アンセルミ:レチョート デイ カピテッリ 1985 その1 | 古きイタリアワインの魅力を読み解く

古きイタリアワインの魅力を読み解く

イタリアンワインガイド ガンベロ・ロッソ 1988-1989
イタリアワイン界に多大な影響を与えるガンベロ・ロッソ Gambero Rossoですが、この初期(1988や1989当時)のレアなイタリアワインと古酒の数々を、掘り下げて解説します。

Vini d'Italia 1988 Gambero Rosso Vol. 24

 

Anselmi-Recioto dei Capitelli 1985 その1

Vini d’Italia88のTreBicchieri受賞ワインにちなんで書いてます。今回で24話目。Anselmi。

 

 イタリアには高品質の甘口ワインが沢山あります。甘口ワイン大好きです。イタリアワインは、このバラエティーの多さが魅力の一つですね。どれが一番好きな甘口ワインかと問われると悩みますが、AnselmiのI Capitelliはいつも私のワインリストに欠かせない一本です。

 勤めていたマルケージはブレーシアに位置し、ヴェネトにも近かったので、数多くのヴェネトの生産者も訪れてくれました。更に、ミラノ時代からマルケージと親交の深かった生産者も多く(ミラノ時代のマルケージはヴェネトとエミリア・ロマーニャのワインが大好きで、当時からこの二地域のワインを多く使っていました)、マルケージの名前付きのワインもお願いしているほど。中でもAnselmi(とMaculan)は料理・デザートにまでそのワインを使用し、料理名にもそのワイン名が登場するほどの仲でした。

 

 Roberto Anselmiの存在を知ったのは日本です。前回登場した京都・カーサビアンカの那須さんにエトリヴァンのワインをご紹介いただいたのが最初です。実際に彼と出会ったのは93年のVinitaly。更に95年マルケージに紹介されました。以降、お会いした時には、かなり込み入った話をする様になったのですが、当時から彼は『怒っている人』でした。せわしなく携帯でしゃべり、ジェスチャー大きくわあわあ言う人でした。私の顔を覗き込んで問う内容はいつも同じ『おい、お前にとってSoaveってどういう存在だ?』こればっかり。

 彼は明らかに不機嫌な時が多く、しょっちゅう『今に見てろよ』とぶつぶつ言ってました。幸い我々の前での食事時は上機嫌でしたが。ええ、当時、マルケージのワインリストには彼以外のSoave、Recioto di Soaveは、只の一本も載っけていなかったから。はい、食事中はとても上機嫌でしたよ。

 

 当時の彼、『怒り』の理由はこれら、全てSoave組合に対しての『怒り』です。

・栽培方法:Pergola? F〇〇〇 you!

・収穫量:Soave全体の収穫量よりSoaveを名乗る水の様な安白ワインの輸出量の方が多いんじゃないか?

・クリュ:クリュを決めよう、せめて平野部と丘陵部で呼称を変えよう。

 Soave組合のやる事なす事全てが気に食わず、常に中指を立てている様な時代。

あれだけSoaveの名に誇りを持ち、世界中にSoaveの名を啓蒙したのですから、その名を汚す様な行為を黙認している組合に対しての彼の怒りっぷりは、本当に半端無かった。

 その後、彼はSoave組合を脱退し、San Vincenzo99~, Foscarino99~, Croce98~, I Capitelli98~以降、Soaveを名乗る事を止めてしまいます。あの時の『今に見てろよ』とはこういう事だったのですね。

 

次回へ