アンティノリ:ティニャネッロ 1982 その2 | 古きイタリアワインの魅力を読み解く

古きイタリアワインの魅力を読み解く

イタリアンワインガイド ガンベロ・ロッソ 1988-1989
イタリアワイン界に多大な影響を与えるガンベロ・ロッソ Gambero Rossoですが、この初期(1988や1989当時)のレアなイタリアワインと古酒の数々を、掘り下げて解説します。

Vini d'Italia 1988 Gambero Rosso Vol. 46
Antinori-Tignanello 1982 その2

 

Antinoriでは第二次世界大戦以前からCSとCFを栽培していました。戦争中放置された畑を再開する際、元来のCSとCFのみを育てなおした事がTignanelloやSolaiaにMerlotが入っていない理由となります①
次に改革を行います。60年代後半、Antinori&Tachisは仏エミール・ペイノーにコンサルを依頼、そのアプローチをChiantiに導入、70年から78年にかけての長い改革を経て、今日のTignanello(&Solaia)の基礎が誕生します。昨日の変遷に下記を付け加えます(下記の一部はAntinoriの公式HP表現を使用しています)。

 

1970年:イタリア初のSvバリック②、且つシングルヴィンヤードChiantiを誕生させた③
1971年:DOCを返上し、VdTに転換した④
1972~74年は発育不良&白ブドウ品種を混ぜる事に納得いかず、生産を断念⑤
1975年:イタリア初のChiantiとして白ブドウ品種を使用せずにワインとする事に成功した。但しバランスを取る事に苦戦、生産量は例年の1/5と激減する⑥
1976年:発育不良&前年の結果に納得いかず、生産中止⑦
1977年:イタリア初のSvとカベルネの高品質混合ワインの生産に成功した⑧

 

②③④⑥⑧を行った事は全てペイノーのアドバイス、⑤⑦はその教えを忠実に行う為の断行。①は今日のMerlot苦戦を考えると懸命な判断でした。
71の段階で13万本超え(書籍によっては127000本と書いてありますが、先日のエティケッタ情報95443Lを単純に720ml瓶で割ると13万本超えです。127000本は750ml瓶でカウントした場合の答えですね。この時代は720ml瓶です)の稼ぎ頭を72、73、74、76と生産しないのは思い切った判断です。でも『何故白ブドウ品種を赤に混醸するのか?』『何故質の良いCSとCFが植えてあるにも関わらず、有効活用しないのか』という素朴なペイノーの問いに当時のAntinoriとTachisははっきりと答えられず、恥ずかしい思いをしたと記録に残っています。Antinoriは地元の人、Tachisはアルバ出身ですから、土着品種を使うという姿勢は人一倍強かったのだろうと想像します。

 

結果、様々な改革を行い、納得いく作品が出来上がったのは77~78。その時には完全に生産ラインも完成しておりTignanelloは15~20万本生産可能。同農園でのSolaiaは78の試作(CS80,CF20)を経て79以降にTignanelloのSvを混ぜ込みつつバランスを取る事に成功します。以降、TignaneloとSolaiaがネガポジの関係にあるとは、皆さんご承知済。78のDecanterテイスティングにはSassicaiaの他、75,77のTignanelo、Solaiaの試作品もAntinoriが提供したとの記録があります。結果、皆さんご存知の通りです。

 

全ては大戦前のCS+CF、60年代のペイノーのコンサルが発端でした。そこはかとない上品な雰囲気を身に纏いつつも、ぶれない美味しさをあれだけ沢山の本数で供給可能。これがTignanelloは異質だと思う理由です。

 

次回でTignanelloを総括します。