は、Duca Enricoで失敗をやらかした事があります。隣接した二つのテーブルでDuca Enrico1990のオーダーが入ったのですが、サービスの途中、AテーブルにBテーブルのDuca Enrico1990を注ぎ、更にその後に時間を置いて今度はBテーブルにAテーブルのDuca Enrico1990を注いてしまったという失敗です。平均して一日100本程度の抜栓量。しこたま忙しい時には抜栓の度の試飲が重なり、一回のサービスでトータル一本分位は飲む位。

一回目のミスで両テーブルのゲストに謝罪し、間違えたテーブルの為に90を一本抜き直しましたが、二回目のミスの時には両テーブルゲストも大爆笑。やっぱりもう一本抜き直したので、この日だけで2テーブルに4本のDuca Enrico90を抜いた事に。両テーブルのゲストは怒るどころか、こんなに美味いワインが1本分の値段で2本飲めるのだからと大喜びの盛り上がり。それ以降、頼むからもう一回間違えろと囃されながらのサービスとなりました。こうなると、隣合わせたのも何かの縁と両テーブル同士が仲良くなってしまうのがイタリアの良い所ですね。2テーブルのゲスト同士が楽しくおしゃべりしながら会話を続け、デザート時には更に私からのサービスで、Duca di Salaparutaの傑作デザートワインALAを1本サービスでお出ししました。両テーブル計4名と、ちょっと飲み過ぎてふらついている私の5名で、楽しい食事への感謝の乾杯を。

Duca Enrico2本にALA1本を余分に開けた私は大目玉?確かにその時は。でも以降、両テーブル共にハードリピーターとなり、更にはソワニエとなったので万事OKです。

でも、その日以降、彼らの再来時には必ず『ホントにそのボトルで間違ってない?』とのお囃子付きでのサービスする羽目になりましたが。

 

この項 了。